ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
というわけで、俺とシエナはベッドで正座をしながら向き合う。
「……ン゛ン゛! えー、遅くなってすまない。指輪という存在をそもそも忘れていてだな。うん、まあそういうことなんだが。あー、その、うん。気に入らなかったら捨ててもらって構わないと言うか、はい」
全くもって指輪を渡す時に言うべきことではないことを話しながら……シエナの左薬指に指輪をはめる。
彼女の指よりも少し大きかったのだが……所定の位置まで差し込んだ瞬間、キュッと勝手にサイズが小さくなって、シエナの指にちゃんとフィットするようになった。この指輪……すげぇ……
謎の技術に感動していた俺だったが……シエナは不満そうな顔だ。……いつものごとく何かやらかしたんだろうか?
「あー。ごめん。やっぱり気に入らなかったか? まあ、それなら後から捨てるなり売るなり――」
「――エリック様。指輪を渡すときは、もっと相応しい言葉があるのではないですか? あと、エリック様から頂いたものを私が捨てるわけがないじゃないですか。もう少し自分に自信を持ってください。あと、私を信用してください」
『さあ、続きをどうぞ』と言ってシエナは口を閉じる。
……続き……つまりは、この場に相応しいことを言え、ということだろう。まあ……そうだな。ここまで言ってくれているんだから、言わないとだな。
「えー、シエナ。そのー、改めて俺と結婚してくれ。こんな頼りない男ではあるが……お前のことを大事に思っていると言うか……まあ、そんな感じなんだ。これからもー……あー……一緒に居て欲しい」
若干目がキョロキョロとしてしまったが、なるべくシエナの目を見るように努めて……彼女に対して二回目のプロポーズをする。
シエナは『仕方のない人ですね』と笑いながら俺に近づいてきて……キスをしてきた。愛がこもった、いや、愛が凝縮されたようなキスだ。
誓いのキスにしては少しディープなものではあったが……これも悪くない。
で、メリッサが見ている中、たっぷりとお互いの存在を確かめた後……シエナは『不束者ですが、宜しくおねがいします!』と元気よく返事をくれた。相変わらずかわいいな……。
シエナには無事渡し終えたということで、今度はメリッサと向き合い……指輪を箱から取り出す。
彼女は先程の俺達のキスを見て恥ずかしくなったのか、顔が赤い。てか、再度差しだされた手もほんのり赤いな。ある意味すごいぞ。
「あー、メリッサ。その……お前に対しては大分曖昧な態度をとってきたというか、宙ぶらりんな感じだったと思うんだが……今日、白黒はっきりつけようと思うんだ」
メリッサは高速コクコクをする。
……うん、それに関しては何も言わないでおこう。
「メリッサが、今も俺のことを好きかどうかは分からない。俺の中途半端な態度を見て、愛想を尽かして――」
「好きですわ! 今も大好きですわ!」
「……お、おう。そうか……。えー、何を話そうとしていたんだっけ? まあいいか。で、お前と出会ったときから俺は一貫して『好きかどうか分からない』と言い続けてきたわけだが……そのー、やっぱりお前のことは――」
「――その言い方だとあとに続く言葉は『好きじゃない』ですわよ!? シエナ! どうしましょう!? わたくし、もうこのパーティーに――」
「――おい! 話を最後まで聞けよ! なに勝手に解釈してんだよ! そもそもこれはお前の結婚指輪だぞ!? ここまでして『お前のことは好きじゃない』って言うとか……頭がおかしいだろうが!」
……全く、トンデモナイな。俺がなんとか勇気を振り絞ってプロポーズしてるのに。
しかし、メリッサは今の俺の言葉を聞いて落ち着いてくれたようで、『ご、ごめんあそばせ……』と言って居住まいを正す。
「あー、いくぞ? 言うからな? 俺はお前に対して中途半端な態度をとってきたわけだが、やっぱりメリッサのことは好きだと思う。お前が俺の元を去ったらと思うと悲しいし、他の男とイチャコラしているところを想像すると嫌だと言うか……いや、シエナとイチャイチャしている俺が言うのはおかしいとは思うんだが……。まあ、そういうことなんだ。もう一度言うぞ? お前の事が好きだ。その……結婚してくれ」
そう言いながら指輪を嵌めてあげる。彼女は一切抵抗せずに、指輪と俺を交互に見てくる。
しばらくその奇妙な行動をしていた彼女だが……じわりじわりと涙袋に涙が溜まっていって……ついには泣き出してしまった。
いつもの俺ならここで慌てまくるんだが……メリッサの表情からして悲しくて泣いているのではなく、嬉しくて泣いていることは明白だったので……彼女をそっと抱きしめてあげる。メリッサもギュッと俺に抱きついてきて……俺の胸の中でシクシクと泣いた。
で、十分後。流石に長い、と思って俺の胸に顔を埋めているメリッサを見てみると……『これが……エリックの匂い……あっ……マズイですわ。興奮してきて……』とか小声で言っていたので、すぐに彼女を引っ剥がした。
「おい、お前が泣いているから抱きしめていたのに、泣き止んでいるどころか発情してんじゃねえか。まだ、早えよ。というか、返事を貰っていないんだが?」
「は、発情なんてしていませんわ! 失礼しちゃいますわね! その……少しエリックの匂いを嗅いでいい気持ちになっていただけですの! コホン。で、その……返事ですが……こ、こちらこそ宜しくおねがいします。こんな私ですが……愛していただければと……思います」
敬語モードになりながらもオッケーの返事をしてきてくれる。
(……敬語のメリッサも悪くないよなぁ……なんか好きだわ。)
そんなことを思いながらも『任せろ』と言って……なんとか二人に指輪を渡せたことに安堵をした。