ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
「俺達を乗せた馬車は、風の如き速さでアルメルドに向かって突き進む。『パカラッパカラッパカラッ……』。振動は心地よく、まるで赤子をあやすゆりかごのよう。馬車から発せられる音も鼓膜を気持ちよく震わせるもので、睡眠の導入にはもってこいだろう。そんな快適な移動をしながら、俺達は仲睦まじく感動のフィナーレを迎えるのであった」
「…………」
「ふむ。お気に召さなかったか。じゃあ、これはどうだ? 俺達を乗せて走る神速の馬車は――」
「――どれもこれも嘘やないかい!」
馬車に設置しているベルトにしがみつきながら、隣に座っていたスズナがツッコミを入れてくる。
「いや、嘘じゃないだろ。どれもこれも本当の話で――」
「エリックは目が節穴で耳は鼓膜か何かが破れているんですの!? この馬車、今にも壊れそうですわよ!? 補強をしたときに、適当な処置で済ませたからとんでもないことになったじゃないですの!?」
メリッサが涙を流しながら俺を糾弾してくる。
……思い込みでなんとかなると思ったんだが……無理だったか。
さて、そろそろ皆さんに本当の馬車の様子をお届けしよう。はい、どうぞ。
ギギギギバギギゴゴグググギギゴゴゴゴガガガガガガッ!
馬車は子供が無邪気に飛び跳ねるように上下左右に激しく揺れ、どこからともなく聞こえてくる音は断末魔。いやー、地獄ですな。
「あのときはなんとかなると思ったんだ! というか、今まではあの補強でなんとかなっていんたんだ!」
「具体的にはどれくらいもっていたんですの!?」
「二日だ!」
「それはもったって言わないですわぁあああ!」
馬車の音がうるさすぎて大声を出す羽目になる。
なんか、この馬車にずっと乗っていたら俺達の絆に亀裂が入りそう。あっ、馬車にも亀裂が入っているからお互い様だな、ハハッ!
「エリック様! このままだと本当に馬車が壊れてしまいます! 今すぐどこかに止めたいのですが!」
御者をしていたシエナが、俺達の方を振り返りながら意見具申をしてくる。
俺はささっと地図を広げて現在位置を確認し、馬車を止めても良いところかどうかを……あー……今俺達がいる場所は……ヤバいですね!
「馬車の速度を落としてなんとか持ちこたえさせてくれ! ここで止まって修理するのは不味い! 今、俺たちがいるのは強いモンスターが頻出する場所らしい!」
「わ、分かりました!」
シエナとこの馬車に魔術を掛けたメリッサが協力してスピードを落とし、なんとか安全なところまでは馬車がもつように奮闘する。
「エリック! この世界の馬車ってこんなにボロボロなんかいな!? というか、さっきまで走っていた速度って高速道路を走っている自動車並やで!」
激しく振動する馬車に振り落とされないようにしっかりとベルトにしがみついていると、スズナが何故かワクワクしたような顔をしながら話しかけてきた。
……いつ壊れるか分からないというスリルを楽しんでいるのかな? 大した物好きだな。
「いや! ちゃんとしている馬車だぞ! ただ、さっきも言ったが、この馬車は前に一度修理してな! そこでの処置がまずかったらしい! あとコウソクドウロとかジドウシャってなんだ!?」
「この馬車がおかしいだけかいな! でも、遊園地のアトラクションみたいで楽しいわ! えーっと、高速道路っていうのはバカみたいに広くて速度が出せる道や! で、自動車っていうのは、この世界の馬車みたいなもんやで! 馬はいらんくて、馬車本体のみで走っているみたいなイメージや!」
「……すげえじゃねえか!」
雑談に花が咲く。
いやー、『話している場合じゃねぇ!』って感じなんだけど、今は特にすることがないしな。それに、ドラゴンと会敵したときもそうだったが、緊迫する状況になったら喋って適度に緊張を解すのが良いと思うのだ。
そんな感じで、怒鳴り声のような大きさの声を出しながら、スズナとおしゃべりをして……この危機的状況を乗り越えた。
まあ、シエナとメリッサの頑張りのおかげだけどね!