ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
その後。なんやかんやでシエナも最終的には落ち着いてくれて、シエナとメリッサの心のケアは無事完了した。まあ、これだけで完全に彼女たちの不安を払拭できたわけじゃないだろうが……俺の言葉や態度を変に深読みすることはなくなるだろう。
あと、さっきの色々気を使っていた態度は『深い意味は無い』と釘を刺しておいた。今度は彼女たちも『そうだったのですね』と素直に受け取ってくれたよ。
で、少し遅れてしまったが俺達は三人一緒にスズナの待つ場所まで行く。
彼女は調理場から近い場所の地面にシーツのような物を広げて、その上に座って待っており……なぜか顔を赤くしていた。
……焚き火が近くにあるから熱くて顔を赤くしているのかな?
そんなことを思いながら『待たせたな』と言って、どかっと地面に座る。今回はシエナとメリッサはスズナの両隣に腰を降ろした。
珍しいが……不平等が無いようにとのことで気を使ったのかな? いや、なんの不平等かは分からないんだが。
料理が盛られた食器はなにかの葉っぱの上に置かれており、おしゃれな感じだ。
ナイフやフォークなども高級料理店みたいな置き方だし……スズナはしっかりしているなぁ……。
そんなこんなでようやく全員が揃ったということで、俺達は『いただきます!』と言ってから、ご飯を食べ始める。
もぐもぐもぐ……もぐもぐもぐ……
今日はスパイシーな肉料理がメインなのだが……うん! まあ美味い! 正直、良いお店で食べたご飯と比べると……そこまでなんだけど、野営して食べるご飯って、なんだか美味しく感じるんだよな。
心の中で感想を述べる俺だったが……シエナ達が無言でパクパクとご飯を食べていることに気がつく。いや、メリッサの鼻を啜る音が聞こえてくるから、無言なだけで無音ではないが。
……うーん、なんというか気まずい雰囲気が流れているような気がする。なんでだろう。
首をかしげながらも、思い当たる節が全く無い俺は無言でご飯を食べることしか出来ない。ここで気を利かせて面白い話の一つや二つ出来たらいいんだが……ネタがないんだよなぁ……。
……いや、無くても無理やり話すのが男なのではないか? ここでヘタれるのはよくないだろう。よし、頑張って何か話すぞ!
「あー、昔、野良パーティーで野営をしたことがあったんだけどな? そのー……野良ってことは大してお互いのことは知らないわけだ。だから……えー……っと…………」
「…………」
場が静まり返る。
……ふむ、なるほど……。
「すんませんでしたぁあああ! もう黙っておきますぅうううう!」
心が折れた俺は土下座をかました後、やけ食いとばかりにご飯をかきこむ。
くそっ! 自分でも何を言っているのか分からなくなる話をするくらいなら黙っていたほうがマシだったぞ! なにしてんだ俺!
心の中では大泣きしていた俺だったが……流石にいたたまれなくなったのか、彼女たちが各々声を掛けてきてくれる。
「お、面白い話でした! エリック様の話してくださることは全部面白いですから!」
「そ、そうですわよ! その……野良パーティで野営をしたところが面白かったですわ!」
「せ、せやな! ……あー、ゴメンな、エリック」
「もうやめてくれ! そっとしておいてくれ! ……てか俺が身を張って自爆したんだ! さっきから漂っている気まずい雰囲気をなんとかしろ!」
『俺の犠牲を無駄にするな』ということで、彼女たちにバトンをパスする。明らかに何かがあったっぽいのだ。特にスズナ。様子がおかしい。
彼女が原因で雰囲気がおかしくなっているのはシエナもメリッサも分かっていたようで、シエナが先にスズナに対して口を開いた。
「スズナ様。私個人としては、先程の行為にとやかく言うつもりはないのです。覗きというものはスリルがあって興奮することですから。私もそれは分かります。なので、気にしないでください」
「や、やっぱりバレてたんか……。いや、あれはわざとじゃなくてやな? いつまで経っても来おへんから何しとん? みたいな感じで見に行っただけなんや。それで……あの光景を見てしまってやな……」
「シエナさんの言う通り、気にしなくて良いんですのよ? わたくしの泣きじゃくっているところを見られたのは恥ずかしいですが……エリックが瀕死状態の時にも散々そういうところは見せてしまいましたし……気にしないでくださいまし」
「……ありがとうな。よっしゃ! それならもう辛気臭いウチは終わりや! 元に戻るで!」
どうやら、スズナは先程の俺達のやり取りを見てしまって顔を真っ赤にしていたらしい。
意外とスズナはそういうのに耐性がないのかもしれない。
まあ、俺としても別に見られて問題ない場面だったので特に何も言うことはないな。
てなわけで、無事スズナの様子が元に戻ったところで楽しいご飯タイムに――
「では、スズナ様。エリック様に抱きしめてもらってください。あなたもエリック様同盟の一人。不平等があってはなりません」
「そうですわね。こうバッとギュッと抱きしめてもらうのがいいですわ! スズナさんもエリックに心のメンテナンスをしてもらうといいですの!」
「え!? そ、そんなこと……ウチはええよ! 確かにエリックが呪いに掛けられたのはショックやったけど……ウチは大丈夫やって信じてるから! それに……こ、心の準備がまだ出来てないっちゅうか……」
「四の五の言わずに抱きしめてもらえば良いんですの! ほら、エリックもなんとか言ってくださいまし!」
メリッサが急に俺に振ってくる。
……いや、まあ……スズナは俺の奥さんではないが、どうやら想いを寄せてくれているらしいし……シエナの言うとおり不平等は良くないだろう。
あと、スズナの言動から見てメンタルがやられている様子はないが……異世界に一人で来て心寂しいのはあるかもしれない。それを緩和させてあげるのは俺の役目だろう。
「……スズナが良ければだが……どうだ……?」
腕を広げて飛び込んできてもいいぞ、とアピールする。
して、スズナは……
「じゃ、じゃあちょっとだけな? え、エリックは抱きしめんといて。両腕は上げといて」
「……わ、分かった」
言われたとおりに上げる。
……これ、傍から見たらおかしいやつみたいだよな。まあ、いいけどね。
しばらくして……スズナが『えいっ』と小声で言いながら俺の胸に抱きついてきた。
ぎゅっ……プニュんっ!
「ご。ゴメンな……。ウチ……今エリックに抱きしめられたら……止まらんくなるのが目に見えてるから……。だから……今回はこれで堪忍な?」
「お、おう……」
俺もこれ以上の密着は理性が暴走しかねないのでこれくらいでいいや。
……やっぱり……胸の破壊力はすげぇ……
その後。
シエナとメリッサの言葉、そして俺への抱きつきの甲斐もあってスズナが元の勢いを取り戻した。
というか、元よりも元気いっぱいになったような気がする。笑顔もこころなしか一割増しで眩しくなった気がするし。
まあ、みんな元に戻ってくれて良かったって感じですな!