ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
そんなこんなでスズナのことを異世界転移者だと信じたところで、さきほどの彼女の発言で気になっていたことを一つ聞くことにする。
「そういえば、さっき『この世界に危機が迫っている』って言っていたが、それってどういうことなんだ?」
「うん、それもしっかり説明するわ。……ただ、その前に一つ。魔王っていう存在のことを知っとう?」
……魔王……? ふむ……ふむ……
「……大分前にミラさんから聞いたことはあるぞ。魔王は、俺達冒険者が討伐対象にしているモンスターをこの世界に遣わしている人物だ、みたいな。全ての悪の根源とも言っていたな。まあ、あのときはミラさんも冗談半分で言っていたし、魔王なんていう存在がこの世界で確認されたことなんて無かったしな……。あ、ミラさんっていうのは、俺達が拠点にしている街の冒険者ギルドのギルド長で、時たま暴力を振るってくるが優しい人なんだ」
「……暴力を振るってくるのに優しいって……矛盾している気しかせえへんけど……まあええわ。シエナさんとメリッサさんは知らんかったんやけど、エリックは魔王のことを知っていたんやな。魔王とモンスターのイメージとしては大体それであってると思うで。モンスターは魔王の遣いで、魔王はめちゃくちゃ悪い人なんや」
スズナが怖い顔をしながら『がおー』と言ってくる。
……可愛いけど……魔王って感じじゃないよな。
「……ということは、ミラさんの冗談が冗談ではなかったってことか。それで、その魔王とやらがどうしたんだ? なんとなく察しはついたが」
「まあ、多分予想通りやと思うで。結論から言うと、いずれ魔王がこの世界に降り立ち、人間を全て駆逐するらしいねん。女神様がそういう未来を見たらしいわ。あの人の未来視は外れることが無いらしいから、たぶん今のままやとそうなるんやろうな。ただ、何時何処でー、とかそういうことは分からんかったらしいけどな。やから、今は魔王というとんでもない存在がこの世界に現れようとしている、と思ってくれていたらそれでええと思う。これが『この世界に迫っている危機』ってわけやな」
……なるほど……。これも信じられない話ではあるが……今は詳しく知りようがないから、そういうものなのだと思っておこう。それに、俺が今どうこう出来る話じゃないっぽいし。スズナもそれが分かっているから、頭の片隅に留めておくくらいでいいよ、みたいな感じの話し方だったんだろうし。
しかし、異世界転移者で女神とも顔見知りのスズナって……一体どういうジョブなんだろうか? いや、彼女の話からするとまだ冒険者じゃ無い可能性が高いが……ダメ元で一応聞いてみるか。凄く気になるし。
「ちなみに、スズナってどういうジョブなんだ? というか、そもそも冒険者なのか? 」
「一応冒険者……にはなると思うで。女神様はウチのことを『あなたは勇者です』とか言うとったけど。この世界では、勇者も冒険者に分類されるらしいし、エリック達とおそろやな!」
あははは、とスズナが笑う。
……え?……勇者……? 今、スズナは勇者って言ったか? おいおい……まじかよ……
「――勇者ってめちゃくちゃすごいじゃないか! 誰しもが一度は憧れる存在だぞ! というか、冒険者登録したら一瞬で特S級ランクになるじゃねえか! あ、握手してくれ! それと今後ともご贔屓のほど宜しく――」
「ちょ、ちょっと待って! 本当はウチ、そんな態度を取られるほどすごくないんや! ちょっと話を聞いて!」
勇者にごますりをしようとした俺だったが、スズナの必死のお願いで一時停止をする。
「なんだよ急に。勇者ってこの世界ではめちゃくちゃすごいことで有名なんだぞ? 何がすごいんだ? って聞かれたら誰もよく分かっていないから答えられないんだが、『勇者』という響きだけでみんな目を輝かせるんだ」
「確かに先程のエリック様は、まるで子供のように目をキラキラさせていましたね……」
「……けれど、スズナが勇者と分かるなりごますりを始めるのはどうかと思いますわ……」
シエナは俺にお母さんみたいな目を、メリッサは呆れた目をよこすが……俺は咳払いをしてその視線から逃げる。
変なところで横槍を入れてくるなよ。恥ずかしいだろうが。
「コホン。……で、スズナは何を言いたいんだ? 勇者ならそんな謙遜しなくていいだろ? むしろ俺に『ド底辺の冒険者が私に近づくんじゃない!』とか罵倒を浴びせるべきじゃないのか?」
「いや、それを言うとかただのクズやん。その冒険者性格悪すぎるで。ウチはそんなこと一切思ってないから。というか、命の恩人のエリックにそんなひどいこと言うわけ無いやろ? ……ここいらで話が逸れてしまったし、元に戻すで。えー、ウチの話を聞いてがっかりせんで欲しいんやけど……」
スズナが言いよどむ。
がっかりすることなんて無いだろ。勇者だぞ? 力を出すのになにかとんでもないことをしないといけないとか、とんでもない代償を支払う羽目になるから普段は使えないとかだとしても、それでがっかりなんてしないさ。
俺は彼女の言葉に力強く首肯し、『大丈夫だ。だから、教えて欲しい』と言う。
それを聞いてスズナも決心したようで、大きく深呼吸をした後……
「ウチ……勇者なのにモンスターに一切攻撃が出来ひんらしいねん」
と、『?』となるようなことを言ってきた。
…………え?