催眠モノと言うには微妙な能力でがんばってみる 作:アウグスティンティン
無限に時間がかかりそうだったので短いけれど投稿しておきます
16話
「それでこの子が電話で話したリクくん……なのだけど」
そう言って困り顔をするコーデリアの隣には、今にも泣き出しそうな男の子がいた。
小学校低学年くらいかな。コーデリアから聞いた話によると、どうも兄とはぐれてしまったらしいのだが。
他ならぬコーデリアの頼みだ、人探しくらいいくらでも手伝うつもりはあるものの、状況がほとんどわかっていない。
俺はしゃがみこんでリクと目線を合わせ、柔和な笑みを作って問いかける。
「ええとリクくんだっけ?」
「────」
「お兄ちゃんとはぐれたって聞いたんだけど、どこでいなくなったとかわかるかな」
「…………」
「お兄ちゃんの服装ってどんなのだった?」
「────」
ヤバい、あったばっかの頃のエリーよりも会話にならない。
「ずっとこんな感じで……どうしましょう?」
「どうって」
丸投げするなよ。
とはいえ俺も読心能力者の端くれ。子供の情緒は不安定で分かりづらいが、どうもただ怖がっているわけではないようだ。
なにかを後悔していて、それがあるから人には話しづらい、といったところだろう。
なにをやったのかは知らないが迷子というのはコーデリアが聞き出している。なら件の兄だって困っているだろうし、年が近いならそっちもこうやって泣きそうになっているかもだ。
少々この子にはかわいそうであるが、さっさと話を進めてしまおう。
「はぐれたのはあの屋敷だろうし探しに行こうか」
「え! なんで!?」
「お、やっと話してくれたね。そのついでにお兄ちゃんの特徴も教えてくれると探しやすいんだけど」
「…………」
「別にいいけどさ。それで、なんで、だったね。ほら君、チラチラとあっちを見てたでしょう。だからだよ。ま、これでも一応は探偵見習いだからさ、安心して待ってな」
「う……」
目的地もわかったことだし、さっそく捜索しようと立ち上がる。するとリクに服の裾を掴まれた。
どうしたんだろう、と思ってリクを見ると両目いっぱいに涙を貯めていた。
「うわぁぁぁぁぁん!!」
あー、とうとう泣いたか。
■◆■
「こ、これがウワサのおばけ屋敷……!?」
と、顔を引きつらせながらシャロが怯える。
リクをそのままにして置いておくこともできず、学院へ預けに行くついでにミルキィホームズの面々を連れてきたのだった。
「怖いんならついてこなくていいって言ったのに」
「いいい、いえ! 大丈夫です! 怖くない、怖くないんだから!」
「無理しなくていいのに」
「うぅぅ……」
「エリーさん……がんばりましょうね」
「う、うん……」
震えているエリーとシャロ、なるほどこれがいとあはれの境地か。
抱きしめたくなるくらいあはれだ。
運良くバサッと飛び立ったカラスに悲鳴をあげる二人に目を細める。
「はたしてこの二人は役に立つのだろうか」
めちゃくちゃ辛辣なネロであった。
ともあれ人探しである。幸いリクからは学院への道中にある程度詳しい話を聞くことができた。
それによると肝試しだかなんだかで、目の前にあるこのオンボロ屋敷に遊びに行ったらしい。
シャロの言っていたおばけ屋敷の噂もそれ関係の話題だ。なんでも黒髪で黄色い目をしたおばけが出るのだと言う。ちなみに情報源はネロである。
さて、そうしてやってきたリクだったが、怖くて一人で逃げ出してしまい、戻ろうとしたもののその直後に屋敷から悲鳴が聞こえたんだとか。
リクという名前はまったく覚えていなかったが、確かゲームにもこんな感じのエピソードがあったはずだ。
屋敷の二階の窓を、すべてベニヤ板で塞ぎ、光を遮っていることからも、これは怪盗帝国スリーカードの三人目、中華系サムライ・ストーンリバーのエピソードだろう。
「とりあえず入ろうか」
と、俺は促す。
「そうだね。それじゃチョコっと開けちゃいますか」
ネロが金属のヘラを取り出して電子錠に近づく。
「開いてんじゃないの?」
「あれ、ほんとだ。無用心だなぁ」
「そうかな。俺としてはこんな廃墟の電子錠が電源入ってるだけでも違和感なんだけど」
「ふ〜ん……ちょっと気をつけないとかもね」
ヘラを弄びながらネロがつぶやく。ふざけた様子はかき消え、鋭い目で扉を見つめていた。
前の世界基準での怪盗事件ではない普通の事件を解決する探偵のような真剣な表情である。
オンオフの切り替えをトイズで行う俺を除けば、こういった切り替えが最も速いのはネロだ。普段はああもおちゃらけているというのに、こうして危険に直面すると素晴らしく頼りになる。
「で、コーデリア。入ってもいい?」
「えぇ……ってなんでそんなこと聞くのよ」
「だっていつものコーデリアだったら『ダメよ! 危険が潜んでるかもしれないわ! だいたい不法侵入じゃないのよ!』とか言いそうなのに」
いきなりオフになるな。
「仕方がないでしょう。リクくんのお兄さんを探すにはこの家に入るしかないわ。なにかがあってからじゃ遅いのよ」
「そうだな、じゃあ」
さっそく。と言おうとしたところでコーデリアが続けた。
「それに、ウワサになってる幽霊の容姿にも気になるところがあるし」
幽霊の容姿? なんの話だ。ストーンリバーと知り合いだったりするのか。コーデリアの内心は、どういう感情なんだ、これは。
わからないがあまりいい精神状態とは言えないだろう。
ホラーが苦手だとか暗いのが怖いとか、そういう理由でもなさそうだ。エリーやシャロがそっち方面でヤバげだけど、コーデリアの感情はそれとは異なる。
勘になるが怖がりな二人よりも危険な状態に見える。注意しておいたほうがよさそうだ。
平然を装うコーデリアを後目に、取手を握り、立て付けの悪い扉を引く。ギギギ、ときしむ。
「怖くない、怖くない!」
「怖くない……怖くない……」
俺の勘は間違っているかもしれない。
「ふたりとも無理することはないんだよ。外で待ってるかい?」
見かねたオペラがエリーとシャロに声をかける。
「い、いえっ! 無理なんかしてません! ですよね、エリーさん!」
「え……!?」
絶対同意していない驚愕の声を上げるエリー。
正直なところ、このままビクビクする彼女を見ていたい気持ちはあるが、本当に駄目なタイプの人だろうし、助け舟を出すことにする。
「待ってるだけってのがアレなら学院に戻ってリクくんの相手する、っていう仕事があるけどどう?」
「あ……うぅ、ぇぇと……が、がんばり……ます」
「そう、じゃあほら」
エリーに手を差し伸べる。地獄で蜘蛛の糸でも見たようなすがる目をして、エリーはひしっと腕にしがみついた。
薄くても女の子、薄くてもおっぱい。むにむにと柔らかいものが肘のあたりに押し付けられる。
今はいっぱいいっぱいでそんな余裕ないだろうから、あとでからかうことにしよう。
「あ、あたしも手……握ってもらっていいですか?」
「いいよ、はい」
そこまでダメなら帰ればいいのに。
とはいえ探偵であることにこだわっているシャロだ、言っても無駄だろう。
震えるシャロの手を取る。うわぁ、手ちっちゃ。肌もちもち。子供かな?
両手の花はさておき、事件へ目を向けなければ。
入ってすぐ、廊下が三方向に分岐していた。珍しい構造だな、と記憶を辿り、屋敷は田の字のような構造をしていたことを思い出す。
中は薄暗く、埃っぽい。そのうち清掃員になるストーンリバーが潜んでいるとは思えない有様だ。廃墟としては正しいんだろうけども。
カビの臭いに顔をしかめながら耳を澄ませてみる。耳鳴りがしそうなほどに静かで、人がいる気配は感じない。
「ねぇ小林」
「なんだい?」
「ここけっこう広いし、とりあえず一階を手分けして回ってみようよ」
「えぇぇ〜〜!!」
ネロの提案にシャロが大声で抗議する。
「いやネロ。そこまでわかれないほうがいいと思う。三手……にわかれるのが一番いいんだろうけど」
左右で密着するエリーとシャロに目を向けると、そろって勢いよく首を横に振った。
「二手でいこうか」
「そうしましょうそうしましょう! それがいいです!」
「うん……うん……っ!」
引っ剥がすのもあれなので、そう提案する。そもそも引っ付くことを許可したのは俺だしな。
するとじとーっとネロがこっちを見てくる。
「そっちそれで大丈夫なの?」
「心配はいらない。ビビっててもエリーは最強だ」
「えぇっ!?」
「まあそれもそっか。じゃあ僕たちは右で」
「ならこっちは左だな。っとネロ、ちょっと」
「ん? なになに」
声を潜めて、頼みがある、というと察したネロが耳を近づけてくれる。
「コーデリアのこと気にかけててくれないか。すこし雰囲気が危うくってね。また暴走するかも」
「えぇ〜、めんどくさいなぁ。自分でやりなよ。そこ代わるからさ」
「それはポリシーに反するから」
「なんのポリシーだよ、それ」
困ってて助けを求めてる人よりも、困ってるけど助けを求めてない人を優先しないことかな。
「はぁ〜あ。わかった、ちょっと見とくよ。その代わり貸し一つだからね。後で請求するから覚悟しといてよ」
もちろんだ、と頷く。ひとまずはこれでいいか。
ネロならうまくやってくれるだろう。と信頼しているのだ。
俺は彼女らが右に進むのを見送って、左から屋敷の探索を開始した。
没になった主人公の初期案
名前が工藤新ニで、トイズが脚力強化
メアリーだかケイトだかと被ったので没に
怪我でも病気でも治せるトイズで、原作知識はアニメだけ
ちょっとこいつのいる世界観のコーデリアを描写したくなくて没に
警察と怪盗ポジにも追加してオリキャラ三人
しんどいから没に
思いつきでエロにした今の光が一番扱いやすい謎