ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
台所に着いた俺達は、早速料理を開始する――ことはなかった。
まずは何を作りたいのか決めないといけないからな。
「メリッサ。お前は何を作りたい? えーっと、今余っている食材は……野菜が沢山と、肉、これは牛こま切れ肉かな? あとは鳥の胸肉くらいだな」
俺は食料を備蓄している棚をちらりと見ながらメリッサに質問をする。
正直この食材だと『あれが作りたい。これが作りたい』みたいなことは出来なさそうだ。
メリッサはうーん、と考え込んでいたが……『そのこま切れ肉を使って適当に作りますわ!』と言ってきた。
なるほど。『適当に』か。まあ、俺が見ているから大丈夫だろう。
メリッサはこれで決まりだな。ではお次にソフィアに聞いてみよう。
「ソフィアは何が作りたい?」
「私はおつまみが欲しいです!」
「なるほど。じゃあソフィアはおつまみを作るんだな?」
「いえ、それは欲しいだけです」
「なるほどなるほど。じゃあソフィアは何が作りたいんだ?」
「私はおつまみが欲し――」
「よし! ソフィアはおつまみを作ろう!」
話がループしだしたので強制的にソフィアの料理は『おつまみ』に決定した。
今ある食材からそれを作るとなると……オイルと塩を使って野菜に味付けをしたおつまみとかが良いだろう。
して、メリッサとソフィアによる料理づくりが開始された。
◇
「ふんっ!」
ダンッ!
「ふんっ!」
ダンッ!
「ふんっ!」
ダンッ!
「おぉ。メリッサさん、気合入ってますねぇ。それはあれですか? 想いを乗せて食材を切っているんですか?」
「ええ。なんというか、こう気持ちを入れて包丁を上に振りかざし、力の限り食材に叩きつけるということをした方が美味しくなるんじゃないかと思いましたの」
「なるほどぉ」
「んっ!」
しこっ!
「あんっ!」
しこっ!
「ンンンっ!」
しこっ!
「ソフィアさんも気合いが入った声を出していますのね。きゅうりにオイルを塗りたくった後、塩をまぶしてシコシコですわね」
「こう喘ぎ声を入れたほうが気持ちが入るかなと思いまして。自分自身の気持ちも盛り上がりますし」
「そうなんですのね」
「ふんっ!」
「あんっ!」
ダンッ! しこっ!
「ふんっ!」
「あんっ!」
ダンッ! しこっ!
俺は一歩引いたところから彼女たちを見守っている。口出しはしない。彼女たちの気の赴くままに料理をさせ、楽しんでもらっているのだ。
「みんな、その調子だ。頑張れ」
「はいですわ!」
「うっす!」
今のところ問題は特に……ないことにしたので、俺は台所の端っこに位置しているかまどの様子を見に行く。
「……火が消えているな。まあ、これで点きっぱなしだったらそれはそれで不味いんだけど。……えっとマッチマッチ……」
魔術の使用を控えている俺は、いつもなら『ファイアー!』で一発着火のところをわざわざマッチを使って……火を着けた。
「……ミラさん、この呪いについて良く知ってそうだったから、あとから魔術を使うことによって呪いが進行するのかどうか聞いてみよう。流石に今のままだと不便すぎるし」
独り言を言いながらしっかりと着火を確認した俺は、メリッサとソフィアの元へと戻る。
「ふんっふんっふー!」
ダッダッダダッ!
「んっんっんー!」
しゅっしゅっしゅしゅっ!
二人共なにかのリズムに乗りながら手際よく? 野菜を切ったりきゅうりにオイルと塩を塗り込んでいた。
……ふむ。もうそろそろいいだろう。
「よし! 二人共そこらへんで終わりにしよう! 野菜はやりすぎて細切れになっているし、きゅうりはそんなに何度もシコシコするもんじゃないし。ということで、お次は火を使ってもらいます。ソフィアは……そうだな……あ、ちょうどチーズがあったからカリカリチーズを作ってそれをおつまみにしよう」
「分かりましたわ!」
「ラジャーです!」
◇
「よし。じゃあ、早速ソフィア。……はい、これチーズな。このチーズをいい感じにちぎるなりナイフを使って切るなりしてこの鉄板の上に落として下さい。分かったか?」
「うっす!」
大きくて黄色くて丸い、もうそれはそれは典型的なチーズをソフィアに渡し、彼女がちゃんと料理できるように見守る。
「じゃあ、行きますよぉー! ブチッ! からの〜ほれ!」
ソフィアは俺の予想通り、手でワイルドにちぎって……鉄板の上に投げ込んだ。
ジュワジュワジュワ……
チーズが溶けていい感じの音が聞こえてくる。
まあ、サイズ的にもいい感じだろう。一口でパクッといけて。
ジュワジュワジュワ……
「……おい、ソフィア。お前その一枚だけでいいのか? つまみが欲しいならどんどん投げ込んでけ」
「あっ! どんどんやっちゃっていいんですね! じゃあいきますよぉ〜! ブチッ! ポイッ! ブチッ! ポイッ! ブチッ! ポイッ!」
ソフィアは宣言通り、どんどんとちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していく。
ジュワジュワジュワジュワ……
「いい匂いがプンプンとしてきますわね……美味しそうですの」
「まあ、カリカリチーズは酒に合うからな。メリッサもあとからソフィアにおすそ分け貰ったらどうだ? ソフィア、良いよな?」
「もちろんですとも!」
「あ、じゃあ、少しいただけますわね。ありがとうですの」
ブチッ! ポイッ! ブチッ! ポイッ!
二十分後。
「おお。これは見事なカリカリチーズが出来たな。まあ、大きさが馬鹿みたいにあるが」
俺は大きな鉄板が隠れてしまうほど大きなカリカリチーズを目の前に感想を述べる。
こうなった原因はソフィアが際限なくちぎっては投げを繰り返したからだ。
「だ、だってエリックさんがどんどん投げろって言ったから、私はそれに従ったんですよ!」
「いや、普通お前みたいなことをしたらこうなるのは分かるだろうが。まあ、別にここまででかくなってもちぎればいいだけだから安心しろ。あと、味は良いはずだぞ? お前が手でちぎって投げ入れていたチーズ。それめちゃくちゃお高いやつだから。そうだな……金貨数枚くらいしたかな」
「んな!? チーズがそんなに高いとか頭おかしいですよ! てかエリックさん良かったんですか!? そんなお高いチーズをこんなカリカリチーズにしちゃって!」
「別にいいよ。そもそもお前が『おつまみ欲しいです!』とか言ってきた時用のために買っていたやつだし」
俺は何でもないことのように話す。
まあ、食材として見れば頭のおかしい金額だが……ソフィアにはいつも世話になっているしな。あと、どうせ自分も頂戴するものだから、たまにはめちゃくちゃ贅沢で良いものが食べてみたいという気持ちも購入時にはあったのだ。
「流石はS級冒険者のエリックさんですね! 今なら私、エリックさんに何されても良いって感じです!」
「おお、そうかそうか。なら、あとから楽しく一緒に酒を飲もうな」
「……なるほどぉ……期待していた答えとは違いましたが……まあ良いでしょう!」
ソフィアが嬉しそうな顔をする。
何に期待していたのかは考えず軽くスルーしておこう。触れないのが一番だからな。
して。ソフィアの料理が終わったところで、お次はソフィアの番となった。
「よーし! カリカリチーズをどけて……鉄板を空けたところでメリッサ! 準備は良いか?」
「だ、大丈夫ですわ!」
少し不安そうなメリッサが食材を持って鉄板の前に立つ。