ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
特に何事もなく朝食を皆で楽しく食べた後、俺達は街へと繰り出す。
「何処に何をしに向かっているんですの?」
三人で歩いていると、ずっと気になっていたのであろうことをメリッサが聞いてくる。
まあ、黙っているようなことでもないしな。教えておこう。
「今向かっているのは、この街一番の服屋さんだ。そこでメリッサの服を作ってもらおうと思ってな。今着ている服もいいが……これからのクエストを考えるとそれだと心配なんだ。あと、シエナがいい服を着ているからな。お前にもそういうのを着させるのが筋ってもんだろ?」
メリッサが着ているのは、如何にも魔術師というような服だった。
別に悪くはないが……シエナが隣にいると見劣りしてしまう。これでは可愛そうだろう。
というか、「ダメージ無効化」を付与された服を着てもらわないと怖くて緊急クエストに連れていけないしな。
そんなことを考えていると……俺の言葉を聞いたメリッサが瞳をうるませて右腕に抱きついてきた。
「お、おいーー」
「エリック……感謝しますわ……! このお返しは必ず……必ず……!」
いや、嬉しいだけど、街中でそんなことをしたら……あぁ……! 周りの人が視線を向けてきたじゃないか……!
「分かった! 分かったから離れようか!」
メリッサの頭を撫でて、落ち着いてもらって……なんとか離れてもらった。
ふぅ……本当に突発的にこういうことをされると周りの目線もキツイし、息子的にもキツイから止めていただきたい。
「よ、よし、じゃあ行くぞ」
俺は若干キョドりながらも二人に声をかけて、再び歩みを進めた。
ニーニャのお店の前まで行くと、彼女は丁度お客さんをお見送りしているところだったらしく、店外でバッタリと鉢合わせをした。
「お、エリックさんだにゃ。今日はどういう要件……って、またメスが一匹増えているにゃ! それに奴隷の首輪も無くなっているにゃ! これは、自分のメスにしたというーー」
「よーし、一回黙ろう! というか店内に入ろうねぇ〜。こんなところでそんな破廉恥なことを言っちゃうなんて、本当にニーニャはおっちょこちょいだな〜あははは」
ニーニャの背中をグイグイと押して俺達は店内へと入る。
はぁ……対応に疲れる……
店内に入ってから彼女は俺に質問攻めをしてきたが、それを全て華麗にスルーし、無理やり本題に入る。
「今日は、新顔であるメリッサの服を作ってもらいに来た。シエナと同じ『ダメージ無効化』を付与された服を頼む」
「……分かったにゃ。で、この二人とはどういう関係なんだにゃ? それを教えてくれないと、気になって気になって服を編めないにゃ」
……こいつは本当に……まあ、仕方ないか。ちゃんとした仕事をしてもらわないとこっちが困るからな。
「彼女たちはーー」
「――エリック様の妻です」
「――エリックの将来の奥さんですわ!」
「んな!?」
「んにゃあ゛!?」
俺とニーニャが同じようなリアクションをする。
おいおいおい、シエナはまだしも、メリッサのその発言はまずい! 俺にとっても、彼女にとっても良くないって!
「シエナはいい。それは事実だからな。でもメリッサ。お前の場合は、お互いのことをよく知らないのに、今からそんな事を言っていたら将来後悔することになるかも知れないぞ? 俺の事を嫌いになったりとかしたらーー」
「わたしくしに限って言えば、そんなことは起きないと断言できますわ! エリック様の強さ、優しさ、それとちょっと意気地なしのところも、全部ひっくるめて好きですの! 例え何が起きようとも嫌いになるなんてありえませんわ!」
メリッサが胸を張って断言してくる。
凄いな。まだまともに会話を交わしてから一日しか経ってないのにそこまで言えるなんて……やはりウダウダと考える俺がおかしいのだろうか?
ただ……まあ……こんなにアピールされると……俺も嬉しい……
照れを隠しながらなんとか口を開く。
「……え? そう? ふーん……まあ、俺は? 別に? お前が俺の事をどう思っていたとしても? 気にしないんですけど? でも? まあ? そこまで言ってくれるのは素直に嬉しいというか?」
「――エリックさん! なにニーニャのお店でノロケをかましてきているんだにゃ! ここは盛り場じゃないにゃ! 交尾するなら近くのラブホテルに行くにゃ!」
「お前は本当に空気を読まないし、言葉を選ばないやつだな! 別に盛ってねえよ! てか、お前がそもそも俺達がどういう関係か、ということを聞いてきたからーー」
「うるさいにゃ! メリッサちゃん、この気持ち悪いツンデレムーブを醸し出している男は放っておいて服を作りに行くにゃ!」
「あ……はい……宜しくおねがいします……」
敬語モードになったメリッサがニーニャに連れられて女性用の服売り場へと消えていった。
はぁ……とため息をついた後、シエナに話しかける。
「……俺って盛ってた?」
「……えーっと……たぶん……盛ってはないかと」
「……俺って気持ち悪いツンデレムーブを醸し出してた?」
「…………私はそういうエリック様も好きですから、大丈夫です!」
シエナが俺を励ましてくる。
……聞かなきゃよかった……
『ありがとう』となんとかシエナにお礼を言いながら、適当に店内に展示されている服を見て時間を潰した。
四十分後。シエナのときと同じくらいの時間がかかったが、服は無事に完成したようで、できたてほやほやの服を着たメリッサがニーニャに連れられて俺達の元へと現れた。
さっきまでは、全身を覆うような露出度の低い黒色の服だったのだが……今、彼女が来ている服は、薄い青色を基調とした露出度のかなり高いものとなっていた。
デザインとしては、下はマイクロミニスカートで、少し動くとパンツが見えるんじゃないかというくらい丈が短く、上はノースリーブで、胸の中心がハートマークにくり抜かれたエチエチなものとなっていた。
シエナもそうだったが、下は生足、上はお腹とか胸が一部見えている服をニーニャは好んで作るらしい。
全く……土下座をしたくなるくらい素晴らしい仕事をしてくれやがって……ありがとうございます!
「あ、あの……どうですか……? ど、どこかおかしいところでも……あったのですか?」
……おっと。あまりにもエロすぎて何も感想を言っていないことに気が付かなかった。
メリッサが黙りこくる俺を見て不安になっているようだし、ここはいい感じの感想を言って彼女を喜ばせてあげよう。
「……そうだな……最高。これに尽きるな。この胸の谷間がハートマークにくり抜かれているのが、特にいいな。なんていうのか……うん、さいこ……う゛!?」
メリッサの顔がどんどん赤くなっていっているところを見て、ようやく自分が何を口走っているのかに気がついた。
しまった……! 息子にまたもや脳を支配されて、とんでもないことを言ってしまった……!
これは不味いと訂正を慌てて加える。
「いや! これは違うんだ! いや、最高という部分はそうなんだけど! そのあとのハートマーク云々のところは忘れてくれ!」
「ぁ……その……褒めて頂き……感謝します……」
なんでそんなに嬉しそうな顔をするの!? 普通、今のニーニャみたいに汚物を見るような目をしてくるはずだろ!?
どういうことだと思っていると、その厳しい目線を送ってきていたニーニャが説明をしてきてくれた。
「メリッサちゃんの服のハートマーク。これはニーニャが考案したものじゃないにゃ。服を織っている時に、メリッサちゃんがエリックさんへの愛を服にハートマークを取り入れることで表現したいと言ってきたんだにゃ。つまり、この胸の部分のデザインの考案者はメリッサちゃんだにゃ。ニーニャは言われたとおりに織っただけにゃ」
な、なるほど……
メリッサは顔を両手で覆い隠して、『私を見ないで!』みたいな感じになっている。
……可愛い……
「あー、そのー……なんだ? 似合っていると……思うぞ……」
なんとか褒め言葉を絞り出してメリッサに伝えたのだが……周りの女性陣からは微妙な雰囲気が流れる。
あれ……? 反応が思ったよりも薄い……というか、ニーニャーが俺の事をジト目で見てくるし……どういうことだ?
困惑していると、シエナが小声でアドバイスを言ってきた。
(エリック様。その言葉も大事ですが、メリッサ様のハートマークに込めた思いの返事をしていただかないと……)
シエナの顔を見る。彼女は力強く頷く。
……マジですか……いや、俺は……うーん……まあ、そうだな。
「えーっと……お前の気持ちは嬉しい。凄く嬉しい。そこまでアピールされて嬉しくないわけがない。うん」
「じゃ、じゃあ! わたくしをお嫁さんに――」
「――それはまだ早い」
即座にブレーキをかける。
全く、どんだけ俺の嫁になりたいんだよ。俺よりもいい男は山ほどいるだろうに……
ショボンとしているメリッサにシエナが『まだまだこれからですよ!』と励ましの言葉をかける。
よし、メリッサのフォローはシエナに任せて、俺はお会計を済ませよう。
というわけで俺は、ダメ男を見るような目で見てくるニーニャと一緒に勘定場に行って服の精算をする。
「で、今日はいくらだ?」
「……あんなにアタックしてきてくれるにゃら、なんにも考えずに自分のメスにしたらいいんだにゃ。交尾してから生まれる愛もあるんだにゃ」
「……会計を頼む」
「はぁ……。とんだチキン野郎だにゃ。……合計で金貨四百枚ってところだにゃ。前回よりも大幅にまけておいてあげるにゃ。だから、これからもご贔屓にしてくださいにゃ。ちなみに……」
んにゃ! と言って勘定場の台の上にニーニャがどさっと服を置く。
「これはおまけにゃ。シエナちゃんのときと同じく『ダメージ無効化』の効果が付与されていない服と……これまた同じく普段着とかネグリジェだにゃ。交尾の時はこのスケスケのエロエロの服をーー」
「――よし! この袋の中から金貨四百枚を取ってくれ!」
「にゃほー!」
急いで背負っていた荷物から金貨が入った袋を取り出して、ニーニャに渡した。
……こいつは黙らせないと本当に余計なことしか言わないからな。
「ありがとうございましたにゃ! またのお越しをお待ちにしてますにゃ!」
お会計が済んだので、とっととニーニャのお店から退散をする。
次に来る時は、こいつの口を魔術で閉じさせるかなにかしたほうがいいかもしれんな。
俺の気持ちとは裏腹に、ニーニャはお店の外で俺達が見えなくなるまで笑顔で手を振っていた。