キャラ崩壊めっちゃ注意。特に初期艦ズ。
「それで~? ご主人様の朝の一番搾りは美味しかったですか初期艦様~?」
「それはもう」
「おおえろいえろい。漣は妬いてしまいますぞ~!」
「仕事しないんなら出てってくれない? いつものことだけど」
「そんなご無体な。漣にはここ以外に行く宛てもないというのに」
よよよ、とわかりきった演技をする漣に一瞥もくれず、私は吹雪・叢雲・白雪とともに業務を片付けていく。
「うるさいのでさっさと出て行ってほしいのです」
「ぷらずまちゃ~ん、いくらヤニ不足だからってそれは酷いですぞ~」
「失せろ」
「おおこわ。ま、嗜好品はどうしてもね~。くれるだけマシってもんかね」
「アル中共がやさぐれているのです。嘆かわしいのです」
「今日のおまいうスレはここですか?」
「よし表出ろ。吹雪ちゃん、演習申請よろしくなのです」
「あ?」
「じゃあ叢雲ちゃん」
「あんたねぇ、余分な資材なんて――」
「白雪ちゃん」
「聞きなさいよ!」
「……」
「無視は流石の電も傷つくのです」
「それ以上傷が増えたところで変わりやしないよー」
「尻の穴をもう一つこさえてほしいのかなのです五月雨ちゃん?」
「大井さーん、良いですかー?」
「燃料弾薬は2割まで。それ以上使ったら秘書官枠から外す」
「ペナルティきつすぎぃ!」
「気を付けるのです」
「わかりましたー」
わいのわいのとやかましいのが出て行って、漸く執務室が静かになる。
普段通り目付きの悪い吹雪。未だにツッコミ癖が抜けない半分は優しさでできていそうな叢雲。ただ黙々と業務をこなす白雪に、相変わらず仲が良いな、などと能天気なことを考えているであろうハンコ押し機の提督。
私が秘書官の時は大体こんな感じだ。他の艦娘が秘書官であれば、それぞれの親しい者を集めて業務をこなす。
何分うちのお飾り提督が基本的に役に立たないので、秘書官のみだと業務が回らずこういう形になっている。まあ、白雪や鳳翔さん、妙高さんなんかは一人でも回せるだろうが。
「やっぱり白雪がいてくれると助かるわ。仕事が早いのなんの」
「ありがとうございます」
「流石は主計学校出。私もアンタくらいできたら楽なのにね」
「ありがとうございます」
「白雪、もう少し返事の仕方を工夫しなさい」
「……努力します」
吹雪の指摘に、ほんの少しだけ感情を見せる白雪。
相も変わらず不器用な姉妹だ。叢雲と顔を合わせ、小さく苦笑する。まあ、これでも大分マシになったのだから、ゆっくりで良い。今はまだ、それが許される。
そうこうして業務を片付けていると、ふと叢雲が口を開いた。
「そういえば、今日着任する艦娘がいなかったっけ?」
「いるわよ。たしか――」
「新横須賀海軍本部より出向、香取型練習巡洋艦二番艦鹿島。本日ヒトサンマルマル着任予定」
「白雪」
「……です」
「まあまあ。それにしたって、練習巡洋艦ねぇ。うちに来る必要あるのかしらね?」
「上層部の方々にも色々とお考えがあるんでしょ。うちはいつも通りにやれば良いわ」
「ま、そうなんだけど。なーんか勘ぐっちゃうのよね、本部付きがわざわざこんな僻地に飛ばされるなんて」
「案外、ヘマやらかしただけかも知れないわよ」
「それはそれはご愁傷様」
軽口を叩きながら、叢雲の考えには私も思うところがある。
ここは通称リサイクル泊地、以前は廃棄物処分場。かつての私のように、PTSDやら重度の損傷で回復の見込みがないやら、艦娘になったはいいもののカタログスペックを発揮できないやらで戦力として数えられなくなった艦娘が送られてくる場所だ。
そんな問題児揃いの艦娘を率いて戦ってきたのが、そこで呑気に欠伸をしているうちの提督。運が良かっただけと言えば確かにそうかもしれないが、凄いんだか凄くないんだか良くわからない男だ。
「ま、資料を見た感じ随分と優秀じゃない? エリートコースまっしぐらって感じ」
「だーかーらー余計に気になるんでしょうが。まあ確かに? 最近はそこまで重症の子が来ることも少なくなったし、新米の子らを指導できる艦がいれば、それはそれで助かるだろうけど」
「上がうちのことをそこまで考えているとも思えません」
「吹雪の言う通りね。やっぱりなんかやらかしたんでしょ。上官のセクハラに耐えかねてブッ飛ばしちゃった、とかね」
「そりゃ良いわ。ほんとにそんな理由なら仲良くやっていけるもの」
「うちにも魚雷の的にされかねない男がいるものね?」
4人で視線を向けてやれば、両手を挙げて全面降伏状態の提督が冷や汗を垂らしていた。
――
「ここが……」
私、香取型練習巡洋艦二番艦鹿島は、今日この泊地に配属となった。
いつ空中分解するともしれないオンボロ飛行機で何度も給油を重ね、わざわざこんな僻地まで送ってくれた老齢のパイロットに礼を述べ、どうか無事な帰投をと祈っておいた。
少し前までは、あんな紙飛行機同然の代物でこんな所まで単機で飛ぼうなんざ正気の沙汰ではなかった。
が、いろんな噂に事欠かないこの泊地の活躍で、ここいら一帯の海域及び空域は比較的安定しており、本国のシーレーン確保に貢献大ということで、さらに雑多な噂が飛び交うようになっていた。
曰く、あの泊地は深海棲艦と同盟を結んでいるだの、放り込まれる艦娘を共食いさせて能力を強化させているだの、泊地の提督がとんでも超人で深海棲艦共をばったばったと薙ぎ倒しているだの、挙句の果てには噂の提督と、その、アレな関係を結べば艦娘がなんかすっごい強くなる(語彙力)だのetcetc..。
まあ酷いものだ。そんな噂話に花を咲かせられるくらいには、日本も多少はマシな状況になったのだと喜ぶべきか、地方やこういった僻地で日々懸命に暮らす人々を忍んで憂うべきなのか。
なにはともあれ、なぜ本部付きだった私が横須賀からこんな南東の僻地に飛ばされた理由は……、うん、まあ、今は思い出したくない。
聞くも涙、語るも涙な美談であれば良かったのだが、実際はくっそしょうもない内容だ。あれだけ邁進していた輝かしい私はもう過去の遺物でしかない。あ、また泣きそう。
「ヒトフタサンマル。……はぁ、行くか」
ここで黄昏ていても仕方ない。
こうなってしまった以上はもうどうしようもないし、何より、不思議とそこまで後悔はしていない。
対深海棲艦の最前線であるこの泊地に配属ということは、イコール死だ。
なにやら妙な噂の絶えない場所だが、戦力は他の最前線組に負けず劣らずで、今の日本本土が束の間の平和を装っていられるのも、この泊地による部分も大なり小なり。
さて、進んだ先には蛇でも出るやら。
パンパンに膨れ上がったボストンバックを担ぎ上げ、特注サイズのキャリーケースを引きずりながら、私は泊地建物内へと歩を進めて行った。
――
(なにここ……蛇ってレベルじゃないわよ……)
守衛を務めていた人影を目にした時から、全身を嫌な汗が纏わりついて気持ち悪い。
彼女だけではない。泊地内ですれ違う艦娘達はぱっと見は正常そのものだが、新参者の私を見る目が酷く恐ろしく、まるで海の底から覗き込まれているような錯覚にさえ陥ってしまう。
皆一様に笑顔を浮かべながらも、私を見るときだけは目が笑っていない。
挨拶や会釈を返すのだけで精一杯だった。
(やっぱり後悔した。さっきした。これが、最前線で戦っている艦娘と本土組の違いなのかな……。あ、もうほんとに泣きそう)
「おい、あんた大丈夫か?」
へたり込んでマジ泣きしたいのをどうにかこうにか耐えていると、執務室まで先導を請け負ってくれている先程の守衛、夕雲型駆逐艦四番艦の長波が声をかけてきた。
「あ、その……。本土組は、やっぱり歓迎されてないのかな、って」
「あー……うん、なんつーか。いや、さっきはあたしも悪かったよ。値踏みするようなことしちまってさ。でもまあ、ずっと前線で戦ってればこうもなっちまう。皆ほんとに良い奴ばっかりなんだぜ」
だから、悪く思わないでやってくれよ、難しいかもしんないけどさ。
そう言ってニッと笑うと、それ以降彼女からは恐怖を感じなくなった。ほっとしたような、余計に底の無さを見せつけられたような……。
「ほら、ここにあたしらの提督がいる。中に入っても泣くなよ?」
「な、泣きませんよ」
「へぇ~、どうだかね。確か今日の秘書官は……おーこわっ」
「え、ちょ、なに――」
「まあ頑張れ、応援してる。そいじゃ、長波様はクールに去るぜ、ってな」
言うだけ言って、長波は手をぷらぷらしながら戻って行ってしまった。
「……え、えぇ~……」
どうすんのよ。
私の涙腺持たないわよ、これ以上。
――
(やばい。ここほんとやばい。おうちかえりたい)
執務室に入った途端、正直腰が抜けそうになった。
なんというかもう、圧が違う。さっきの長波とも、すれ違った艦娘達とも。
「ようこそ、私たちの泊地へ。球磨型四番艦重雷装巡洋艦、大井よ。よろしくね、鹿島さん」
「よ、よろしくお願いします……」
「あんた大丈夫? 顔真っ青じゃないの。ああもう吹雪も白雪も、さっきから眼飛ばすのやめなさいったら。あ、私は吹雪型駆逐艦五番艦の叢雲よ」
「吹雪型駆逐艦一番艦吹雪」
「……吹雪型駆逐艦二番艦、白雪。……です」
あ、やっぱり睨まれてたんですね。目だけで殺されるかと思いました。
蛇に睨まれたカエルってこういう気持ちなんだろうなぁ。
コワイ。
「それで、こっちの置物がうちのていと――」
「漣! たっだいま戻りました~!!」
「うっひぃっ!?」
「お? ……誰?」
「しらないかんむすなのです」
「――ふーん」
後ろの扉がバァンッ!! と音を立てて開かれ、私は文字通り飛び跳ねてビビった。ほんとにビビった。心臓が口から飛び出た。
さらにオマケで3人の艦娘から特級の殺意を向けられた気がして――あ、これダメだ。
――
「――っ――――! ――――!」
「ん……なに……」
耳が拾う妙な物音に、落ちていた意識が覚醒していく。
頭がぼーっとしてはっきりしない、寝起きだからだろうか。
「え……わたし……」
確か執務室に行って、それで……なに、この匂い……。
「――え?」
ぼやけていた視界が薄っすらと晴れ、耳が先程から拾っていた音の、そして妙な匂いの正体に、私は唖然としていた。
「はぁっ♡ やっ♡ もう、ていとく♡ ほんとに……かしまさんが起きちゃ……んんっ!♡ この、ばかぁ!♡」
暗くていまいち良くわからない。わからないが、でも、これって――
「んむぅ!? んっ、ふぅっ♡ へーとく♡ てーとくぅ♡」
――これって、もしかしなくても、セッ――
「あっ」
あまりのことに気が動転していたのか、身を動かそうとした拍子に、私は寝かされていたであろうソファから転げ落ちてしまった。
当然、派手に音を立ててしまう。
「あ、あのっ、えっと、わたしっ――」
「――ほら、起きちゃったじゃない、あの子」
ようやく目が順応し、より鮮明に眼前の光景が視界に飛び込んでくる。
椅子に座っているのが、たぶんここの提督さんで、そして、一糸まとわぬ姿で彼に跨って、顔だけこちらに向け、声を発した女性が――
「お、大井、さん……?」
つい先ほど目にした、凛とした佇まいの女性、のはずだ。でも、目の前の彼女が本当に同一人物なのか、それすら判然としない。
目を据わらせ、乱れた髪を、痴態を見られたことを気にするそぶりも見せず、雄にしがみつき、しなだれかかって媚びる――1匹の雌が、私を見つめていた。
うん、今回はここまでなんだ。
すまない……ほんとうにすまない……。
次回はちゃんとえっろいことしまくるから許してくださいなんでもしまかぜ!
ツイッターもやってるんDA☆
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