ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
お会計をするカウンターの近くまで戻ると……所在なさげに佇んでいるとてつもなく美人な人がいた。そう、シエナである。
今まで俺は、奴隷として売られていたときに着ていたボロボロの布のような服か、男物の服を着ているシエナしか見たことが無かったのだが……今着ている服は、白色を基調としながらもアクセントとして青色のライン随所に入れたような色構成で、デザインとしては下は動きやすいようにかの短いスカート、上はその……お腹と下乳が若干見えるような服で……非常に目のやり場に困る。いや、すごく似合って入るんだけどね。
というか、スカートが短いから華奢な足が見えているし、上半身はお腹と下乳、それと控えめな胸も生地が薄いためか形がしっかりと出てしまっている。
……どこもエッチすぎて顔しか見られないんだが……
見られないと言いながらもまじまじとエッチなところばかり見ていた俺に気づいたシエナが『にぱぁー』っと笑顔を送ってきてくれた。
……え? 俺を萌え死にさせてから罪悪感でもう一回殺すつもりですか?
「エリックさん……どうだにゃ?」
罪悪感を抱えながらも悶える俺に崖のような胸を張って、ニーニャが感想を聞いてくる。
「くっ……! 色々と眩しすぎるッ! これ以上近づいたらシエナのオーラで蒸発してしまいそうだ……ッ!」
「エリックさんみたいなモテない男には少々シエナちゃんの美しさは刺激が強すぎたようだにゃ。じゃあ、仕方ないからシエナちゃんはうちで引き取るにゃ。代金は不要ーーに゛ゃあ゛!」
「おい、どさくさに紛れて俺からシエナを奪おうとするな」
ニーニャの頭を右手で鷲掴みにして力を入れる。
「痛い痛いに゛ゃ! というか敏感な猫耳に当たってエッチな気分になるからやめるにゃ!」
流石に店内で発情されたら溜まったものではないので手を離す。
「冗談が通じないエリックさんは嫌いだにゃ。迷惑料として値段を吊り上げるにゃ!」
シエナに早く直接感想を言いたいのに次から次へとツッコまないといけないことばかり言いやがって……!
「目が冗談で言っているような雰囲気じゃなかったからな。あと、吊り上げてもいいけど、今後シエナの服は別のところで買わせてもらおっかな〜? それでもいいのか? ニーニャ」
俺はシエナの服は今後もニーニャのお店で買おうと思っている。
どうせ『最高級の』とか言っていたからバカみたいに高いんだろう。ニーニャにとって大口の客となる俺が他の店に行くとなると困るはずだ。
俺の予想通りニーニャは態度をコロッと変えて俺に抱きついてきた。
「エリックさん、ごめんなさいですにゃ! どうかニーニャを見捨てないでほしいですにゃ! さっきのは冗談で、本当は少しお安くするつもりだったですにゃ! だからどうかーー」
「――冗談だ。てか抱きつくのはやめろ。シエナが困ってるだろ?」
さっきからどうしたらいいのか分からない、というような顔をシエナがしているのだ。早急に事態の収束をさせる必要があった。
「分かったにゃ」
ニーニャが離れてくれる。
……ようやくシエナと話が出来るな。
「シエナ。とても似合っているぞ。そうだな……例えるなら……元々強かったモンスターがとんでもなく強くなった、みたいな。そんな感じがする」
「……あ……ありがとう……ございます……?」
めちゃくちゃ褒めたつもりだったんだが、シエナは俺の例えが全くピンと来ていない様子だった。
「エリックさん、その例えは訳がわからないと思うにゃ。そもそもモンスターを引き合いに出して例えている時点でおかしいにゃ。シエナちゃん、多分エリックさんは『元々綺麗だったのに、その服を着ることによって今すぐ抱きつきたいくらいにとんでもなく綺麗になった』と言っているんだと思うにゃ」
「……! あ、ありがとうございます!」
シエナはようやく合点がいったようだ。
『抱きつきたいくらい』は言わなくていいと思うが、ニーニャは俺の言いたいことをよく翻訳できたな……まあ、彼女とはある程度長い付き合いになってきたし、俺の言いたいことというか、思っていることを理解できるようになってきたということかな?
しばらくシエナの服を見た後。ニーニャから服の機能について説明を受ける。
「シエナちゃんから冒険者になる予定があると聞いたから、冒険者向けの機能をてんこ盛りしたにゃ! まず、通気性が抜群な生地を使っているにゃ。次に一応防具の上からでも着られるように伸縮性抜群の生地も使って……で、次がこの服の目玉だにゃ! これはニーニャが前から研究していて先日ようやく形になったものにゃんだけど……特別にシエナちゃんの服にはソレを使っているにゃ!」
……ふむ。それはありがたい。シエナには最高の物をプレゼントしたいからな。
「して、その機能とは……?」
「それは…………一度だけ、この服を着用している本人がモンスターなどから受けた攻撃を無効化してくれる、という機能にゃ!」
「……どういうことだ?」
「言葉通りだにゃ! 最初の一発のみモンスターなどから受けた攻撃を無しにしてくれるにゃ。どれだけ強力な攻撃を受けたとしても、致命傷レベルの攻撃を受けたとしても、それがシエナちゃんに当たった攻撃の一発目であれば絶対にダメージを受けないにゃ。ただし、逆に言えばカスダメだったとしても、モンスターから受けた一発目の攻撃であれば、それでこの服の『ダメージ無効化」という機能は消えてしまうにゃ」
「なるほど。確かに初心者の冒険者は生還率があまり高くない。この機能はものすごいものだな」
「そうだにゃ! 世紀の大発見にゃ! だけど、一度『ダメージ無効化』の機能が消えてしまうと、その服に再度その機能を付与することは出来ないにゃ。つまり、またニーニャのお店でその機能が付いている服を買ってもらう必要があるにゃ」
……世紀の大発見ではあるが、コスパが悪すぎる服だな。まあ、値段にもよるだろうがとんでもなく高いだろうし。
「まあ、そういうわけにゃから、『ダメージ無効化』が付いていない服も作ってあるにゃ」
あぁ……だからいつもより服を作るのに時間がかかったのか。
強い敵と戦う時は『ダメージ無効化』が付与された服を、それ以外の時は通常の服を、と使い分けるのがいいだろう。
『説明は以上にゃ!』と言われたので、お会計を済ませることにした。
「で、合計でいくらになった?」
「全部合わせて金貨五百枚になりますにゃ!」
「ふぁっ!」
シエナが素っ頓狂な声を上げる。
俺も似たような声を心の中で出したのだが……もしかして、ニーニャの言い間違い、もしくは聞き間違いかもしれない。もう一度聞こう。
「すまん、もう一度言ってくれ」
「金貨五百枚ですにゃ」
ニーニャの顔を見る。ニーニャも俺の顔を見る。
シエナの顔を見る。シエナも俺の顔を見る。
俺は、本当に? とニーニャに目で訴える。ニーニャはマジですにゃ、と目で訴えてくる。
シエナの方を見ると、ぼったくられているのでは? という目線を俺に寄越していた。
シエナ、俺もそう思う。
「『ダメージ無効化』を付与するためにめちゃくちゃ原価の高い新素材を惜しみなく使っているにゃ。高くなるのも仕方ないにゃ」
黙りこくる俺に説明を加える。
いや……そうなんだろうけど……服一着にここまでの値段は……いや……しかし、シエナためなら……
「シエナちゃんの命に比べれば安いものだにゃ。それに……とても良く似合っているにゃ。シエナちゃんも喜んで着ていたし、今更『違うものを……』っていうのは男としてありえないにゃ。あと、さっき言った新機能を付けていない服はタダであげるにゃ。それにプラスして普段着や寝間着も何着かおまけでつけているにゃ。特に寝間着はスケスケのエロエロでそれはもうーー」
「よし買った! ほれ! この袋の中から五百枚数えて持ってけ!」
背負っていた荷物から金貨が大量に入った袋を取り出し、ニーニャに渡す。
ニーニャはすぐさまそれに飛びつき、袋を開けて勢いよく数えだした。
シエナに今の一連の流れを見られて、彼女が今どういう表情をしているのか怖くて見れなかったが……『スケスケのエロエロ』の寝間着がおまけで付いてきたら動かざるを得なかった。
お金に関しては……まだまだ予算内だった。今日はシエナに最大で金貨二千枚使ってもいいように余裕をもって金貨を家から持ってきたからな!
え? 流石にそれは多すぎ? バカ言え、こういう時のためにコツコツと貯めてきたんだ。今使わずに何時使うっていうんだ!
数分後。五百枚きっちり数えたニーニャに『またお待ちしていますにゃ!』といい笑顔で言われた。カネの笑顔は眩しいな。
お会計が済んだので、シエナには『新機能』がついた服から付いていない服に着替えてもらい、その他の服は荷物袋にしまって、彼女と共に次の目的地に向かう。
俺たちの姿が見えなくなるまでニーニャは店の外で手を振っていた。お金マークがついてそうな目をしながら……