ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
夢を見た。
奴隷の証である首輪を付けた物凄く綺麗で気品ある女性を、奴隷市場で見かけて衝動買いをしてしまった夢だ。
……おかしな話だ。俺、エリックはこれでもあることで有名な冒険者なんだ。奴隷を買ったなんて皆に知られたらとんでもないことになる。
そうさ、昨日お酒を少し飲みすぎたから、それのせいで頭の悪い夢を見てしまったんだ。
ハハ、もうそろそろ頭も冴えてきた頃だろうし、目を覚ますとしよう。そして、起きてすぐに冷たい水で顔を洗ってスッキリするんだ。
思考が回り始め、日の明るさがまぶたを通り越して俺の眼球へと届き、周囲の音を拾えるようになってきた。
「……グスン……グスン……」
すると、なにやら俺の顔の上から泣き声が聞こえてくる。
……何故か分からないが、俺の頭が目を覚ますなと警鐘を鳴らし始める。
おかしいな。俺は一人暮らしのはず。昨日、何かあったのか……?
思い出そうとするが……夜からの記憶がない。友人と酒を飲みに行ったところまでは覚えているんだが……
「グスン……グスン……」
今なお泣き声が……というかなんだこれ? 泣く時って『うわーーーん』とか「うぅぅぅ……」とか、そんな感じじゃないのか?
なんだよ、「グスン」って。口で言ってんだろ、それ。
目を開けて確認したい。というか今すぐツッコみたい。
しかし、しかしだな。非常にまずい予感がするのだ。
そう、具体的に言うと、さっきの夢が現実だったのではということだ。
いや、奴隷を買うこと自体は珍しくない。そう、この世界ではそういうことは一応認められている……のだが……
さっきも言ったように俺はあることで有名な冒険者だ。
実力? まあ、そこそこだ。
権力? まあ、それもそこそこだ。
俺が有名になったのはそれではない。
俺は……戦闘中に女性を発情させる男、ということで有名になったのだ。
『カッコいい姿を見て興奮する』とかそういう次元の話ではないのだ。『発情』と言ったように、俺がユニークスキルというものを使って戦っていると、女性はエッチな気分になってしまうのだ。
もう一度言おう。俺は女の人を発情させてしまう。それも大事な大事な戦闘中に。
想像してみて欲しい。女性がいるパーティーで俺が戦った時のことを。
想像通り、それはもう大変だった。あの時は、回復役と魔術を遠距離から放つ二人が女性だったのだが、俺がユニークスキルを発動して戦闘を開始した途端、突然発情しだして、自慰を戦場でし始めたのだ。
パーティーには俺の他にもう一人男が居たのだが……すっごいムンムンしながら強敵と戦って危うく死にかけた、という……ひどいことになった。
それで、戦闘が終了して『大丈夫か?』って近寄ったらその二人はまたたく間に逃げていったんだ。あのときは泣いたなぁ……
で、街に戻ったら……俺は『戦闘中に女性を発情させる男』として名が知れ渡っていた、という経緯。
そのパーティー戦までは、男のみのパーティーで戦っていたので気づかなかったのだが……それ以降、俺は女性と共に戦うことが出来ず、野郎どもと組むか、一人で戦ってきたのだ。
で、だ。そんなとんでもないやつが『奴隷を買った』と知れ渡ってみろ。
『ついに性欲が抑えられなくなって慰み者にするために買ったに違いないわ!』とか、『戦場で発情させて見て楽しむつもりね!』とか、今まで怖がって近寄ってこなかった女性が、いよいよ俺を敵視して殺しに来るかも知れない。じゃなくても、俺の独身人生が決定してしまう。
どうしよう、マジで夢じゃなくて本当に奴隷を買ってしまっていて、その人が今、この場にいるのだとしたら……どうしよう!
目を閉じながらアワアワとしていると……
「グスン……まだ起きないのでしょうか? かれこれ一時間ほどずっと泣き真似をしていたのですが……なかなか難しいものですね」
顔の上からまた声が女性の声が聞こえてきた。
……いや、これ確実に女の人が俺の部屋に居ますわ。それに……この声。記憶はないが聞き覚えがあるわ。うん、夢で見かけた女性で間違いない。
しかし、いつまでもこうしているわけにはいかない。今日も俺は朝からソロでクエストを受けないといけないのだ。
意を決して目を開けると……そこには、夢に出てきた美しく、そして気高いオーラを放っている女性が俺の顔の目の前にいた。
透明感はありながらもしっかりと血色がある肌に、色素が薄い人特有の茶色い髪、しかも手入れがしっかりとされているのか、長さはかなりのものなのにキラキラと光を美しく反射している。
ただ……そんな彼女には似つかわしくない奴隷の証である首輪と……薄汚れた服が目に入る。
……いや、そんなものが気にならないくらいまじで綺麗だわ。というか、俺の好みにどストライク。
でも……あれ、夢じゃなかったか……
嬉しい気持ちと、これからを考えて憂鬱になる気持ちを半々に抱えていると……
「あっ! 起きてくださいましたか! その……大変申し訳ないのですが……私、二日前からなにも食べていなくて……何か食べるものをいただけないでしょうか?」
目の前の彼女がご飯を作ってくれないかと上目遣いで頼んできた。
お兄さん、張り切って作っちゃうぞ!
「任せろ!」
そう言いながら、これからのことをもう一度考えるが……
うん、まあ……こんなにべっぴんさんなら、街中の奴らに騒がれても別にいいかな!