※この作品はR-18です。

催眠モノと言うには微妙な能力でがんばってみる   作:アウグスティンティン

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キャラクターが、キャラクターが多い。

だいぶはしょってストーリーを進めました。詳しい部分が気になる人は原作ゲームを買ってください。


8話

 破砕音が聞こえた瞬間、俺は駆け出す。

 そうするのが普段の俺から一番解離しない行動だと思うからだ。

 たちまち生徒会長室の前までたどり着き、そのままの勢いで飛び付くように扉を開こうとした。

 ガタン、と俺の体が豪華な木製の扉に止められる。鍵がかかっていた。

 

 合鍵をポケットから取り出して、鍵を開けて扉を押し開く。

 部屋は荒らされていた。

 コーデリアたちが追い付いてきて、部屋の様子を見て息を飲む。

 

「人を……呼んだほうがよさそうですね」

 

 比較的、冷静な振る舞いを見せていたオペラが言った。

 それから警察を呼ぶよう言われた舘さんが携帯を取り出すものの、電池が切れたといい、外の公衆電話にかけに行く。

 ひと悶着ありつつも、警察が来る前に俺たちで調査をすることになった。

 

 ミルキィホームズのゲーム版は、アニメと違ってちゃんと推理物だ。

 ノックスの十戒にべたべた触れまくってることは気にしないでおくとして。

 

 具体的にどういうシステムでゲームが進むのかというと、まずコーデリアたちミルキィホームズの四人が勘で不自然な箇所を見つけ出す。

 主人公であるオペラは行動回数の範囲内でキャラクターに話しかけ、証拠を集めていく。証拠が見つかったら加点。

 最終的に一定以上のポイントが貯まっていれば、謎は解明、第二段階に入る。

 

 つまり謎を解明するのに必要な証拠がある場所には、もう誰かがいるわけだ。

 各々気になるところを調べるために活動を始めると、やはりコーデリアたちはゲーム通りに証拠のある場所へと行った。

 

 コーデリアは出入口のところに転がっていたアンリの携帯を見つけ。

 エリーは傾いた本棚と、そこから落っこちた大量の本をかわいそうだと見に行き。

 ネロは倒れたいくつかの椅子と大きなソファーに違和感を覚え。

 シャロは犯人が侵入したとおぼしき割られた窓ガラスを調べに。

 

 ゲームに倣って俺もどこかしらを調べて、なにか証拠になるようなものを見つけておきたいのだが、難しい。

 どこを調べていればいいんだろうか。アンリに来るよう言われた日から、ずっと悩んでいた。のだが、結局思いつかなかったので、適当に行動することにする。

 まずシャロのいる窓ガラスのところに俺も向かった。

 

「光さん、どうかしましたか?」

「ちょっと犯人の行動をシミュレーションしようと思って」

 

 窓から顔を出し、バルコニーを覗く。そこには砕けたガラスの破片が、大量に散らばっていた。

 見ればわかる通り、ガラスは内側から割られたのだが、それはシャロ担当なので置いといて、犯人の侵入経路を模索する。

 

 ネロがアンリのPCから学園のデータベースをハックし、監視カメラの映像を見たのだが、犯人は写っていなかった。

 カメラに写らないよう部屋に窓側から入るとなると、木を登る、とかだろうか。

 

 そしてガラスを割って部屋に入り、部屋を全体的に荒らし回ってアンリを連れ去った、と。

 ガラスの音以外は静かなものだったので、おそらくはほとんど無音で。

 

 わー、なんてすごい怪盗なんだー。びっくりー。

 

 いやでも、これやったのがアルセーヌだって言われると納得できるな。つまり不可能ではないのか。

 部屋をうろちょろ、いかにも推理してます感を出しつつエロいことを考えて暇を潰していると、オペラが話しかけてきた。

 

「えと、光さん」

「ああ、オペラさんか。どうかした?」

「この事件で、なにか気になることはあったかい?」

 

 おっぱい。じゃなかった、ええと事件の証拠ね、証拠。

 

「犯人はたぶん怪盗だと思う」

「うん、僕もそう思うよ。日中堂々とこんなことをやるのはそれしかないだろうし」

「それに犯行もあっという間だしね」

「……確かに」

 

 ゲームでは破砕音の後に会話が入って、すこし時間を空けてから生徒会長室に向かっていた。

 でも今は、俺が即行で走ったから、犯行に使えた時間は数十秒程度。まともな手段で誘拐できる余裕はない。

 

「どんなトイズならこの短時間でアンリを拐えるのか……」

「いや、そうとは限らないよ」

「というと?」

「普通に犯行が行えるほどの時間はなかったなら、トイズ以外にも可能性はある」

「……ああ、なるほど。そういうのもアリか」

「そう、これは重要なファクターだ」

 

 うわぁ、まさか生でこんな近くで、それも俺が言われる日が来るなんて。

 これはまた聞きたいな。他の事件についてもちょっと考えておこうか。どうせ逃げられないだろうから。

 

 さて、まあそんなこんなで調査をやっていると、廊下からうめき声が聞こえてきた。

 部屋を出ると、舘さんが倒れていて、その側にはタキシードに黒いマントを羽織り、仮面をつけた不審者が立っていた。

 

 演技派だな。

 

 新米怪盗さんは、小林オペラから逃げ切れば箔がつくだろう、なんて理由で戻ってきたらしく、ちょっと会話したらまたすぐ逃げ出した。

 ここからが第二段階、怪盗との鬼ごっこだ。QTEが始まる。失敗したら怪盗に逃げられるか、死ぬ。

 爆弾魔や辻斬り侍がシリアスやってるんだ。死人の一人や二人、出るだろう。

 

 とはいえ今回の俺の出番はこれで終わりだった。

 謎の新米怪盗さんを追いかけている時も、俺はただ走っただけ。やったことと言えば、追い詰めた新米怪盗さんに、証拠を突きつける時に多少話したくらいだ。

 

 窓ガラスを内側から割り、音が響く旧校舎で音もなく椅子やソファーを倒し、本棚から全部畳んだ状態で本を落とした謎の怪盗。

 その正体は──なんとアンリだった! 

 知ってた。ゲームの時も窓ガラスで察した。

 

 え? 携帯? 

 ロックくらい人によってはかけるでしょ。

 

 ■◆■

 

 生徒会長室を片付けてから、アンリは俺たちに呼び出した理由として、一本の映像を見せた。

 怪盗アルセーヌからの犯行予告だ。

 アルセーヌはアンリと同じ水色の髪、同じ声帯、同じおっぱいを持ったよく似た別人だ。

 そんな怪盗から送られてきた映像は、怪盗を複数人集めた怪盗の組織、怪盗帝国を作るという内容だった。

 

 俺たちが呼び出された理由は、怪盗帝国に対抗するために探偵も組織を作るべきだと判断され、そのテストケースとして選ばれたからだ。

 俺たちである理由は、仲がいいから。

 個人主義な探偵をわざわざ目指そうとしているだけあって、基本ここの生徒たちはバチバチにやりあっている。

 

 互いにライバル視しており、とてもではないがチームとしてやれる状態ではない。

 つまり複数人で仲良くやれそうな人員が他にいなかったからだ。

 

「俺もやるの?」

「はい、光もやってください」

「なんで?」

「わたくしの希望です」

 

 笑顔で言われてしまった。そんなに俺と戦いたいのか、戦闘能力ないのに。

 いやアンリは味方だけど。

 

「しゃーないか。じゃあよろしくオペラさん」

 

 ぶつぶつと「また、やってしまった」なんて呟いていたオペラの肩を叩く。

 

「え?」

「いやいや、この状況で一人だけ無関係とかそんなわけないじゃん」

「ええ。小林さんには彼女たちの指導を行ってもらいたいのです」

「は!」

 

 と、アンリの提案に心底驚いたようにした。オペラは俺たちの気持ちは、とか、僕はもう探偵じゃない、とか言ってなんとか断ろうとする。

 しかし旧校舎の一角に作られた探偵チーム及び小林オペラ用の部屋に通され、コーデリアたちの熱心な頼みの前にあえなく陥落した。

 

「チョロいな」

「しっ、そういうのは言わないお約束ですよ」

 

 人差し指を口に当てるアンリ。

 

「ひょっとして光さんも計画した側だったり」

「いや別に。ああそれと、さんはつけなくていいよ。ほら、立場上そっちが上になったわけだし」

 

 敬語はどうしようか。指摘されない限り別にいいか。苦手だし、あんまり使いたくない。

 

「みんなで写真を撮りませんか! チームの結成記念!」

 

 写真大好きシャロが、いつものようにどこからともなく、もといポケットからカメラを取り出す。

 

「……え!」

「こんな時くらい恥ずかしがらないでくださいよ、エリーさん」

「う、うん……」

「コーデリアさん、光さんも並んで、並んでー!」

「仕方ないわねぇ……もう」

「はいはい」

「ほら、ネロもはやくー!」

「ちょっと待って。冷蔵庫にケーキを見つけたんだ」

「小林先生も!」

「ええ! 僕もかい!?」

「当たり前じゃないですか! これからはみんなの先生なんですから!」

 

 わちゃわちゃと賑やかに集まる。アンリが名乗り出て、シャロからカメラを受け取った。

 

「美味しいと思ったらこのケーキ、ヌハチのだ」

「ネロ、まさかそのままで?」

 

 ケーキ皿を持ったまま列に加わるネロに、アンリが聞いた。

 

「いいじゃん、別に」

 

 ネロは笑いながら答えると、ケーキを口に運んだ。

 美味しそうだな。俺も後で部屋を漁ろう。

 

「エルキュール、顔が真っ赤ですよ」

「ご、ごめんなさい……」

「うふふ、では撮ります」

 

 とアンリが言ったところでシャロが「あ!」と叫んだ。

 

「あたし、思いついちゃった! 耳を貸して、ネロ! エリーさんたちも!」

 

 シャロが俺たちに耳打ちする。

 

「どうかな?」

「どうかな、って」

「あたしたちの名前だよ。せっかくチームになったんだから!」

 

 ネロの疑問に勢いよく答えるシャロ。

 

「俺がいるのにそんなゆるふわな名前なのか」

「ダメ、ですか?」

「いや、いいよ」

 

 ただ所属する予定じゃなかったから、ちょっと困惑してるだけ。あと教導じゃなくてメンバーに男がいてもその名前なんだってビックリしただけ。

 

「じゃあ、大きな声で発表ー!」

「え……!」

「今ぁ!」

「ちょっとちょっと!」

「笑顔で叫べば素敵な写真になります! せーの!」

 

 有無を言わさず進めるシャロ。アンリも微笑みながらカメラを構えた。

 

「あたしたちの名前はぁ!」

『ミルキィホームズ!』

 

 まあそんなわけで、俺はミルキィホームズの一員になった。

 つまりこの先、楽しく愉快な謎解きに巻き込まれるわけだ。死人が出ないようがんばらないとな。

 

 それにしても俺はこれからこのチーム名を名乗るのか。せめてTSさせてほしい。

 

 ■◆■

 

 後日、俺たちが事務所にいると舘さんがやってきて、また生徒会長室に呼び出された。

 

「なんだろう?」

「怒られる?」

「ええ……!」

「だからなにかやましいことでもあるの!?」

 

 やましいことしかない俺は、緊張しながら舘さんについていった。

 部屋にはアンリの他に、五人、警察の服を着た人たちがいた。ああ、そういやそんなのもあったっけ。

 

「神津?」

「久しぶりだな、小林」

 

 長身の男が答えた。白髪に切れ長の目、あとメガネ。少女マンガに出てきそうな見た目だ。

 

「お知り合いですか?」

 

 シャロが聞いた。

 

「ああ、学生時代の友人だよ。でもお前がどうしてここに?」

「ご挨拶だそうです」

 

 アンリが静かな声で教えてくれた。

 

「この方たちは警察の対怪盗組織『GENIUS4』です」

「G4と呼んでいただきたい」

 

 あちらもミルキィホームズと同じく、変化しつつある怪盗事件に対抗するため、試験的に作られた警察側の組織だそうだ。

 

「小衣から順に挨拶しろ」

「はい」

「ココロちゃんっていうんですか! かわいい名前ですね!」

「ココロちゃんって言うな! 馴れ馴れしいわね!」

 

 いきなり喧嘩をしていた。そして怒鳴られたシャロはへこんでいるようだった。

 

「小衣は小衣、明智小衣。頭脳明晰知性抜群の天才美少女よ。そしてG4のリーダー。小衣がいるからにはもうあんたらの出番はないと思いなさい」

 

 金髪ドリルのちみっこだ。飛び級でハーバード大学を卒業したIQ1300の天才児。四桁とか、数字が頭悪い。

 

「あ、はじめまして。論文全部読みました。素晴らしかったです」

「え、ほんと? ふうん、探偵にもちょっとは見所のある奴がいるじゃない」

 

 得意げにない胸をはるココロちゃん。扱いやすいな。

 脱線した話を戻すため、神津が咳払いをした。ココロちゃんが縮こまって下がる。

 

「咲」

「ほ~い、遠山咲で~す。情報収集担当って感じ~。よろしく~」

 

 制服を適当に着崩した、気だるげな雰囲気の少女だ。長い桜色の髪を、ヘアバンドで留めている。

 飴のイメージが強いが、さすがに今は咥えていなかった。

 

「平乃」

「はい、長谷川平乃と申します。柔道、剣道、合気道などを嗜んでおりまして、主に現場での接近戦担当です」

 

 平乃は正統派の黒髪美少女。見た目からは想像できない武闘派で、もろもろ合わせて五十段もの段位を取得している。

 なお、一部はゴスロリ検定。

 なんだよゴスロリ検定って。そう思って調べたことがあるのだが、日本ゴスロリ協会なるものが存在した。

 

「次子」

「あいよ、あたいは銭形次子ってんだ。車はもちろん、ヘリから飛行機なんでもござれ。つまり、運転・操縦担当ってわけだ。よろしく」

 

 次子も制服の前を開けているが、これは咲とは違う理由だろう。前が留められないくらい巨乳だからだ。

 緑のショートカットに八重歯、江戸っ子気質と快活な人である。

 運転できる乗り物の幅はかなり広い。マリアさんくらい広い。

 

「そして俺が彼女たちの指導兼監督役の神津玲警視だ」

「警視だって!? 神津……お前、いつの間に?」

「どうでもいいと言ったはずだ」

 

 探偵引退してる間に、ずいぶんと関係に変化があったらしい。

 ちなみに警視職は警察内で上から五番目、普通に昇任されるならキャリア組(国家Ⅰ種採用者)で七年。それ以外なら十五年前後でなれる。

 G4の監督役として、一息に役職を引き上げられたんだろうか。

 

「我々は怪盗事件に積極的に関与する。今日はそれを断りにきた」

 

 律儀だなぁ。それとも俺が丸すぎるだけで、実は宣戦布告だったりしたのかな。それかオペラに会いに来たとか。

 

「アンリエット・ミステール。それでは我々はこれで失礼する」

「はい。わざわざのご足労、ありがとうございます」

 

 それだけ告げてG4たちは部屋を出ていった。扉が閉まりきったところで、アンリが言う。

 

「とまあ、そのようなわけです」

「楽できそうでいいよね」

「はい?」

「ごめんなさい」

 

 アンリ怖。背筋がゾッとしたわ。

 

「さて、それはそれとして、みなさんこちらへ。もう一つお伝えすること……いえ、お渡しするものがあります」

 

 机の裏に周り、下から取り出したものをアンリが並べた。

 五色五つの電子機器だ。見た目P○Pである。

 

「なんですか、これ?」

「パーソナル・デジタル・アシスタント。いわゆるPDAです。携帯電話としての機能はもちろんのこと、基地局に問題が発生した時でも直接連絡が可能です。どうぞ、お役立てになってください」

 

 つまりはどこでも、どんな時でも連絡が取れるスマホって感じだ。

 

「わぁ! 貰っていいんですか!」

「支給品ってやつ?」

「かわいい……」

「コンパクトみたい」

「俺は……カラーリング的に紫か?」

 

 それぞれ好きな色を取る。

 コーデリアは青、エリーは緑、ネロは黄色、シャロはピンクだ。

 

「はい、小林さんにも」

「ああ、どうも」

「これから皆さんには現場で活躍していただくわけですから、これくらいのフォローはお任せください」

 

 にっこりと笑って、アンリがこっちを見る。ピン、と指を立ててこう言った。

 

「そして、探偵の威信がかかっていることも……お忘れなく」

 

 だから怖いってば。

 

「わーい」

「ちょうど携帯変えようと思ってたところなんだよねー」

「すごく……便利そう……」

「色も私たちの好みに合わせてあるのね」

 

 これ、原作通りに進めようと手抜いてたら、アンリに殺されるかな。

 負けたら承知しねぇぞオラァ、というアンリからの隠れた脅迫に感づいた者同士、オペラと苦笑いした。

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