ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
次の日からもシエナと二人でモンスターを討伐し、彼女は順調に魔力タンクを大きくしていった。
ヒーラとしての腕も上がっていき、俺とのコンビネーションも中々のものだ。
討伐するモンスターも早い段階で難易度を『簡単』から『低難易度』へと切り替え、冒険者ランクもモンスターの討伐数が増えたのでEランクからDランクに上がり、シエナも自信をつけていった。
そして一ヶ月後。
今日は特訓の最終日ということで、討伐難易度『中難易度』のモンスターをソフィアに選んでもらい、シエナに一人で戦ってもらったのだが……討伐対象であるオークキングが『リワインド』によって一瞬で姿を消してしまった。
Dランクだったらかなり荷が重いモンスターなのだが……こんなあっさり倒してしまうとは……流石はシエナ。もう俺の補助なしでも彼女一人で十分に戦えるな、これは。
「よくやったな、シエナ。どうだ、リワインドが使えるようになった感想は」
「……この魔術、凄いですね。強そうなモンスターが一瞬で消えました。ただ、魔力もごっそり持っていかれて一発で魔力不足ぎみになりました」
シエナが少し疲れた顔をしながら話してくる。
……使えるようにはなったが連発は無理か。シエナの魔力タンクもまだ大きくは出来るだろうが、リワインドの連発に耐えうるようなレベルには出来ないだろうな。
まあ、ここまですごい魔術なら一発で打ち止め、というのもうなずける、むしろ連発なんてされたら他のジョブの人の存在意義が皆無になるし。
シエナの頭を撫でながら存分に彼女をねぎらった後、俺達は街へと戻った。
次の日。
昨日はシエナがしんどそうだったので後回しにしていたクエストの報告をするためにギルドを訪れた。
「……なるほど。シエナさんも強くなりましたね。我々としては嬉しい限りです!」
ソフィアに事の顛末を教えると、自分のことのように喜んでくれた。
お前にもそんな心があったのか。
「まあ、そうだな。で、結局オークキングを討伐したっていう証拠を手に入れられなかったんだが……クエスト報酬は出るか?」
「……無理ですね。いくらエリックさんであろうと、これはルールですから」
……ですよねー。まあ、そんな気はしてたよ。
しかし、せっかくリワインドを使えるようになって報酬が出ないなんていうのはちょっと可愛そうだな。
ということで、俺は金貨を入れている袋から本来であれば出るはずだったクエスト報酬、金貨一枚をシエナに渡した。
「……あの……これは……?」
「クエスト報酬だ」
「いえ、でもこれはエリック様のーー」
「いいからいいから。ちょっとしたお小遣いと考えてくれたらいい。というか、特訓をやり遂げたシエナへとご褒美だ。それで自分の好きなものを買えばいい」
シエナが返そうとしてきたので、無理やり服のポケットにねじ込んで受け取らせる。
シエナは『ありがとうございます』とペコリと頭を下げてきた。
「いい雰囲気になっているところ申し訳ないのですが、悪いお知らせが一つあるんです……」
お礼を言ってきたシエナの頭を撫でていると、ソフィアが気まずそうに話しかけてきた。
……悪いお知らせ……?
「どんな知らせだ? ミラさんの機嫌が悪いとかか? それか、ミラさんが暴れまわっているとか?」
「誰の機嫌が悪いって? 誰が暴れまわっているですって?」
「――あ、ミラさんこんにちは!」
ノータイムで態度を切り替えて、突然現れたミラさんに挨拶をする。
頭を引っ叩かれたが、今回はそれで許してもらえた。機嫌は悪くないようだ。
「コホン。悪いお知らせに関しては私から伝えるわ。一緒にギルド長室まで来てちょうだい」
というわけで、ソフィアとは別れてミラさんの後をついていった。
部屋に入って俺とシエナはソファに座り、対面の椅子に座ったミラさんから話を聞く。
「で、その悪いお知らせっていうのは何なんですか? ミラさんが直々に説明しに来るというのはよほどのことなんでしょうけど」
「……まあ、そうね。単刀直入に言うと、ドラゴンが発見されたらしいの」
なるほど。討伐難易度『死』に該当するドラゴンが見つかったと。そうかそうか。
「それは大変ですね。早く実力のある冒険者にドラゴン討伐のクエストを受注してもらって倒さないと。放っておいたら被害が出ます」
「そのとおりね。ただ、ドラゴンが何処にいるのかよく分かっていないの。ドラゴンが発見された、という情報自体が他の街からもたらされたものだから。それに、そのモンスターの情報を持って帰ってきた冒険者は、街についたときにはもう瀕死状態だったらしくて、『ドラゴンが出た』と言った後すぐに息を引き取ったらしいわ。かなりの重傷を負っていたみたい」
「そう……ですか……」
情報を命がけで持って帰ってきてくれた冒険者に感謝だな、本当に。
ドラゴンに出会ってしまった冒険者は生きて帰ってこれないと言われており、情報を入手できなかった人間側はいつもいつもドラゴン相手に後手に回ってしまって、甚大な被害が出ていると伝えられている。
今回、そんなモンスターの目撃情報が手に入ったのは奇跡と言ってもいいだろう。
ミラさんが話を続ける。
「それで、まずはそのドラゴンが今何処にいるのかを調べるために、各地のギルドから捜索隊を出すという話にまとまったのだけど……下手なランクの冒険者を動員したところで死者が出るだけだから、S級ランクの冒険者パーティーに依頼しようという話になったの」
「ほうほう」
まあ、それは正しい判断だろう。
なにせドラゴンは討伐難易度『死』だからな。前にも言ったが、『中難易度』のモンスターを討伐している時に『死』レベルのモンスターとバッタリ出くわしてしまったことがあったが……あんな化け物なんてS級ランクくらいしか対応できんだろう。
「というけで、ギルド長である私から緊急クエストをエリック、S級ランクのあなたに依頼するわ。内容は『ドラゴンの捜索』。討伐はしなくていい。情報を集めるというクエストよ」
「ほうほう」
なるほどねー。
「受けてくれるかしら?」
「ほうほう」
「……エリック様……?」
シエナが声をかけてくる。
俺は彼女の頭を撫でて心を落ち着かせて……口を開く。
「……え? 俺が捜索するんですか?」
「さっきからそう言ってるじゃない。こんな危ないクエスト、S級ランクのあなたにしか頼めないわ」
「いやー、そう言われましても、他のS級ランクの人に比べると全然ひよっ子ですし。それに何度もいいますが、俺は実力としてはせいぜいA級ランク。とてもじゃないですが、このクエストに耐えられる人材じゃないですよ」
「…………受けないっていうの? 私だってエリックにこんな危険なクエストを受けてもらいたくないわよ。あんたの言う通り、他のS級ランク冒険者と比べるならまだまだだろうし。ただ、そうも言ってられないのよ」
ミラさんが辛そうな顔をする。
まあ、その通りなんだろうな。俺のワガママが押し通る状況ではないのも分かっている。
ただ……今の俺のパーティーじゃドラゴンの捜索なんて不可能に近かった。戦力的にも、役割分担的にも二人じゃ無理だ。せめてもう一人いないと話にならない。
「そちらの話も分かりますが……今のまま捜索に出ても俺とシエナが無駄死にするだけです」
「分かってるわ。だから……クエストの報酬は奮発しているの。ほら、ここ見てみて」
ミラさんが指で示していたクエスト用紙の報酬内容を見てみる。
なになに……事前報酬として金貨三千枚、クエスト完了時には金貨四千枚を事前報酬とは別に渡す……
「桁を間違っているんじゃないですか? これ」
「合ってるわよ、それで。こんな危ないクエストを受けさせるんだから、報酬だってかなりのものを用意しているの。そこの壁に袋が置いているでしょ? それ、事前報酬が入った袋だから。それを使って奴隷市場で腕のいい子を見つけてきなさい。冒険者をスカウトするのもいいけど、どうせあんたの悪評とクエストの難易度のせいで誰もやりたがらないだろうし」
……そういうことか。
確かに、こんな危険なクエストを大金払われたからって受けるやつはいない。
そうなると、パーティーメンバーを増やすには奴隷を買うしかなくなるが、意外と奴隷として売られている人の中には結構な腕を持つ人もいるのだ。
そういう人を見つけて迎い入れることができれば……なんとかドラゴンの捜索くらいだったらできるような戦力にはなるだろう。
ミラさんも考えてくれているんだな。
「分かりました。緊急クエストを受けることにします。シエナ、それでもいいか?」
「はい! 私も精一杯がんばります!」
シエナも了承してくれた。
「二人共ありがとう。無事にクエストを完了したらまた美味しいご飯を作ってあげるから、楽しみにしてなさい」
「あざっす!」
というわけで、俺達は緊急クエストを受諾することとなった。