ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
二十分後。あれからも少しおしゃべりをしつつ洞窟を探索していたのだが……過去に類を見ないほどの強いモンスターから出てくる圧力を感じた俺達は、一瞬にして黙り……各々が戦闘態勢に移行する。
(シエナ、メリッサ……俺達は運良く当たりを引いたのかもしれない。いや、見方を変えれば運悪くババを引いたとも言えるが)
小声で彼女たちに俺の考えを伝える。
……これは……過去一度だけ会ったことのある討伐難易度『死』のモンスターから出ていた圧力、もしくはオーラとよく似ている。あのときはドラゴンではなかったが……
(ど、どうすればいいんですの……? いくらこのように天井が高くて、道幅も広い洞窟と言えども……狭いことには変わりありませんわ。洞窟での戦闘は……)
(俺達の目的は、あくまで『ドラゴンの居場所を特定すること』だぞ? 戦闘にならないように立ち回るべきだ。まあ、戦闘に発展する可能性もあるが……今の俺達のパーティでは手も足も出ない。戦力的には、三人合わせて『ドラゴンの捜索』をするのが限界なんだから)
(ではどうすれば……)
シエナとメリッサが不安な顔をする。
……どうしようか……
俺は悩む。このまま三人で突っ込めば、最悪の場合皆殺しにあって他の冒険者に情報を渡せなくなる。まあ、この先に潜んでいるのがドラゴンとは限らないが。
シエナとメリッサを見る。二人共、俺が決断するのを待っている様子だ。昨日彼女たちに渡した指輪がキラリと光る。
……よし、決めた。
俺は彼女たちに向き直り……
(馬車を置いているところまで退避しろ)
と言う。
『嫌だ』と言ってくるかもしれないと思っていたのか……意外や意外。二人共素直に頷いてくれた。ダタをこねられなくてよかったと安堵しつつも、心のなかでは『最悪会えなくなるのに、思ったよりも淡白だな』と思っていると……シエナとメリッサが『帰ってこなかったら二度と良いことをシてあげませんからね!』と言ってキスをしてきた。
それは困る。まあ、良いことが出来なくなって困るのはお互い様だとは思うが。
俺は『すぐに戻ってくるさ』と言って……二人を見送った。
……なんか、変なフラグが立っているような気がするが……嬉しかったのでヨシ!
シエナとメリッサを避難させた後。俺は装備を点検し、問題がないことを確認する。ちなみに、いつも俺が背負っていた荷物はシエナに預けている。
装備の点検が終わった俺は、ユニークスキルを一度解除してから……再度発動し直す。
『俊敏さ向上』と『身体機能強化』、『魔術威力強化』に『視力強化』、『聴力強化』と……合計で五つを発動し、準備万端!
ということで、やることをやった俺は洞窟の更に先へと歩みを進め始めた。
歩きはじめて五分。今のところ何も異常はない。というか、モンスターが一匹も見つからない。洞窟の中って、大抵モンスターがウヨウヨいるんだが……この洞窟はそうではないらしい。おそらくは、奥に潜んでいるモンスターに怯えてみんな逃げ出したんだろう。
ちなみに、この洞窟は入り口からずっと同じ高さ、同じ幅で道が続いており、それがなんというか『ドラゴンが住んでいそう』と思わせる要因になっていた。もしかしたら、ドラゴンが自分でこの洞窟を作ったのかもな。いや、分かんないけど。
「てか……進めば進むほどモンスターから発せられている圧力みたいなものが強くなっていって……今にも息が詰まりそうだぞ……」
額の汗を拭い、愚痴を言いながらも慎重に一歩ずつ前に進んでいく。
洞窟は変に入り組んでいるわけでも隠し部屋があるわけでもなく、ゆるーいカーブがあるだけで基本的には一直線だった。本当にこの洞窟の成り立ちを知りたいところだな……
そんな感じで学者みたいなことを考えながら歩いていると……視力強化した目が、かなり先にあると思われる広い部屋を捉えた。
目を凝らしてぐんぐんと倍率を上げると……でかいモンスターがその部屋にいることが判明する。
……流石に遠すぎてドラゴンかどうかの判断がつかないな。というか、実際に見たことがないんだから無理もない話ではある。まあ、一応ミラさんから特徴はちゃんと聞いているからもう少し近づけば分かるだろう。
ということで、先程よりの慎重になりながら先へと進む。
『グググ……グググ……』
今までにないほど緊張しながら歩くこと二分。聴力強化した耳が、部屋に居座っているモンスターの寝息を捉えた。
近くで聞いたらあまりの低音具合に体の奥から振動するような感じだろうか。強者感が半端ない。というか、寝ているなら今がチャンスなのでは?
そう思って近づくスピードを上げる。足音さえ気にしておけば、寝ているのだから視界に捉えられる心配はないし、ささっとドラゴンか判断してシエナ達のところへ帰ろう!
そういう考えの元、俺はどんどんと部屋に近づき……あっという間に視力強化をした目であればそのモンスターの隅々を見られるところまで近づく。
して、息を殺しながらモンスターがドラゴンかどうかを判別し始めた。
えー、まず体がバカみたいに大きいな。あと、硬そうな鱗もまとっている。で、頭には角っぽいのが二本、左右生えているな。それから……足は……寝ている体勢が悪くてよく見えない。翼は……ああ、あるな。立派でかっこいい翼が生えていますよ。
で、この観察結果から導き出される答えは……いや、これドラゴンだろ。どう見てもドラゴンですわ。
しかし……見た目はカッコいいなぁ……男心がくすぐられるデザインだ。もう少し近くで、じっくりと見たい気もするが……こいつは討伐難易度『死』のモンスター。大人しく寝ている間にさっさと退散するに限る。
用事が終わった俺は、抜き足差し足忍び足というような感じでこの場から離脱しようとしたのだが……ドラゴンがいきなり寝返りを打って『ズドン』という音が洞窟に鳴り響く。
驚いて声を上げそうになったが、なんとかそれを我慢し……今度こそこの場を離脱しようする。しかし……寝返りをうったおかげでお見えになった四本の足のうち、一本が何かを掴んでいるのがちらりと見えた。いや、見えてしまった。
少し気になったので目を凝らしてみると……どうやら全裸にひん剥かれた女性が掴まれているらしい。彼女は生きていて、今も必死に逃げ出そうともがいている様子だ。
……マジですかぁ……
いや、助けに行きますよ? 助けに行きますけどね……せっかく安全に逃げられると思ったのに……。
シエナ、メリッサ。俺、全裸の女性を助けに行って死ぬかもしれん。