ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
「それで、君は一体誰なんだ? なんで俺の家に、というか部屋にいたんだ?」
張り切って作った朝食を奴隷の首輪を付けている女性と一緒に食べながら質問をする。
返ってくる言葉なんて分かりきっていることだ。しかし、もしかしたらもしかするかもしれーー
「私は、シエナと申します。昨晩、奴隷市場で売られていたときにエリック様に購入されて、そのままこの家に連れてきていただきました」
うん、だよね。やっぱり、そうだよね。知ってた。
「ごめん。その……酔っ払っていたからそこら辺の記憶がなくて……」
「いえ、謝らないで下さい。私としても昨日のことは忘れていただきたかったですし……」
少し、彼女がうつむく。
ふむ、俺は何かをしてしまったのだろうか? それとも、彼女が何かをしてしまったのだろうか?
「昨日、シエナに対してなんか嫌なことをしてしまったのか……? だとしたらごめん! 酔っていたとはいえそんなーー」
「いえ! そうではなくて……その……奴隷市場で売られていたときに、悲しくて泣いていたのものですから……そういうところをエリック様に思い出されると……少し恥ずかしいと言いますか……」
彼女はうつむいたまま、少し顔を赤くする。
……え? めっちゃ可愛いんですけど!
いや、奴隷として売られて悲しくて泣いていた、という話を聞いてその感想が出てくるっておかしいと思うかも知れない。いや、おかしいのだろう。
でも、その暗い話を吹き飛ばすくらい彼女が可愛かったのだ。
「大丈夫、本当に昨日のことを何も覚えていないから! で、話を急に変えて申し訳ないんだけど、どういう流れで今のこの状態になったのか簡潔に教えてくれるか?」
流石に経緯を全く覚えていないのは今後支障が出てくると思ったので、彼女に聞いたのだが……『もちろんいいですよ』と快諾してくれた。
「昨日、奴隷市場で私は売りに出されていました。平均的な売買金額よりもかなり高額だったらしく、お金持ちの人たちがこぞって私を競り落とそうとしていたのですが……そこにエリック様が現れて……金貨三千枚で私を買っていただきました」
……ん? 聞き間違いかな? 今、金貨三千枚って言った……?
ちょっと待ってくれ、昨日の俺。
三千枚って、普通に王都の一等地で立派な一軒家を建てられる金額だし、俺が頑張って難易度の高いクエストを一年間受けて、ようやくその額に届くかどうかのレベルなのに……たった一日で、しかも酒で酔っ払った勢いで……
いや、こんな美人さんをそれだけで迎い入れることが出来たと考えたら安いものなのかも知れない。彼女がいなければ、俺は独身道まっしぐらだったわけだし。
でも……俺の財産が三分の一消えたんですけど……苦労して、頑張って、節約に節約を重ねて貯めてきたお金が……
頭を抱えたくなっていると……
「エリック様……? もしかして……私を買ったのを後悔していらっしゃいますか……? それでしたら……今すぐに奴隷市場で契約を解除していただければ……お金は戻って……くるかと……」
彼女が首輪を差し出してきた。
記憶が全く無いが、おそらく奴隷契約を結んだのだろう。で、その契約はその首輪に掛けられている、と聞いたことがある。
彼女は、手を震わせながらも首輪を健気に差し出している。
また、奴隷市場に戻ることが怖いのだろう。それに、次の主人はひどいことをする人かもしれない。
まあ、それを言えば、彼女からしてみれば俺もそういう人に映っている、もしくはこれから映るのかも知れない。最初は優しくして、徐々にきつくあたりだす、というのはよくある話らしいし。
「俺は後悔などしていない。まあ、財産が大きく目減りしたのは事実だが、シエナに何不自由ない生活を提供できるだけの金額は持っている。でも……君が契約を解除し、自由の身になりたいというのであれば、俺は止めはしない。それによって何かひどいことをするわけでもない。シエナが望むことであれば、これから出来る限り答えていくつもりだ」
安心させる言葉をかけようとなんとか絞り出したのだが……ついついカッコつけてしまった。
というか、これで『じゃあ、お言葉に甘えて……奴隷契約を解除して頂いて、自由の身になります。お世話になりました』とか言われたら……一ヶ月位は寝込むな。告白したことはないけど、好きな子に振られた、みたいなショックが俺を襲ってくると思う。
しかし
「……! いえ、奴隷契約を解除なんて、そんな……でも、ありがとうございます! ……その……本当に嬉しいです。奴隷として売られていた時は、全てを諦めかけていたのですが……私はいいご主人様に巡り会えたみたいです!」
ぱぁ! っと明るい顔でお礼を述べてきてくれた。いやー、これは百点満点をあげたい笑顔ですね。
そのあとは軽い談笑をしながら朝食を食べた。
いやー、食事がこんなに楽しかったのは初めてだわ。やっぱり女性と食事をするっていいな!
ご飯を食べ終わった後、『食器は私が洗いますので!』と健気に言ってきたので、洗うのは任せて今日のクエストを受けるための準備をする。
といっても、服を着替えて、装備を身につけるだけだが。
俺のジョブは剣士だ。
まあ、元々は魔術師で中間ポジションをパーティーで担当していたのだが、『戦場で女性を発情させる』ということが分かってからは、さっきも言ったとおり野郎どもと一緒に冒険をするか、ソロで頑張るかの二択になってしまったわけで。
俺みたいなやつと組んでくれる野郎もあまり居らず、結局はソロで冒険やクエストをすることが多くなったのだ。
となると、近接タイプでも遠距離タイプでもない魔術師は、俺の実力ではソロをするには荷が重くなってしまったので、剣士にジョブチェンジした、という感じである。
才能は自分で言うのも何だがあったので、ジョブチェンジしても別に困ることはなかった。というか、魔術師よりも剣士の方が向いているんじゃないか、と思うくらい今では体に馴染んでいる。
動きやすい服に着替え終え、最後に大剣を抜身のまま腰のフックに下げる。
今日は動きの遅いモンスターを討伐する予定なので、一撃の攻撃力を重視した大剣を選択したのだ。
あ、服に関しては鎧は重くて動けないし、俺の戦闘スタイルは一撃離脱を繰り返す、といものなので、必然的に身軽なものとなった。
一通りの準備が終わったので、キッチンに戻る。皿洗いは無事に出来たのだろうか。