※この作品はR-18です。

夜のデイジィとアベル(一)カザーブの初夜   作:江崎栄一

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○六 首筋に舌が

 あたしの右肩にかかっている髪を、アベルは左手で掻き上げて背中に流した。そのまま右腕ごと背中を抱き、剥き出しになった首筋に向かって口を近づける。

「アベル……?」

 恐怖を覚えて肩で閉じた。肩と頬で侵入を拒もうとしたが、アベルは顔に力を込めて無理やり割って入った。

「あうっ!」

 顎のすぐ下、頸動脈の走る辺りに熱い舌が這わされた。まるで皮膚を突き破って肉に潜り込もうとするかのような強い力だった。

 大きな重量を持った熱い肉が首筋を這いずり回る。それが敏感なところを刺激する度に、あたしの口から喘ぎ声が漏れた。

 痛みにも似たくすぐったさを感じ、あたしはもがいて逃げようとした。

「あ! いや!」

 しかし右腕ごと背中を押さえつけられ、左肩も掴まれている。身動きなど取れるはずもない。ただ喘いで下半身を捩ることしかできなかった。

 まるで生きながら肉食獣に喰われる獲物のように。

「ア、アベル! 待って……」

 漸く言葉を発することができた。何とかアベルの動きを止めないと、気がおかしくなりそうだった。

 それでもアベルは止まらない。あたしの声が届いていない。愛撫は激しさを増していく。舌の這いずり回る領域は喉や鎖骨にまで及んだ。その刺激に耐えられず必死に喘いで身を捩っているというのに、アベルはまったく意に介さない。まるで暴れるあたしの身体が煩わしいのか、拘束する力を強めていく。アベルは欲望のままに動く獣に身を落としていた。

 血を啜るように音を立てて舌を這わせ、唾を飲み込んで熱い息を吐く。あたしがどう感じているかなどお構いなし。こんな好き勝手にされたら頭に来るはずなのに、あたしは違う想いに捕われた。

 こんなにも夢中になってしまうほど、アベルはあたしのことが好きなんだ。

 あたしはアベルの豹変振りを愛の証明と捉えていた。

「ん……」

 あたしは身体から力を抜いた。閉じた眼から、溜まった涙が零れ落ちた。いつしか舌による強烈な愛撫が心地よいものになっていた。

 アベルの顔が離れた。

「デイジィ……」

 口を半開きにして呼吸を荒げながら、陶然とした顔であたしを覗き込む。目があった次の瞬間にはアベルは視線を落とし、あたしの胸元を凝視した。喉が大きく鳴る。

 あたしの左肩から右手を離し、胸元に滑らせる。ナイトローブの上から乳房に触れる。いつの間にかあたしの肉体は火照りきり、胸を触られてもくすぐったさを感じなくなっていた。

「はぁ……。ん」

 アベルが指に力を入れて優しく乳房を揉み始める。淡い快感が湧き起こり、あたしは甘えるように喘いだ。左脇を閉めて腕をたたみ、乳房の横で掌を閉じた。楽しんでいるアベルの邪魔にならないように、恥ずかしさを必死に耐えた。

 アベルは遠慮なく、胸元を凝視しながら乳房を揉み続けた。

 しばらくすると、アベルは乳房から手を離し、襟の間に差し込んだ。左を前にして合わせられた襟は、ちょうどいい具合にアベルを迎え入れる。熱い掌が乳房の上に触れ、ブラの上から全体を包み込んだ。

 そのまま揉み始めるのかと思いきや、アベルはすぐに手を引き抜いた。そして背中に回していた左腕も抜いて、両手を使ってあたしのナイトローブの襟を掴んだ。

「あ!」

 襟がこじ開けられ、胸元が露出していた。恐る恐るアベルの顔を覗き込んで、あたしはぎくりとした。その顔に、更なる凶暴性が宿っていた。仕留めた獲物に喰らいつく直前に野獣が見せる眼光。

「これは……」

 アベルはあたしの両襟を掴んで押さえつけたまま、曝け出された胸元を見つめて言った。

「さっき、新しい下着を買っておいたんだ。あんたにガッカリされたくないからさ……」

 鎧の下に着けていたような、あんなダサい下着で房事に臨むなんて嫌だった。あれは長旅に耐えるように厚手の手拭いを捻っただけのもの。だから、急いで純白のお揃いのブラとパンティを買って身につけた。

「どうかな……?」

 荒い息を吐くだけで黙っているアベルに恐る恐る聞く。

「可愛いよデイジィ……最高だ」

 アベルは熱い視線を胸元から外すことなく言った。

 その言葉を聞くと、再び身体の内側から快感が押し寄せてきた。

 

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