ベッドが大きく軋む。
アベルは、仰向けになったあたしの右側に膝立ちになった。大きく肩を上下させながら右手であたしの右足首を掴むと、強引に引っ張り上げ、腹の前で折りたたむ。あたしは脚が開かないように固く膝を閉じ、右脚と一緒に左脚も持ち上げた。
「くそ!」
しかしそれが気に入らないといったように、アベルは両手の指先を膝の間にねじ込み、力づくで脚と脚の間をこじ開けようとする。
「痛っ!」
膝関節近くの肉に指が食い込み、痛みが走った。
それでも必死に抗おうとしたが、欲望に突き動かされるアベルの豪腕には敵わず、あえなくあたしの両脚は押し広げられていた。
冷たい空気が股の間を通り抜け、湿った陰部から熱を奪った。その部分を、アベルは遠慮なく凝視している。
「うぅ……」
大切な部分をアベルの眼前にさらけ出す格好になったあたしは、あまりの恥ずかしさに声を上げていた。
アベルはそれに構うことなく、素早く脚の間に身体を滑り込ませた。まるで再び脚が閉じられるのを防ぐためにそうしているようだった。
脚の間から覗くアベルは、下を向いて、あたしの股間からひとときも視線を外すことなく、笑みを浮かべている。燃え上がった男の欲望を解放するための器官がここにある。きっとこれから味わうことのできる快楽を想像して身を焦がしているのだろう。
欲望に満ちた熱視線を遮るのは純白のパンティだけ。もしも今のアベルに余裕がないのなら、とっととこんな布切れは破り捨てて最後の砦を攻め立てるだろう。
腹の内が熱くなった。韻部の奥底から熱が発せられているようだった。
「デイジィ……」
アベルは両腕の前腕部を使ってあたしの内腿を押して、更に大きく脚を開かせる。そうしながら、股間に向かって顔を近づけた。その視線は秘部の辺りに集中している。
「ダメだって……恥ずかしいよ!」
接近するアベルの顔を慌てて両手で抑えたが、無駄な努力だった。アベルは首に力を込めて、あたしの腕を押し返すだけだった。女の力では抗うことができない。
目は血走っているが、嬉しそうな表情で股間を凝視する。今までに見たことがないほど、欲望に囚われた凶暴な顔。あたしの肉体がそうさせているのかと思うと、嬉しかった。
アベルの喉が鳴った。口を閉じ、鼻先を股間の手前に停めて、短く何度も呼吸をした。女の匂いを嗅ごうとしている。さっき風呂場で念入りに洗ったから変な匂いはしないと思うが、恥ずかしかった。いずれにしろアベルはまずパンティの上から楽しむようだ。せっかく新しいパンティを買ったのだから、じっくりと楽しんでもらいたかった。
あたしは、股の眼前に留まるアベルの真剣な顔を見つめた。閉じていた口が半開きになる。そこから熱い息を吐き出され、あたしの陰部をよりしっとりとさせる。
情欲に歪んだ口から舌が飛び出す。それがゆっくりと陰部近くの脚の付け根、パンティの股布部分に押し立てられた。
「んん……」
あたしは僅かな恐怖の入り混じった期待を持ちながら、アベルの行動を見守った。内腿のやわ肉が硬い舌で圧迫される。マッサージでもするような強い力で、舌が肉に喰い込んだ。その動きが執拗に繰り返される。くすぐったいが気持ちよかった。
「アベル……そこが好きなのか?」
声をかけると、舌の動きが止まった。
「ああ……いつまでも舐めていたいんだ」
それだけ言って、またその舌を脚の付け根に押し当てた。そして今度は膝に向かって内腿をゆっくりと舐め上げた。
敏感な柔肌の上を、粘っこい液体を纏った熱い舌が這い上がった。
「はあ……あ、あんっ!」
予想外の強い刺激に身体がのけ反った。その反応を知ってか知らずか、アベルは内腿を何度も舐め上げ続けた。両手でアベルの顔を掴んだが、アベルはその手を両方とも掴んで引き剥がした。今度は太腿を閉じてアベルの顔を挟んだ。でもそんなのはお構いなしに、太腿の間で無理やり顔を動かして舐め続けた。
むしろ刺激が強くなっていた。
「やだ! くすぐったいよ、アベル!」
相変わらず容赦のない愛撫に大きな声をあげてしまった。両脚に挟まれたアベルがあたしを見る。肩を素早く上下させながら、じっとあたしの目を見る。
「ごめん……どうしても我慢できなくて」
言葉では謝っているが、顔からは感情が読み取れなかった。心ここにあらずといった風の、虚な眼。謝る気持ちなどなく、あたしの反発を抑えようとしているだけのように聞こえた。
「う、うん……」
あたしの言葉を聞いているのかどうかわからなかった。案の定すぐに視線を落とし、もう一度股間に顔を埋めた。脚の力を抜いていたせいで、アベルの顔はあっさりと股の間の最深部まで到達した。アベルは口を開け、パンティの上から女陰に吸い付いた。
「はぅ!」
ずっとアベルを待っていた一番敏感な部分に刺激を受け、あたしの身体が激しくのけ反った。
「いや!」
あたしの両腕は拘束され、もはや脚で抗うこともできない。ただ身体を仰け反らせることしかできなかった。もちろんそんなことでアベルは口を離さない。そのまま女陰から湧き出す愛液を飲もうとでもするように、強く口を当てて吸引し始めた。
「アベル! ま、待ってくれ。恥ずかしいよ……」
あたしの叫び声は虚しく響くだけだった。アベルは何事もなかったかのように、返事もせずに吸い続ける。一度捕らえた獲物の抵抗など気にもしないグリズリーのようだった。
「お願い! 待って! ああっ!」
しばらく抵抗し続けてから悲鳴を上げると、やっとアベルが口を離した。いつの間にかあたしの息が上がっていた。呼吸ができていなかったせいで、頭がぼぉっとする。はっきりしない頭で、あたしはただ息を荒げるばかりだった。
「デイジィ……」
アベルが両手で、パンティ左右の腰布を摘んだ。人差し指を布の下に潜り込ませ、鉤爪のように構える。
「オイラもうだめだ……我慢ができないよ」
元々我慢しているようには思えなかったが、とうとうアベルは最後の砦に踏み込み、あたしを蹂躙しようとしている。
あたしが返答に困っていると、同意を求めることもなくパンティを引っ張った。
「あぁっ……」
肩を使ってあたしの両脚を上に向かせ、強引にパンティをずり下げる。下手をしたら破り捨てられてしまいそうな勢いだった。あたしはアベルの脱がし易いように脚を揃えた。
パンティは、腰から膝、そして踵へ向かって脱がされていく。そして、遂に足首から抜き取られた。乱暴に脱がされてクルクルに丸まったパンティは枕元に置かれた。
「デイジィ……!」
怒気を含んだ声で名前を呼ばれた瞬間、あたしの身体が恐怖で強張った。アベルは今からあたしの大切な部分を蹂躙しようとしている。
あたしは慌てて膝を閉じた。アベルは興奮した顔のまま腰を下ろし、トランクスを脱ぎ捨てた。そのトランクスは宙を舞い、パンティに被さった。
「アベル……」
あたしは恐る恐るアベルの股間に視線を送った。そこには、剥き出しになった陰茎が屹立していた。剣の柄のように肥大化し、硬直して天を向いていた。その先端は、獲物に喰らいつこうとする爬虫類の鎌首のようだった。
あたしの中に急激に恐怖心が膨らんだ。こんなものを突き刺されたら、たまらない。
他の男のモノは見たことがないのでわからないが、きっとアベルのは大きい部類なのだろう。これがあたしの女陰に突き刺されることを想像し、その痛みを思うと恐怖を感じてしまう。
その時、はっとした。
あたしは大切なことを思い出して、頭に敷いている枕の下に手を入れた。
「アベル……これをつけて」
避妊具を手にとって突き出した。男女が愛を確かめ合う上での大切なエチケットだ。せめてこれを理解するだけの理性がアベルに残っていてくれれば……。
アベルは呆けた顔でしばらくそれを見つめた。そして乱暴にあたしの手からひったくると、小分け袋を破いて中からゴム状の輪っ子を取り出した。それを陰茎の先に押し当て、扱きながら器用に陰茎全体へ被せた。透明なビニール状の膜が、陰茎を覆う。
肩が高速に上下するほど興奮しているように見えるが、手元は震えていない。
アベルは他の女を抱いたことはないと言っていたが、どうして避妊具の装着に手慣れているのだろうか……。
「デイジィ……いい?」
あたしの疑惑を断ち切るように、アベルが言葉を発した。やはり有無を言わせぬものを感じる。
怖かったが、今更拒否などできるはずがない。
「ああ……来てくれ、アベル」
アベルはあたしの膝の内側に両手を当て、ゆっくりと押し広げていった。今度はあたしも抵抗しなかった。ただ、秘部を見られることには躊躇いを感じ、両手でそこを覆った。
アベルは膝立ちのまま擦り寄り、陰茎の先をあたしの手の甲に当てた。その先にアベルの欲望を受け入れる入口がある。
「デイジィ……手をどけて」
暖炉の火だけが照らす部屋の中、二人の身体に挟まれた局部はよく見えないだろう。あたしは恐る恐る、ゆっくりと手を離した。
もはや二人を隔てるものは、何もない。早く一つになりたかった。