ユニークスキルのせいでモテない俺は、酔っ払った勢いで奴隷を買いました。 作:☆あきつしま☆
聞き間違い……ではなさそうだな。
俺の予想とは違った答えだったので意味が分からないのだが……
しかし、ここで『あ、そう……』となる俺ではもうない。
こいつとは長い付き合いだ。色々とお互いの性格とか癖を知っているのだ。
ソフィアは、嘘を言うときは絶対に人の目を見ない。本当のことを言っているときには目を見る。実に分かりやすい癖だ。
俺はもう一度彼女に問う。
「本当に冗談なんだな?」
「……は、はぃ……」
彼女は聞き取れるか聞き取れないか分からないくらいの声で肯定する。
目は……明後日の方向を向いている。俺が彼女の視界に入ろうとしたら違う方向に目を動かして頑なに俺を見ようとしない。
……ふむふむ。これは嘘ですな。確実に嘘ですな。
つまり。こいつは本気で俺に『嫁にしてくれ』と言ってきていたということだ。
……まじかよ。お前正気か? ソフィアレベルの女性だったらもっといい男を旦那に出来るだろうに。てか、彼氏も次々と出来るレベルだぞ、正直言って。
でも、こいつの浮いた話は全く聞かないし……そもそも男とつるんでいるところを見たことがないぞ……。まさかとは思うが……いや、こいつに限ってそんなことはありえんな。酒飲んで俺の家に転がり込んで、全裸になるやつがそんな一途なことするわけがないだろ。しっかりしろ、俺。
ただ……口には出さなかったとはいえ、ソフィアは本気だった。それなら、俺も有言実行しなければならないだろう。
でも……口では『冗談です』って言っているんだよなぁ……。それに、めちゃくちゃこの状況を恥ずかしがっているし、『もうやめて!』という雰囲気を感じる。
……まあ……今回はここら辺にしておいてやるか。
俺は壁ドンと足ドンを解除して後ろを振り返り、こちらをガン見して料理を中断していたメリッサに声を掛ける。
「……よし! じゃあ料理に戻るか! メリッサ。お前手が止まってんぞ! この煙と匂いからして完全に焦げたな。もう一回作り直そう。ちょっと待っててな」
俺は何事も無かったように振る舞う。別に無かったことにするわけではない。ソフィアのためにこれ以上追求しない、という態度を見せたのだ。
料理が焦げていることに気づいたメリッサが『あ、あわわわわ!?』とか言って大慌てをしだしたので、『落ち着け』と言いながら後処理をして……もう一度一から、今度は一緒に作り直した。
二十分後。
ようやくいい感じに料理が完成したので、メリッサに居間へと出来た料理を運ぶようにお願いした。彼女は何かを察したようで『分かりましたわ』と言ってそそくさと台所から料理を盛り付けたお皿を持っていってくれた。
して、台所には俺と、壁ドンと足ドン以降ずっと黙りこくっているソフィアの二人となった。
彼女はチラチラと俺のことを見てきて、何かを言いたそうな顔をしていたのだが……結局は声を掛けてこず今に至る。
……仕方ない。俺がいい感じで声を掛けていつもどおりのソフィアに戻ってもらうか。
俺はずっと背後にいたソフィアに向き直り、話しかける。
「料理を手伝ってくれてありがとうな。メリッサも喜んでいたよ。これで多少自信はついたんじゃないかな。まあ……腕はまだアレだけど」
「…………そ、そうですか……」
話が途切れる。
……ふむ。なるほど、こういう感じか。もっと俺が積極的に話す必要がありそうだな。
「パーティーが始まって結構時間経っちゃったし、俺たちも戻ろう。あと、高級カリカリチーズをおつまみに一緒に酒を飲まないか? かなりグビグビイケると思うぞ?」
「……そうですね……」
「ミラさんにも後からおつまみ作ってもらうか? 機嫌がよかったら作ってくれると思うぞ」
「……そうですね……」
「あー……どこか体調でも悪いのか? 元気ないぞ?」
「……そうですね……」
……いや、『そうですね』しか言わねえじゃねえかこのソフィア。目も全然合わせてくんないし。話がぜんぜん広がらないから元の彼女に戻って貰う前に話のネタが尽きちまったぞ。どうしよう。
……まあ、酒を飲ませたら元に戻るか。それが一番だな。
考えることを止めた俺は、ソフィアに『じゃあ先に行ってるから。酒飲んで待ってる』と言い残し、ダイニングから立ち去――
「エリックさん……」
ソフィアが今にも消えそうな声で俺の名前を呼んできた。
俺は後ろを振り返り、出来るだけ優しい顔をする。なんというか、よく分からんがこういう顔をしていたら安心できるだろうと思ってのことである。
「なんだ?」
「……え、えっと……その……わ、私……あの……」
何かを言おうとしていたのだが、結局何も言えずにまた黙り込んでしまう。
ふむ。まあ大方予想はつく。さっきの『本気かどうか』の受け答え関係だろう。それくらいは俺にだって分かる。
ソフィアは何かを訴えかけるような目を俺によこしてくる。
……ほうほう。なるほどね。分からんが分かる。
「まあなんだ。素直になれないことってあるよな」
「…………私は……もう……駄目なんでしょうか……?」
これまた消え入りそうな声で、しかも今度は目に涙を溜めて謎の質問を投げかけてくる。
いつもの俺なら『何いってんだお前? もうちょっと具体的に言ってくれ』というところだが……今日の俺は一味違う。
ソフィアのあの言葉だけで何が言いたいのかピンと来た。まじで今日は冴えてる。てか、これはあれかな? 以心伝心ってやつかな? こいつとは付き合いも長いし。
まあ、言いたいことが分かったのなら、これに関しては俺が手を差し伸べて上げるべきことだろう。
俺は彼女の目をじっと見て口を開く。
「今から言うことをしっかりと覚えておくんだぞ? 未来の俺が忘れている可能性があるからな。忘れてたら、『忘れてんぞこのボケェ!』って言ってくれ。いいな?」
「……わ、分かりました……」
「よし。じゃあ言うぞ? ン゛ン゛! ……ドラゴンを倒して呪いが解けるまでは待っててくれ。それが終わったらお前の望み通りにしてやる」
……これは決まったな。俺は確信する。
スズナいわく、ちょっと強引な、もしくは上から目線な男性のほうが女性はときめくらしいのだ。
『お前の望み通りにしてやる』とか、もうそれはそれは強引かつ上から目線な言葉だろう。
これには流石のソフィアも胸をときめかせて満面の笑みを浮かべながら俺に抱きついてくるに違いない。
まあ、シエナもメリッサもハーレムには文句ないみたいですし? 本音ではソフィアが望んでくれるなら喜んで受け入れるつもりだったし? むしろカモンって感じだったし? いつ好きになったのかは分からないが、結構前から好きにはなっていたし? てか、何人女性がいても同じくらい皆を愛せる自信が最近出てきたし? あと数人程度なら金銭的にも養えると思ったし?
まあ、そういうことだから、そういうことなのだ。
さて。俺はソフィアが抱きついてしゅきしゅき攻撃をしてきた後のことを考え――
「エリックさん。ちょっと意味が分からなかったのでもう少し具体的に言ってもらえますか?」
さっきまでのか弱い雰囲気と涙目はどこへやら。ソフィアはいつもどおりの顔になりながら、首を傾げてまさかの言い直しを要求してきた。
……ほう、なるほどなるほど。そう来ましたか。
「いや、だから……今は無理だけど、ドラゴン退治が終わったらお前が望むようにだな……」
「その『望むように』とは具体的にはどういうことなんですか?」
「……え、えっと……お、お前がいつも言っていることをしてやるってことだよ」
「私、いつも何を言っていましたっけ? エリックさん、教えてくれませんか?」
「…………そ、それは……その……お、俺にめ、娶ってほしいって……俺の奥さんになりたいって……」
「なるほど。そういうことを言っていたのですね。じゃあ、エリックさん。もう一度最初から、具体的に、私に何をしてくれるのか、ということを――」
「――おいお前! 俺が安心させようと優しくしていることをいいことに何でもかんでも言わせようとすんな! あと、俺の言っていることを理解しろよ! てか理解してんだろうが!」
徐々にニヤニヤ顔を見せ始めながら責めてくるソフィアに耐えきれなくなった俺は、大きな声を出して話を遮る。
ったく、人の良心を逆手に取ってなんでもかんでもするのはマナー違反だぞ。俺がなんとか勇気を振り絞って言ったのに……こいつは……!
怒りのボルテージをあげる俺だったが……ソフィアの嬉しそうな笑い声と笑顔を見て、なんだかどうでも良くなる。
(……まあ……元のうざいソフィアに戻ってくれたようだし、俺の『相応の態度を示す』という約束も出来たし……今回はこれでいいか)