ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
しばらく歩くと、ウサッギを一匹見つけたのでさっきと同じように茂みに隠れる。
(じゃあ、次はシエナにウサッギを討伐してもらおうと思う)
(はい)
(シエナはヒーラーだ。役割としては自分や他人の体力や状態異常の回復がメインだ)
(あ、あの……関係ない話かも知れないのですが……状態異常も回復できるなら、さっきのポーションを飲まずに自分で回復すればいいのでは?)
……そう思うよな。俺も最初はそう思っていたんだが……
(それはそうなんだが、状態異常を回復する術式は魔力をそれはもう大量に消費するらしいんだ。いくらキャロをもってしても厳しいものがあるかも知れないからな。シエナは冒険者のひよっ子だし、もしものときのために魔力はなるべく使わしたくないんだよ)
(そうだったのですね……)
まあ、それに。ポーションなどの道具を使って回復できるものがあるならそれを使ったほうが金はかかるが手っ取り早いからな。
というか、ポーション系が便利すぎてヒーラーというジョブに付く人が年々減っているくらいだし。
ここらへんの話も後日しないとな、と思いながらも今はウサッギに意識を集中することにした。
シエナも疑問が解消したため気持ちを切り替えて、俺の言葉を一言一句聞き逃すまいと耳を傾けてくる。
(ヒーラーはさっきも言ったとおり体力や異常回復がメインのジョブだ。ただ、ヒーラーにもモンスターへの攻撃手段はある。それが……ドレインだ)
(ドレイン……ですか)
(そうだ。ドレインとはモンスターの体力を奪うヒーラー専用の魔術のことで、今のシエナでも簡単にできて、かつ有効打になり得るものだ。まず、キャロを起動して杖の先端をウサッギに向けてくれ)
シエナは言われたとおり即座にポケットからキャロを取り出し、杖に変形して目標に先端を向けた。
行動が早いな。いい感じだ。
(魔術の起動は簡単で、杖を握りながら《ドレイン》! と言えば勝手に起動する。やってみてくれ)
シエナがギュッと杖に力を入れて……小声で『《ドレイン》!』と魔術を唱える。
ウサッギの方に目を向けてみると……最初はなんとも無いような様子だったのに徐々に呼吸が荒くなって……もがき苦しむようになり……最後には断末魔を上げてピクリとも動かなくなった。
……なんというか……えげつない魔術だな……
俺は魔術師だったということもあり、色々な魔術について知識があった。
ドレインもそのうちの一つだったのだが、これはヒーラー専用の魔術ということで俺は起動できずにどういう感じでモンスターに影響を及ぼすのか間近では見たことがなかったのだが……少々刺激が強い感じだったな。
シエナの方を見てみると……涙目で俺の方を見てきていた。
「……あー……すまない、シエナ。こんな魔術だとは知らなくて」
「……ぐすん……ぐすん……あまりにも惨すぎます……ぐすん……」
『悪かった』と言ってシエナの背中をなでる。
……冒険者はこういうのに慣れていかないといけないが……初めて自分でモンスターを仕留めた光景があれじゃ……泣くのも頷ける。
しばらくしてシエナが落ち着いたのを見計らって息絶えたモンスターを回収してカゴの中にいれる。
「残り二匹だ。……後は俺がやろうか……?」
「いえ……このままではエリック様のお役に立てません。次も私にやらせて下さい」
若干目元を赤くしながらシエナが力強く返事を返してくる。
俺も特に言い返すこと無く『がんばれ』と返して再びウサッギを探し始めた。
「そういえばエリック様。先程はユニークスキルを使え、と指示を出しませんでしたが……使わなくてよかったのですか?」
草をかき分けながら進んでいると、後ろを付いてきていたシエナが質問をしてきた。
「そういえば理由を言っていなかったな。シエナのユニークスキルは『周りにいる人のユニークスキルの副作用を無効化する』というものだったよな?」
「そうですね。だからエリック様の悩みの種であるスキルの副作用も私がスキルを使えば問題ではなくなる、という感じだったと思います」
目の前の進路を妨害している木の枝を腰に下げていた剣で切り裂いて先へと進む。
「そうだ。だとしたら、さっきの場合は俺がスキルを使っていないんだからシエナも使う必要が無いよな?」
「……そう……ですね」
ふむ。自分で言っていて思ったが、何を言いたいのかいまいちこれじゃはっきりしないな。具体例を出すとしよう。
「これじゃ訳がわからないよな。えーっと、例えば俺のスキルの場合。効果は『自分の筋力、心肺機能などを強化する』というものだ。こういう効果が望める場合はモンスターと対峙したら必ずスキルを発動する。戦闘力の底上げが出来るからな。むしろ発動しない理由がない」
周りを見渡して……ウサッギが居ないことを確認して更に歩みを進める。
「ただ、シエナの場合はどうだ? 自分の身体能力や攻撃力を上げるようなスキルじゃない」
「なるほど。だからエリック様がスキルを使う時以外は私がスキルを使う必要がないということなのですね」
「まあ、今後パーティーメンバーが増えたらそこら辺は少し変わってくるが……今はそういう考えでいいと思う」
話を終えて、道なき道を進んでいると……ウサッギを二匹発見した。これで仕留められればクエスト完了だな。
またまた俺達は茂みに隠れる。
(さて、次もシエナにやってもらうが、今回は……ドレインより、もう少し目と心に優しい魔術もあるんだが……どうする?)
(ちなみにそれはどういうものなのですか?)
(毒でーー)
(――《ドレイン》!)
いつの間にか展開していたキャロの先端を二匹のモンスターに向けて……魔術を起動した。
先ほどと同じようにーーとはならず、一気にもがき苦しむようになり……あっという間にピクリとも動かなくなった。
魔術とは発動者の意思の強さと起動に割いた魔力量によって威力が変わるものだ。
今回は前回と違っておそらく『早く楽にしてあげたい』という気持ちが強くなって、魔力もたっぷりと使ってドレインを起動したのだろう。
俺は立ち上がってシエナを褒める。
「流石だな、シエナ。手際の良さ、それとドレインが複数匹に対して同時に起動できる魔術だということを瞬時に理解したとは。これは将来有望だな!」
「い、いえ! エリック様が『毒でーー』とドレインより残酷そうなことをおっしゃってきたので思わず魔術を唱えてしまったと言いますか……」
「つまり、頭でなく直感で感じ取ったというわけか。これはもう天賦の才能――」
「エリック様! 意地悪しないで下さい!」
頬をふくらませるシエナ。
……いや、俺は意地悪とかじゃなくて本気で褒めていたんだけど……
ただ、シエナも冗談だったようで、すぐに『恥ずかしくなるのであまり褒めちぎらないでください』と小さな声で俺に呟いてきた。
……え? いや、まじで可愛いんだけど俺の奥さん。
暴走する頭を理性で押さえつけてウサッギ二匹を回収し……無事クエストは完了した。