ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
シエナとメリッサの準備が出来たのを見計らって、俺達は馬をそこら辺の木にくくりつけた後、早速周辺の捜索を始めた。
俺を先頭に、メリッサ、シエナの順で陣形を組む。後ろからモンスターが襲いかかってくる可能性もあるが……俺が後方も注意すればいいだけの話だからな。
しばらく歩いていると、ガサゴソという音が左前方から聞こえてきたので、足音を消して近づいてみる。ドラゴンではないだろうが……注意しておくにこしたことはないからな。
で、近づいて音の発生場所を覗いてみると……如何にも厳つそうなゴリラーがご飯を食べていた。
……なるほど。ゴリラみたいなモンスターだ。絵でしか見たことが無かったが……ゴリラのまんまじゃねえか。
ちなみに、モンスターと動物の見分け方は簡単で、モンスターはほぼ例外なく体の何処かが淡い光を放っている。そこで瞬時に見分けられるというわけである。
俺はシエナたちにジェスチャーを送って、後ろに下がれと指示する。
ゆっくりゆっくり離れていって……
パキッ! ドスン!
「きゃあですわ!」
後ろを一瞬振り返ると、メリッサが尻もちをついていた。
……おっと、こいつはまずい。ゴリラーが俺達の存在に気がついたようで咆哮を上げながらドラミングをし始めたぞ。
ちなみにゴリラーの討伐難易度は『中難易度』。ドラゴンが近くにいるかもしれないから戦闘行為は出来るだけしたくなかったんだが……致し方ない。こいつ相手だとシエナ達が逃げ切れないだろうし。
ドラミングをしながら俺達に襲いかかろうとしていたゴリラーに向かって、時間がなかったのでユニークスキルは使わずに左手を向け……魔術を唱える。
「《フリーズ》!」
この魔術は、目標のモンスターなどを凍らせるもので、一般的には足止めとして使用されるものだ。
俺もそのつもりで使ったのだが……この魔術を食らったゴリラーは一瞬で全身が凍ってしまい、動かなくなってしまった。
というか、ユニークスキルなしでこの威力とは……
「……これは予想外だな。でもラッキー! ってことで……フンッ!」
力いっぱい拳を握ると……凍ったゴリラーが粉々に粉砕されて……おっとこいつはマズイ。絵面がトンデモナイことになってしまって、モザイクが必要だ。
「おい、お前達! これは見ちゃ……あー、がっつり見ちゃってましたか〜」
後ろを振り返って目をゴリラーだったものに向けないようにと言おうとしたのだが……彼女たちは思いっきりその光景を見ており、涙目になっていた。
吐かないだけ凄いと思うが……流石に刺激が強すぎたよな。
俺は、ゴリラーの毛を適当にむしり取った後、シエナ達のメンタルケアにしばらく時間を割いた。
「よし。じゃあ、探索を続けるぞ!」
「は、はい……」
「……次からはもう少し刺激の少ないやり方でお願いしますわ……」
少々元気がない彼女たちを引き連れて、探索を再開する。
刺激が少ないやり方というか、『フリーズ』だって本来はあんな威力でないんだけどな。このローラが凄いんだろう。
ちなみに、今の俺の魔力量はマックスの八割くらいと言ったところだ。魔術を馬車の時にかなり連発してのこれだから、ローラの欠点は俺にとって欠点とは言えない感じだな。
手袋や魔力量のことを考えて歩いていると……ウサッギを三匹いるのを見つけた。
ジャスチャーを送り、俺達は茂みに隠れる。
(実はな。うっかり食料を積むのを忘れてしまって、水しか備蓄がないんだよ。というわけで、食料を現地調達しなければいけないんだが……ウサッギを今日のご飯にしようと思う)
テヘッ、という顔をするとメリッサがジト目で俺のことを見てきた。シエナは真顔である。
シエナ、お前……いつものニコニコ笑顔はどうしたんだ!? お前がご飯大好きっ子なのは分かるが、その真顔はいけませんよ! 俺の心が削れていくから!
土下座をして謝った後、メリッサにウサッギを狩ってもらうことにする。
キャロラインのお店で彼女の魔術を見た後は、色々準備が忙しくて他の魔術を使ってもらうタイミングが無かったからな。ドラゴンに会う前に実力の確認と、勘を取り戻してもらわないと。
俺とシエナはメリッサの後ろに下がり、彼女がどういう風にウサッギ狩るのかを見守る。
メリッサは茂みから少しだけ頭を出してウサッギに狙いを定めた後……魔術を起動した。
(「《バインド》!」)
すると、シュルシュルと虚空から縄が出てきて……ウサッギ達を一瞬で捕縛する。
……いい腕だな。ここまでスムーズに縄を操れる人は中々いないぞ。
メリッサはさらに、地面に落ちていた数個の小石を右手で持って……違う魔術を唱える。
(「《スローイング》!」)
瞬間。メリッサが持っていた小石が勝手に浮き上がり……ウサッギに向かって勝手に飛んでいった。
コココンッ! とリズムよくウサッギの頭に小石が当たって、モンスターが息絶える。
これは綺麗な討伐方法だな。流血は一切なし。遠距離からの攻撃だから怪我を負うリスクも少ない。で、おまけに武器は何処にでもある小石と。
俺は立ち上がってメリッサに賞賛を送る。
「半年のブランクがあるとは思えないくらいの腕じゃないか。凄いぞメリッサ! 俺だと確実に流血沙汰は避けられないのに、ここまできれいに倒すとは」
「……あ、ありがとう……ございます……」
メリッサは褒められ慣れていないのか、敬語モードになりながら顔を真っ赤にする。
可愛いな、おい。
絶命したウサッギの血抜きをした後、背中に背負っていた荷物に収納して……再びドラゴンの捜索を開始した。