※この作品はR-18です。

催眠モノと言うには微妙な能力でがんばってみる   作:アウグスティンティン

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19話

 あ〜、まだ顔が熱い。

 パタパタと手で扇いでみるがぜんぜんマシにならない。これは長続きしそうだ。

 まさか今更俺がこんなことになるなんて。もっとすごい姿も、言葉も見たことがあるはずなのに。どうしてこうも揺さぶられるのか。

 

 相変わらずチョロすぎるなぁ俺。

 ニヤけ続けている自分の頬をパチンと張る。さあて、真面目にやろうか。

 他二人と違ってこの事件は、普通に民間人にも被害が出ているからな。ラットでさえ避難させてから爆破していたというのに。

 や、最後はとんでもないことやろうとしてたけども、未遂に終わったんだからノーカンだろう。

 

 トゥエンティの時と違って、今回は事件自体に予想外の出来事は起きていない。

 コーデリアの不調だけは確かに知らない事ではあったものの、理由を聞いてみれば納得できる部分もある。

 恐らくは直前まで墓参りに行っていたことが要因だろう。

 昔から定期的にマリアの墓参りに通っていたコーデリアだが、俺がいたからか、ゲームの時とタイミングがズレてちょうど重なってしまったのだろう。

 なんて間の悪い。

 だが障害ではない。

 神津が異変に気づいて戻ってくる、みたいな事件の根底がひっくり返るような変化ではないのだ。

 

 手近にあったマネキンを複数、ざっと眺める。

 うん。問題はない。

 これは知識通りにストーンリバーが起こした事件であるし、謎の答えもまた同じだ。

 さて。引っかかるところはいくらかあるが、強いて取り上げるならどれになるだろうか。

 

「大丈夫かい?」

 

 自分的重要なファクターを模索していると、巡回のオペラが話しかけてきた。

 

「もしかして見られてた?」

「聞こえてた、かな。コーデリアが大きな声を出していたから。ネロはいつものことって言ってたけれど気になってね」

「ネ〜ロ〜!」

 

 いつもってほど俺たち喧嘩してるかな。

 まさか俺が言われる側に回る日が来るとは。

 

「はぁ。……ほら今日のコーデリア、ちょっとおかしかったじゃん。だから理由を聞いてたんだ」

「そうか……確かに今日の彼女は少し変だったね。それでコーデリアの悩みは解決されたのかい」

「たぶん?」

「たぶんって。おいおい」

「あはは。なかなか完璧に飲み込むのは難しそうなことだったから」

 

 俺とのやり取りの中で、マリアがこの幽霊騒ぎに関わっているかも、という疑念は消えたようだけれど、そもそもの問題である家族を失った傷はそのままだ。

 悩みが解決されたとは言い難いし、解決されることはないのかもしれないな。

 ……アニメ……いや、あれは置いとくか。うん。

 好きだったけど、シリアスやってる時に思い出す内容じゃない。

 

「まあコーデリアなら大丈夫でしょ」

「信頼してるんだね」

「なんだかんだ長い付き合いなんで」

「そういえば君たち二人はクラスメイトなんだったっけ?」

「そうそう、一年の頃から同じクラスだったんだ。一緒にクラス委員やったりして、ってこれは長くなるからやめとこう。じゃあ調査に戻りますかね」

「興味のある話だったけど、また今度にしようか。それで光さんはこの辺りになにか気になるものでも?」

 

 と、オペラが聞いてきた。

 おしゃべりは一旦終わりだ。真面目にやろうとマネキンを見つめる。

 ふむ。気になるところというと、もう見た目からのっぺら坊じゃないところがすでに違和感なのだが。服屋のアレとあまりに違いすぎる。

 でもそうだな。

 

「これポケット」

 

 膨らんでいたマネキンの腰ポケットを漁る

 取り出してみればPDAだった。電源ボタンを押してみると、どうやらスリープじゃなくてシャットダウンされていたらしい。

 しかし画面はついたものの、パスワードが設定されていて中を見ることは叶わなかった。

 

「ちょい前のPDAかな。パスがどこかに書いてたりは……さすがにないか」

「おかしいとは思わないかい?」

「パスを忘れないよう、付箋に書いて貼っつけてないことが?」

「いや、そうじゃなくてね。電源が入ったことだよ。君がマネキンの製作者だったとして、キャラ付けのためだけに本物のPDAを持たせたりするかい?」

「おまけに充電も、か。一応他の何体かも調べてみようか」

 

 見つけたPDAをマネキンに返し、他のマネキンの懐も漁ってみる。

 はたして。

 

「まあまあいたね」

「そう。これは重要なファクターだ」

 

 重要なファクターいただきました。

 ようし、仕事終わり。今日もいい仕事したわ。

 巡回に戻るオペラを見送り、見た目だけ取り繕ってぼんやりするとしよう。

 

 マネキン時の記憶ってあるのかな。

 ないならイタズラしてみたいな。

 

 ■◆■

 

 結局セクハラはやらずに時間は過ぎていき、オペラによって俺たちは一階に集められた。

 それから同様に呼ばれたG4たちもやってきて、ココロちゃんが怒鳴った。

 

「ちょっと! 集まれってどういうつもり!?」

「ひょっとして『謎はすべて解けた〜』とかってやつ?」

 

 のんびりとした口調で咲が訊ねる。

 そしてオペラが自らの推理を語り始めた。

 

 シャロが見つけたのは半分しか中身のないミネラルウォーターのビン。

 ネロが見つけたのは下着だ。マネキンがブラウスの下に身に着けていた。

 エリーが見つけたのは靴底のすり減ったハイヒールを履いたマネキン。

 コーデリアが見つけたのはクリアスタッド。ピアスホールを開けた時に使う仮ピアスだ。

 

 俺の見つけた本物のPDAを含め、どれもマネキンが持っているにしては不自然。

 つまるところあれらは本物の人間であり、こんな異常事態が発生している以上、今回のこれは怪盗事件である。

 

 と、まとめればこんな主張だった。

 

 それでは、怪盗がここでなにを目的に拉致監禁なんてやっているのか。

 噂にある屋敷に隠されたモノとはなにか。

 オペラは続ける。

 

 最初に一階を調べる際、オペラは右に進んだわけだが、そこで偽物の柱を見つけていたのだと。

 田の字に配置された部屋の形状が、正方形ではないことを指摘し、隠し部屋の存在を暴く。

 

「いやぁぁぁぁ!!」

 

 途端、裂帛の気合をあげ平乃が壁を粉砕した。

 え? なに?! 

 

「お見事。ありがとう平乃クン」

「押忍!!」

 

 なんで俺より冷静なんだこの名探偵は。

 しかし古い建物の、偽物の壁とはいえ正拳突き一発で粉々にするとは。

 試しに破片を蹴ってみると、それなりにある重量が伝わってきた。ほんとにパワータイプだったんだな、平乃って。

 絶対怒らせないようにしよ。

 ゆるく決心し、渋るエリーとシャロを押して階段を降った。

 

 地下は迷路になっていた。

 カビの臭いが充満し、コーデリアのトイズでも探れない有様だったが、オペラの類稀な探偵力による超知的総当たり法、もとい右手法によって突破することに成功する。

 

「う〜む……なにやら禍々しいモノを感じるぞえ」

「ええ〜!!」

「やだ……!」

 

 はたして隠されていたのは一振りの刀であった。

 

「ネロ。やめなさい」

「は〜い」

 

 コーデリアがネロを叱る。その裏でオペラと神津が刀の処遇を話し合っていた。

 厳重に秘匿されていた代物なので、慎重に扱ったほうがいい、という主張を受け、確保に向かっていた神津が下がる。

 そんなところへ、どこからともなく笑い声が響いた。

 

「え! え!? 今のって!?」

「よくぞ宝を見つけてくれた。やはり『見つけ出す』のは探偵の仕事だな。例を言おう……小林オペラ」

 

 ふっ、といつの間にか刀の側に中華服の男が立っていた。

 

「おまえは」

「ストーンリバー。怪盗帝国の首領……アルセーヌ様に支える者」

 

 アニメの印象とは異なり、かなり落ち着いた口調である。

 

「どこに隠れてたのよ!」

 

 ココロちゃんが問い詰めた。

 

「どこにでも……闇は我が支配下……すべてを静寂に包む褥」

 

 …………? 

 ……あー、ゲームのストーンリバーってこんなんだったっけ。背筋がゾワッときたわ。

 なんて恐ろしい怪盗なんだ。これほどの破壊力を持っているだなんて。

 

「刀を床に置き、壁に両手をつけ!」

「観念しなさい!」

「御用だ御用だぁ!」

 

 神津とG4が銃をストーンリバーに突きつける。

 囲まれたストーンリバーは、手にした秘宝から手を離すことなく不敵に笑い、瞼を閉ざす。

 

「我が力……」

「みんな! 目を閉じろ!!」

「全員目ぇ伏せろ!!」

「食らえ!!」

 

 カッ! とトイズの輝きを放ち、G4一同がマネキンにされ。

 

「っ! なにが!?」

 

 てないな。平乃だけ。

 

「我がトイズが目に潜むこと。見破ったか」

「あのタイミングで目を閉じればピンとくるさ」

「さすが……さすがだ小林オペラ。さて」

「なんでこっち見る」

 

 神妙な面持ちで頷いたストーンリバーが、なぜか続いてこちらを見つめてくる。

 なんだろ、発言求められてるのかな。

 

「まあ、お前ら演出過多でわかりやすいし」

「なるほど……参考にさせていただこう」

「そのまま素直でいてくれ。楽だから」

 

 ノーモーションで飛んでくる人形化のトイズとか恐ろしすぎるわ。

 

「さて小林オペラ、浅見光。我が剣技にてその力……測らせてもらおう」

 

 鋭い眼光を向けたまま刀を握る。

 

「この魔剣でな────むあっ!!??」

 

 抜刀と同時に、鞘の中から煙が吹き出した。

 もろに白煙を浴びたストーンリバーは不気味に笑い声をあげ始める。

 

「くく……へへへへ……」

「ちょっと?」

「様子が……変じゃないですか!?」

「ふふふふふへは」

「まさか……妖刀の……」

「呪い!?」

「ひっはははははぁぁぁぁー!!」

 

 哄笑しながら刀を振りかぶった。

 

「逃げろぉぉぉぉー!!」

『はいぃぃぃーっ!!』

 

 オペラが叫び、俺たちは迷路を逆走する。 

 来るときは手探りだったものの、先頭を行くオペラは道がわかっているように迷いなく進んでいる。

 

 俺の記憶でもこちらで正しいがしかし、ゲームでもそうだったが今回は相手がおかしくなっているので失敗したらマジで殺される状況。

 であればゲーム的な都合は無視して安全にぶちのめしてやろう。

 

「コーデリア、平乃。次の分かれ道に隠れてくれ、挟み撃ちする!」

「なっ、危険よ!」

 

 分岐の先で立ち止まり、背後に向き直る。

 有無は言わさない。広い上にいくよりも、狭い地下のほうが長物相手ならやりやすい。

 

「早く! アイツが来る前に!」

「〜〜〜っ! あーもう! 怪我したら後で引っ叩くから!」

「お気をつけてっ」

 

 コーデリアと平乃が指示通りに身を隠す。

 ようし、今まで怪盗帝国相手にまともに俺が戦うことなかったからな。

 お望み通り、真正面からぶつかってやろう。俺は。

 

「何をやっているんだ君たち!」

「避けるスペースなくなるから下がってて!」

 

 オペラたちを押しのけて場所を確保する。曲り道から追ってきたストーンリバーが姿を見せた。

 

「イヒヒヒヒヒ」

 

 狂ったかけ声とともに疾走し、迫りくる。

 ストーンリバーが刀を縦に振り抜く。斬撃は鋭く、確かな技量があるのだと確信できるものではあったが、なにぶん予備動作が大きくわかりやすい。

 体を横にずらし、剣閃から外れる。

 素早く刀を翻すと、ストーンリバーは刃を横薙ぎに振るった。力を抜き、重力に引かれるようにして屈む。頭上を銀が通り過ぎていった。

 

「おら」

 

 トン。と、左に振り切られたストーンリバーの腕を、加速させるように打った。

 勢いそのままに止めそこねた刃は、壁に深く食い込む。

 よし終了っと。

 動きが止まったストーンリバーは鬼の形相で飛びかかってきたコーデリアと平乃にボコボコにされた。

 

 これが結束の力(数の暴力)か。

 怪盗のチームってんのに、一人ずつやってきてる奴らにはない強みだ。

 

「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」

「おつかれコーデリア。平乃も手伝ってくれてありがとう」

「いえ。お互い様ですから。怪我は……ないようですね」

「ふ〜、ふ〜」

「そんな息荒れる勢いで殴ったの?」

 

 ほんとにストーンリバー生きてる? 

 ん、あれ。

 

「コーデリア! 怪盗ストーンリバーは!?」

「え? たったいまとどめを」

 

 オペラが訊ねるとコーデリアが物騒な答えを返す。

 いつの間にか倒れていたはずのストーンリバーの姿がない。

 これは……。

 

「骨も残らなかったか」

「そんなわけないでしょう! いったいどこに!?」

「不覚をとったよ……私としたことが」

 

 よかった、生きてたか。

 どこからかはわからないがストーンリバーの声がする。

 

「まさか刀にあんな仕掛けがあるとはな」

「出てこい!」

「そのようなわけにはいかないが今回は負けを認めよう」

 

 ネロが虚空に向けて啖呵を切るも、返ってきたのは言葉だけだ。

 

「そんなの認めなくていいです! ココロちゃんたちをもとに戻してください!」

「案ずるな……我が力は日の光にて解除される」

「運ぶの面倒だし、パパっと解いてくれない? 負けたでしょ」

「…………。ではまたいずれ会おう。その時こそは負けぬ……決して」

「あ、おい!」

 

 できないのかな。それともやらなかっただけか。

 まあどちらでも構わないか。事件は解決したのだ。急ぐ理由もなし、普通に救助するとしよう。

 

 ■◆■

 

 リクのお兄ちゃんも無事にマネキンから戻り、再会することができた。

 キーアイテムとなる石ころも、コーデリアがリクからもらっていたし、平乃がストーンリバー撃破に関わったことでココロちゃんが調子づいてウザかったが、まあなんてことはない。

 事件から数日、俺に残った未解決の問題はあと一つとなった。

 

「ごめん、ごめんて、エリー。今度はまっさきにお前に頼るからさ。そろそろ拗ねるのやめてくれよ」

 

 問題というのはそう、エリーが機嫌を損ねていることだ。

 

「大丈夫……です。……コーデリアさんや、長谷川さんのほうが……頼りになりますから」

「エ〜リィ〜」

 

 ツンと顔を背けるエリーを抱きしめる。

 刀を持ったストーンリバー相手に、危険をまったく冒す必要なく完封できるトイズを持ったエリーは、自分が呼ばれなかったことをめちゃくちゃ根に持っていた。

 

「そういえば光さん」

 

 空気を変えるようにオペラが話しかけてきた。

 

「?」

「前から聞こうと思ってたんだけど」

「あぁ、俺たちの昔話」

「それも気になるけれど、君、怪盗帝国の三人から敵視されていたけれど、ひょっとしてアルセーヌと会ったことがあるのかい?」

 

 とうとう突っ込まれたか。

 アルセーヌが俺のことをどういう風に話したのかは知らないが、ラットが俺の名を出した辺りで余計なことでも言ったんだろうなと予測がつく。

 なので予め考えておいた言い訳を話すとしよう。

 

「あ。それ僕も気になってたな」

「あーちょっと話しづらい内容なんだけど……まあいいか。なんてことはないよ、ただ前に戦ったことがあるってだけ」

 

 嘘は混じってない。マジで真実オンリーだ。

 

「……? あぁそっか。僕たちにライセンスが発行されたの最近だもんね」

「って光! あなたライセンス無しで活動してたの!?」

「オペラさんも言ってたでしょ。巻き込まれただけだからノーカン」

「いや確かに言ったけれども、こんな引用の仕方はしてほしくないなぁ!」




この前、おもちゃ屋でミルキィホームズTDのデッキを買ったんですよね。
ヴァイスシュバルツのトライアルデッキなんですけど、カズミちゃんのサイン入りカードが入ってました!
いやぁ、めちゃくちゃ嬉しかったですね〜

……これ7年前の商品なんですが……
需要ないって言うのはやめてぇ
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