催眠モノと言うには微妙な能力でがんばってみる 作:アウグスティンティン
ミルキィホームズのアニメがYou Tubeで見られるだってー!
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この前知りました。どうもミルキィホームズ知らないけれど読んでくださっている方もいるようなのでぜひぜひ。無料ですし。
検索すれば普通にでると思います。
本作やゲームしか知らない方も、きっと困惑できると思います。
黄ばんだ壁を眺めると、あちこちに御札が貼られていた。
向きもバラバラ、配置もまばらなそれらは、まるで危険な呪いを封じるためのものに見える。
これ誰だっけ。G4のほうの誰かが見つけていたと思うんだけど。そこまで記憶にない。記憶にないってことは大した意味はなかったんだろう。
だが見ていてあまり気持ちのいいものではない。
ここまでの通路にはずっとあったし、先にも同じようにある。あまりにも数が多いものだから、ずっと視界に入ってくる。
めっちゃ気が散るなぁ、この御札。
「うぅ〜」
「はぅ〜」
……これ以上怯えられると、本当に探索にならなさそうだから、二人には気づかせないようにしようか。
今の状態でも十分すぎるほど楽しめている。
俺は善良な探偵なのであまりいじめすぎるのはやめておこう。
くすぶる嗜虐心は一旦置いておき、部屋があったのでその前で止まる。エリーがビクンと震えて、躓いた。
見ると彼女が強く目を瞑っていることに気づく。せめて目は開けていろと言いたい。
が、まあ困りはしないので、よしとしよう。それに委ねられるのも悪い気はしない。
「あーシャロ。ちょっといい?」
「は、はい! なんでしょうか」
「両手塞がってるから扉開けてくれない」
と、頼んだ。これは決していじめているわけではない。俺は右手をシャロに握られて、左腕にはエリーがいる。
そのエリーはコアラみたいに全身でしがみついているし、実際手が空いているのはシャロだけなのだ。
促すと彼女は顔を青くしておっかなびっくりドアノブに手を伸ばす。
そうして触れる直前でしばらく止まって、俺から離れ、エリーのほうへと逃れる。状況がつかめていないエリーが可愛く悲鳴をあげた。
「ひゃっ……!」
「ひ、光さん! お願いします!」
「はいはい」
扉を開けて中を覗く。部屋は長方形、俺の感覚が正しいのであれば歪んではいないように思える。
ゲームにおけるギミックを考えれば、ここに大したものはないだろう。QTEでポイント微増とかその程度だ。
「光さん……中になにかいますか?」
シャロが聞いてくる。
「いや。お兄ちゃんもお化けもいないな」
あるのはせいぜい家具くらいなもの。
なぜかその中に壊れているのではなく、作りかけのものがあることは変わった点と呼べるだろう。
一通り人間が入れそうな家具を開いてみてから、俺たちは次の部屋へと向かった。
■◆■
あらかた一階を調べ終え、俺たちは入口前に戻った。
どうやらコーデリアらのほうが先に戻ってきていたらしい。
「みんな!」
「あ、コーデリアさん! どうでした?」
「どの部屋も誰もいないわ。そっちも?」
「はい。ですよね、光さん」
「そうだな」
見てなかったもんな、お前ら。
一列に手繋いで並んでいる俺たちを見て察したのか、コーデリアが苦笑する。
「一階は異常なしか」
と、オペラが言った。となるともちろん、ここからは二階の捜索になるわけだが。
「あ、あの……二階といいますと……」
「外から見たとき……窓が塞がれてて……」
ここまででもわりとギリギリだったシャロとエリーが、この先に待ち構えている状況に気づく。
「そ、多分真っ暗だろうね」
『光さん!』
「はいはい。好きにしな。じゃあ行こうか」
「待って光」
歩きだそうとしたところで、コーデリアに呼び止められる。
振り返るといつになく緊迫した雰囲気を漂わせていた。
「私のトイズなら真っ暗でも見通せるわ。だからここは私に任せてちょうだい」
「? なにをそんなに焦ってるんだ、コーデリア」
「っ、焦ってなんか」
「……確かに少し違うかもだが、冷静じゃないのは事実だろ。どうしたんだ?」
コーデリアは拳を握って唇を噛む。
目を伏せて、数回深呼吸を繰り返す。そうして再び目が合った時にはいつものコーデリアになっていた。
少なくとも表面上は。
「ごめんなさい。ちょっと……ね。もう大丈夫よ」
「そう。ならまあ、いいんだけど」
「それでもやっぱり私が先頭に立つべきよ。状況を把握できるのは私だけでしょう」
「……そうだな。頼めるか」
それでコーデリアの気が済むんならやらせてもいいか。
彼女を先頭に据え、二階に上がる。案の定真っ暗であり、階段のすぐそばでさえなにも見えない。
「どうだいコーデリア、なにかあったかい?」
オペラが聞いた。さすがのハイパーセンシティブはこんなところでも問題なく視界を確保できるらしく、コーデリアは答えを返す。
「いえ、廊下にはなにも」
「とにかく灯りを、スイッチを探してくれないか」
「はい、いま入れます」
オペラの指示が飛ぶ。するとコーデリアが動く音がして、カチッと鳴った。俺には見えないがスイッチを押したようである。
しかし二階は真っ暗なままなにも変わらない。
「ダメです、つきません」
やはり二階には電気が来ていないらしい。
さてはて、どうしたものか。
現状、事件は俺の知識と変わりなく進んでいる。トゥエンティの時のように俺の知らない出来事は起きていない。コーデリアを除けば。
そもそもコーデリアはなんでこうなっているんだ。なににそんな心を揺さぶられているんだ。
ゲームとなにが違うんだ。事件の前提条件はなにも変わっちゃいない。なら俺のせいか。俺に向けられた感情ではないが、俺のせいで変わったなにかが原因?
わからない。わからないけれど、この事件がきっかけであることに違いはない。ならばさっさと事件を解決することがコーデリアにとってもいいことなのではないだろうか。
「とりあえず、みんなPDAを開くんだ。ディスプレイの灯りでも無いよりマシだろう」
「あ、待ってください。今私の視覚は敏感になっています。PDAの灯りでも目に入ったら」
「そうか、まぶしすぎるのか」
オペラの提案をコーデリアが却下する。
加減が効かないわけでないのは、日中に使っていることからも明らかだが、その時の出力ではこの暗闇を見通せないんだろう。
「コーデリア。トイズを切ってくれるか」
と、俺が言った。
「PDAの灯りくらいなら私のハイパーセンシティブのほうが遠くまで見えるわ」
「もうちょいマシな灯りがあるんだ。ごめん、エリー。左手離して」
「えっ! そ、そんな……どうして」
「いや灯りつけるから」
コーデリアがトイズを止めたのを確認し、ライトをつける。
「お〜、ライト付きの腕時計?」
「俺の探偵七つ道具の一つだ」
そうネロに返す。するとオペラが訊ねてきた。
「キャンプ用品かい?」
「ええ、そうです」
「なにが探偵七つ道具だよ」
呆れるネロの声は無視しよう。
ライトでぐるりと辺りを照らしてみる。コーデリアの言うとおり廊下に奇妙なものはなかった。
扉がいくつか見えるから、端から回ろうか。
「なんでこれさっき使ってくれなかったんですか!」
「ひどいです……またいじわるですか……!」
「またって言うな、またって。二階で電池切れのほうが困るだろ」
二人の文句は封殺して歩き出した。
■◆■
「おっと大部屋」
道中いくつかあった小部屋には、これといって見るものはなかった。なので手分けしなかったにしてはサクサクと進むことができていた。
人数が多いからか、エリーとシャロの恐怖心が薄まっていることも要因の一つだろう。
そうして奥までやってきたのだが、観音開きの扉があったのだ。
屋敷の間取りからしてもかなりのスペースがあるだろう。
となるとここが例の部屋かな、と思いつつ扉を開けた。
『ひゃあああぁぁ!!』
「なに……これ……?」
「マネキン……?」
そう、マネキンだ。それも大部屋いっぱいのマネキンである。
「硬い。やっぱり人形だ」
コツンとマネキンを叩いて確認してきたネロが言った。オペラもそれに続いてマネキンに触る。
「本当だ。これは、人形」
「よくできてるなぁ〜」
と、感心するネロ。相変わらず肝の座った奴だ。この絵面でこんな台詞が出てくるあたり、本当に大したものである。
オペラだって引き気味だというのに。
「き……気味が悪いです……!」
「ででで! 出ましょう! すぐ!!」
真実を知っている俺だって不気味に感じているんだ。
エリーとシャロに至っては言うまでもない。とうとう本当に限界といった様子ですがりついてくる。
さすがにこのまま探索を強行するわけにもいかず、オペラが灯りを取りに戻ろうと提案した。
俺は一度、右から左へと大部屋の中をライトで照らし、動くもののないことを簡単に確認してから部屋を出た。
廊下の先に灯りをやる。ちらっと暗闇の中に、黒髪の女が照らし出された。
「うおっ、びっくりし──」
「っ」
「コーデリア?」
突然走るコーデリア。
なんだ、どうしたんだ。
全速で角に消えていった黒髪の方へと駆け寄る彼女から感じるのは、膨れ上がった例の感情だ。
俺の知らない感情は読み取っても意味がないなんて、まさかこんな弱点があるとは思わなかった。
それもわりと真っ当に真っ直ぐなコーデリアに突きつけられるとは。ああ、もどかしい。もっとはっきりと心が読めればこんなこと悩む必要はないのに。
なにを考えているんだろう。
アニメ版のように暗闇が怖いって、そんなわけはないだろうし。いや、もしかしてありえるのか? 恐怖症は感じ方が違うとかあったりして。
エリーもやたらスケベだし、暗いのが苦手な可能性、十分ある。作り物のお化け屋敷はわりと平気そうではあったから、天然物だけ駄目だとか。
「きゃっ」
ともあれG4の登場だ。
予告状もないのにかち合わせる辺りに運命を感じるね。
昔の私、めっさ頑張ってるな。
五千〜六千字を二話でストーリーやってたとか……