ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
デブネズミが居たところに戻ると……三匹は川で水浴びをして遊んでいた。
……遊んでいる姿は物凄く可愛いな。ただ、時折出す鳴き声が『ブビビ!』なのが残念だが。
一応、俺も剣を何時でも抜けるように準備をしながらシエナの後ろを付いていく。
さっき彼女には『ここからはどの経路で近づいていくのかとか、どのタイミングで戦闘を開始するとか、全てシエナが考えて行動してくれ』と言ったので、俺は何も指示していない。
足音を立てずにある程度近づき、デブネズミ達の死角になっているであろう場所にあった木の陰に隠れて……シエナが少しだけ身を乗り出し魔術を起動した。
「《リワインド》!」
瞬間。デブネズミがみるみると小さくなっていった。まるで時間が巻き戻っているようにだ。
ほえー、これは凄い魔術だな。正直、この魔術があれば向かうところ敵なしなんじゃないか?
リワインドの凄さに舌を巻いていると……シエナが魔術の起動を突然やめた。
「……すみません……これ以上は……無理です……」
息を切らしながらシエナが後ろで待機してた俺に話しかけてくる。
デブネズミを見てみると……サイズは半分くらいにはなっていたが……討伐したとはとても言えない感じだった。しかも俺達の存在に気がついたようで、ノシノシとこちらに向かってきていた。
……どうやら俺の想像以上にリワインドという魔術は魔力消費量が激しかったらしい。
ヘロヘロになってしまったシエナに『よくやった』と声をかけながら木に持たれかけさせて、俺は剣を抜く。
まあ、こういうときのための俺だしな。ちゃちゃっと終わらせて、シエナに感想を聞こう。
『ちょっと待ってて』とシエナに言い残し、俺は木陰から一気にモンスター達の前に出る。
シエナのおかげでデブネズミの図体は半分近くになっている。
これなら押しつぶされる心配もないな。
モンスターたちは俺の姿を見るなり『ブブブブブ!』というなんとも言えない雄叫びをあげて……俺に向かって突進をしてきた。まあ、突進って言ってもめちゃくちゃ遅いが。
対する俺も腰を落として……剣を前に突き出しながら一気にモンスターに肉薄した。
その勢いのまま進路上にいたモンスターに剣を突き刺し……まずは一匹討伐。
すぐに突き刺さった剣を抜いて、右に居たモンスターに瞬時に接近して剣を薙ぎ払い……二匹討伐。
残る一匹は俺の動きに付いてこれず、無理やり進路を変えようとしたのか急制動をかけていたが……デブネズミの名の通りデブなので、体が言うことをきかずにコケてしまい、起き上がろうともがいているところを横目に……サクッと首を切り落として、三匹討伐。
以上である。一瞬ですな。
俺は剣についた血を遠心力である程度飛ばしてから腰に下げ、適当にデブネズミの毛をムシった後、彼女の元へと戻った。
「流石ですね、エリック様。物凄く華麗な討伐でした」
木にもたれかかりながら俺の戦闘を見ていたのであろうシエナが戻るなり俺を褒めてきた。
……よし。俺が言わずとも自分でユニークスキルを解除しているな。
密かにそんな確認をしながらも言葉を返す。
「そこまでのものじゃない。誰だってこれくらいやってのけるさ」
「……素直じゃないエリック様もいいですね」
シエナが意地悪な顔をする。
……必死に表情を作っていたんだが……バレてましたか。
まあ、褒められて嬉しくないやつなんていないだろ。まあ、俺は嬉しさよりも照れが先行してしまって素直に喜べないんだが。
コホンと咳払いをして、話を変える。
「しかし、リワインドは想像以上に魔力を消費する魔術だったな」
「ですね……倒しきるまで持ちませんでした」
シエナがしゅん、という顔をする。
本当に喜怒哀楽が分かりやすくて可愛いな。
「でも落ち込む必要はない。起動は出来たんだ。あとは……シエナ自身の魔力タンクを大きくしていけばいいだけだ」
「魔力タンク……ですか……?」
荷物から水筒を出して水分補給をし、彼女にもその水筒を渡してから詳しい説明をする。
「魔術を起動するには魔力を消費する。で、その魔力が湧き上がってくるところと蓄えるところを合わせて魔力タンクって呼んでいるんだ。まあ、厳密にはそんなものは体の何処にもないけど、イメージしやすいように言っているだけだが」
シエナも水を飲んで『ありがとうございました』と水筒を渡してきた。
それを仕舞いながら説明を続ける。
「で、その魔力タンクなんだが、最初はめちゃくちゃ小さい。つまりは、湧き上がってくる魔力も少ないし、蓄えも少ないから一度に使える魔力の量も限られて……今回のシエナみたいにモンスターを倒しきれずに魔力切れを起こしてしまう」
「そういう理由があったのですね……」
「そうだ。ただ、この魔力タンク。魔術を使用すればするほど大きくなっていくんだ。理屈は不明。ただ、そうなるということだけが分かっている」
「ということは、これからどんどんクエストを受けてばんばん魔術を放っていけば、いつかはリワインドを使いこなせるようになるということですか?」
目をキラキラとさせながら俺に聞いてきた。
俺は首肯する。
「そういうことだ。まあ、キャロという超絶凄い杖も手元にあるし、すぐに思いのままにリワインドも、その他のヒーラー専用の魔術だって使えるようになるさ。だから、目の前の結果に一喜一憂せずに努力し続けるんだ」
「はい! 私、がんばります!」
よしよし。気合とか、やる気は大切だからな。
その後。シエナが立ち上がれるまでに回復したので、これにて今日のクエストを終了して街に帰ることにした。
ソフィアがリストアップしてくれたクエストは、どれも討伐数に制限がないものばかりだったからな。分かりやすく言うのであれば、いっぱい倒してもいいし、一匹だけしか倒せなくてもいいというものなのだ。
本当にシエナに合ったクエストで、あいつには感謝しかない。まあ、この前の食事では色々ひどかったが。