「アベル……」
満たされた気持ちで名前を呼んだ。アベルは胸元に注いでいた視線を上げて、あたしの目を見つめた。
アベルは再び左腕をあたしの背に回し、後頭部を抑えた。右手で襟を掴んで引き寄せる。
唇が合わさった。すぐに舌が突き入れられる。さっきよりは幾分か優しいキス。あたしが舌を持ち上げると、蠢くアベルの舌が巻き付いた。そして唾液を舐めとるように舌の付け根を押して、何度も吸引し、喉を鳴らした。
右手が襟から離れ、背中を伝って腰まで下りた。ナイトローブの上から左の臀部が摩られた。
「ぐっ……」
アベルは苦痛に耐えるよう呻き、呼吸を荒げた。
右手があたしの左脚を伝い、膝下まで下りる。ナイトローブの裾を割って、固く閉じた膝の間で止まった。
普段はだらしなく脚を広げているが、今夜はアベルの隣に座ってから閉じ続けている。もちろんアベルを拒むためではなく、はしたなく思われたくないからだった。
アベルの呼吸が更に荒くなり、あたしの鼓動も高まっていた。
不意にアベルの右手に力が込められた。指が柔肉に食い込む。アベルは手を小刻みに捻りながら、膝の隙間に潜り込ませて行った。
「あ……」
膝頭を越えるとあとは内腿の柔肉だけ。そこからは大した抵抗もなく、脚の付け根に向かって掌返し登ってくる。ナイトローブの裾をめくりながら。
女の秘部へと向かってくるその欲望の化身を、恐怖と期待の織り混ざった感情であたしは受け入れた。
その手がパンティの股布に触れる。背筋が鋭く痙攣する。
開いていたアベルの掌が、右足の付け根の一番柔らかい部分を掴んだ。アベルの気持ちが高まり、今にもあたしの身体へ欲望を直にぶつけようとしているのがわかる。
「んん……」
あたしは首を捻ってアベルの口づけから逃れた。
「アベル……待って……」
声をかけると、興奮した顔のアベルと目を合った。そしてあたしたちはそのまま無言で見つめ合う。
「この先は……ベッドでしよう……」
少しはしたない言い方だったかもしれない。でもそれを聞いたアベルの眼に理性が戻った気がした。顔をしかめて辛そうにする。
「すまない……つい興奮してしまって。もう少しでこのまま襲ってしまうとこほだった……」
あたしの鼓動は極限まで速くなっている。まだ疲れてなんていないのに、なぜかもう動く気がしない。アベルに何をされても抵抗できない気がした。
「ベッドまで運んでくれるか? あたし、身体の力が抜けて動けないんだ」
「あ、ああ……わかった」
アベルは身体を離すと、ハッとしたようにあたしの下半身を見つめた。目の色が徐々に険しくなっていく。再び理性が引っ込み、情欲に捕われた目つきだった。
改めて見てみれば、あたしのナイトローブは肩まではだけ、裾は腰まで捲れ上がっていた。このエロティックな格好に刺激されたのだろう。
あたしはアベルの熱い視線を受けるに任せた。せっかく新しい下着を身につけたのだから、こうやって楽しんでもらうのもいいだろう。
少し左脚を動かしてみると、アベルは股の間を凝視した。そしてゆっくりと右手がそこに向かって動き出す。
「アベル……」
声をかけるとアベルの動きはピタッと止まった。
ベッドに運ぶと言っておきながら、もう忘れている。こんなにもあたしの肉体に夢中になっているアベルが可愛く思えた。
「あ、ああ……すまない」
アベルは振り返ってあたしを見つめると、両膝の下に右腕を滑り込ませ、軽々と抱き上げた。そして半回転して歩き出す。
今からあたしはベッドで抱かれる。
アベルの腕の中、徐々に近づいてくるベッドを眺めながら、これから始まる愛の宴に想いを馳せた。