ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
馬車を止めていたところまで戻ると……シエナとメリッサが馬車から降りて俺の帰りを待ってくれていた。
遠くからちらっと彼女たちの顔を見たときは今にも泣きそうな顔をしていたのに、俺を視認するなり満面の笑みになって、駆け寄ろうとしていたっぽいのだが……スズナを見るなり二人の動きが止まる。
「……エリック様。ご無事で何よりなのですが……その女性は……? なぜ全裸で……?」
「……ま、まさか……わたくしたちがいないことを良いことに洞窟内でその女と密会していたんですの!? しかも全裸ってことは……ま、まさか……せ、セック――」
「――ち、違う……色々説明……したいんだが……す、スズナ……一旦……降りてくれ……」
足をガクガクとさせながらも体の全ての筋肉を総動員して踏ん張り、スズナを地面に下ろす。
(な、なんとか彼女を怪我させずに……済んだ……)
そう思って少し安堵したのが悪かったのだろう。俺の体を支えていたユニークスキルと魔術が突然解除されて体の力がふっと抜け……顔面から前のめりに倒れてしまう。
「え、エリック様!? ど、どうし――せ、背中が……!」
「ぴぎゃーーー! え、エリック!?」
二人が倒れた俺に駆け寄ってくる。
……い、いかん……まだドラゴンが追いかけてくる可能性があるのに……起き上がれない……
体に力が一切入らない俺だったが、声は出せることに気がつく。
今すぐ馬車で遠くまで逃げる必要がある。こんなところで時間を食っている場合じゃない。
「……お、お前たち……今すぐ……馬車に乗り込め……。ドラゴンは……まだ……襲ってくるかも……しれない……」
「や、やっぱりドラゴンがいたんですか!? ……いえ、今はそれを聞いている場合ではないですね。メリッサ様と……スズナ様! エリック様を馬車までお連れしてください! 私は馬車を出す準備をしておきます!」
「わ、分かりましたわ!」
「了解や!」
シエナがパタパタと馬車のところまで走っていき、メリッサとスズナは俺に肩をかしてくれて……馬車のところまで連れて行ってくれる。
「え、エリック……大丈夫ですの……?」
心配そうな声をメリッサが出してくる。
……この状態を見て『大丈夫だ。問題ない』とか言ったらそれはそれでおかしいと思うんだが……まあ、変な心配はかけたくないよな。
「……し、心配……するな……。こんなの……かすり傷だ……」
「…………そ、そうですの……」
メリッサはそれ以上何も聞いてこない。俺の体を気遣って、声を出すことによる体力の消耗を抑えてくれているのだろう。全く、そんなこと気にしなくていいのに。
メリッサの優しさに触れつつ、ズルズルと歩きながらもなんとか馬車に乗せてもらい……俺達はこの場から急いで離脱した。
パラカッパカラッ!
スピードアップの魔術は付与していないが、馬車を引っ張る馬が出せる最高速度で洞窟から離れていく。
「え、エリック……こんな怪我をして……」
メリッサが痛みで顔を歪める俺の頭を撫でてくる。おそらくは、痛みを和らげようとしてくれているのだろう。
というか、今すぐにでも気絶したほうが楽だし、気絶したいのは山々なんだが、背中の鋭い痛みで気絶できない……。
なので、というのはおかしいが、少しでも痛みから気を反らすために気遣ってくれたメリッサには悪いがスズナに話しかけることにした。
「そ、そういえば……スズナ、お前……足をくじいていたよな? なんで……さっきは俺を支えて……歩けたんだ……? あと……ドラゴンの攻撃で……他に怪我したとかはないか……? 怪我……したんだったら……安全な場所についたら……俺よりも先に……シエナに治してもらえ……。あれだ……あの……レディファーストってやつだよ……ははっ……。し、シエナは……まだ冒険者になって……日は浅いが、治癒能力も一流レベルなんだ……凄いだろ……?」
「……君……いや、エリックのおかげで足以外の怪我はしとらんよ。ウチのことを必死に守ってくれたから……この通り、ピンピンやで! それに、ウチは怪我の治りがめちゃくちゃ早いねん! だからもう大丈夫や! というか、エリックのほうが何倍も危ない状況やんか。ウチのことは気にせずにシエナさんにしっかり治してもらってや」
スズナは俺をいたわるように手をギュッと握ってきてくれる。
ああ……なんか……幸せだぁ……メリッサは頭を撫でてくれて、スズナは手を握ってくれて……。超絶美人な二人に傍で心配されて……シエナも頑張って馬車を安全なところまで移動させてくれている……。
俺は……世界で一番幸せな男かもしれない……そう思うと……なんだが痛みが和らいできて……まぶたが重く……
「え、エリック!? 大丈夫ですの!? なんだか『わが人生に悔いなし』みたいな顔をしていますわよ!」
「ちょ、ちょっと君! これで死なれたらウチどうすればええんや! 寝たあかん! 戻ってくるんや! う、ウチと籍を入れるんやろ!」
「え!? わたくしたちが馬車で泣きそうになるのを我慢しながら心配して待っていた間に、一体何があったんですの!? やっぱりヤッたんですの!? ドラゴンの前でヤッたんですの!? というか、さっきは聞きそびれましたがあなた、なんでマッパなんですの!? エリック! 目を覚まして答えて下さいまし! エリック! あ、わたくしのマントであれば貸して差し上げますわね。はい、どうぞですわ」
「いや、そんなことヤるわけ無いやろ! ウチ、貞操観念は強いんやで! そんな簡単に股は広げへんで! マントありがとうな」
「メリッサ様! スズナ様! 今その話をするのはタイミング的におかしいかと! それとエリック様! 私との約束を破ったらだめですからね! 私を置いて先に死んだら……許しませんからね!」
各々がそれぞれ口を開いて馬車の中が騒がしくなる。
(……う、うるさい奴らだな……だが……俺達らしいといえば……らしいな……)
ある意味いつもどおりの雰囲気になってくれて、実家のような安心感を感じながら……限界をとうに通り越していた俺は……意識を手放した。
どうか、無事に逃げ延びられますように……