橘君の野望・青藍島立志伝 作:メスガキ救急隊員
「ドスケベセックスの授業?6限はホームルームのはずだ」
「本当に何も知らないのねアンタ。コマ割りのHはそのままの意味よ」
「んなっ」
あのギャル…片桐奈々瀬によれば今日最後の授業で学園は一気に危険地帯へと変貌するらしい。そして深刻な表情をする俺に彼女はドスケベはしなくていいからとダミーの相手役を申し込んできた。妹にも授業の内容を通達してその時に備える。
「ねえねえ、ドスケベセックスの授業相手決まった?もしまだなら…橘くんのチン宝鬼マラ国綱、わたしの底なし鞘アナルに収めてみない?」
「ちょっと待って。入れるなら私のスぺああん♡ポケットでしょ。45次元に繋がった秘密マンコで未来に逝っちゃお?」
「ごめん今日は片桐さんとすることになってるんだ」
「そっかチン約があるんだ。じゃあ仕方…ぇ?誰と?」
「だから片桐奈々瀬さんだ」
Hの授業が待ち遠しいと騒がしかった教室が静まり返った。そして大歓声が戻ってくる。あっという間に俺の周りは押しかけるクラスメイトたちで埋まった。
「まじかよ橘!お前すげーな!本当は50人の順番待ちがあるんだが転入祝いだ。逝ってこい!」
「橘くんはもう初物じゃないから本気で搾り取られるわよ!?」
「赤玉が出ても金玉まで取られてはいけない。男のうちならまたヤリ直せる」
片桐からアタシの名を出せば強引な女子も引くと聞いていたがこうもとんとん拍子に進むと不安になってくる。もしやこれは巧妙なビッチの罠で本心から安心させたところを食べる屈服プレイかもしれない。
「橘くんはいる?」
「片桐さん!橘にお前の相手は無理だ。俺に後ケツ人をさせてくれ」
「ずりーぞ。お前橘が倒れた後に参加する気か!」
「あはは。ごめんね今日は1対1でしようと思って」
俺は後ろから刺さる羨望と嫉妬の視線から逃げるように教室を出た。
「なにその悲壮感漂う顔は」
「いやマン力で鉄をへこませたとかチン棒を越えながらマングリ返し5回宙ハメしたってマジ?」
「はぁ?できるわけないでしょ。噂に尾ひれがついただけ」
「そ、そうだよな」
裏門近くの人気のないエリアに片桐と隠れる。唯一まともだと思っていた授業すらドスケベに染まっていたことのショックが今になって襲ってくる。特にすることもない故に黙っていると片桐が沈黙に耐えかねたかのように話しかけてきた。
「…ねえ本当に大丈夫?」
「ほっといてくれ。この気持ちは島の人間に分からない」
ドスケベ条例は確かに廃れていく青藍島を再生させた。島の特典を対価に日本全国から納税を集め観光客にもお金を使ってもらう。増えた予算は各種助成金や税の軽減に投入され更に島を豊かにする。
甚だ不本意だが多数派から見ると俺は働かない穀潰しに見えるのだろうか。そんな暗い考えまでしてしまう。
「分かるわよ。わたしも転校生だもの」
「…ヤッテみれば楽しいってか?」
なるほど片桐が俺を構うのは転校生ゆえの苦労を知っているからかもしれない。だが結局島に馴染んだ彼女と俺はそのうち袂を別つ。最初から関わらない方がいいのだ。
「だから。私処女…ではないけどえっと…」
「もういい。お前はビッチでも良い奴だ。それでいいだろ?」
ぶちっと何かが切れる音がした。胡乱げな目で片桐を見るとマジ切れしたギャルがそこにいる。最大限の誉めたというのにこれだからビッチは。
「だから!わたしは!!周りに勘違いされてるだけでビッチじゃない!!逃げるのに都合がいいから合わせてたら話が大きくなっただけ!」
「はぁああ!?」
あまりにもあんまりな話。本土の女子高からド田舎の青藍島に転校してきた片桐はその恰好と容姿からギャルビッチと思われていただけ。本人曰くセックスの誘いを断る方便が独り歩きしているだけで貞操観念は普通だと。
「そしてこの島の住人を騙す為のエロ知識が蓄積され本物のビッチに」
「なってない!」
6時限目を終え放課後。片桐に連れられて正門でアサちゃんを待つ。ここまで来るのにSSや女子生徒とすれ違ったが止められるどころか快く送り出された。学園一のギャルビッチは格が違う。
「あまり特定の相手と一緒なのも危険なのだけど、アタシも断るの楽だし」
「どういうことだ」
「例えカップル、夫婦がいたとして他者との性行為を拒むことはできないのよ。性産的じゃないってね」
「流石にそれは反発があるだろ」
セックスしていれば結ばれることもそれに伴い独占欲が湧くこともあるだろう、俺は知らんけど。片桐は俺の言葉にその端正な顔を歪める。そして心底嫌そうに言葉を続けた。
「SSやSHOが無理矢理するのよ…。考えを改めるまで」
「…そこまで」
考えるだけでおぞましい。ドスケベ条例はこんなところでも不幸を生み出していた。所詮少数派と切り捨てるにはあまりに人の感情を無視してはいないか。ドスケベ一辺倒な青藍島の一端を聞いた気がする。
「あああっ、あ、兄!奈々瀬さんとい、いい、一緒ってま”っ!?」
「こんにちは妹さん」
予想通り妹は見た目ビッチの片桐に大興奮。暗い話題をしていただけに騒がしさがありがたかった。
「ずるいよ兄。私に内緒で1人奈々瀬さんで卒業するなんて。…もしよかったらこの後妹をビッチに捧げる鬼畜の風して3Pにこぎ着けっ、いだい、いだだぁー」
「あ、あはは」
妹をぐりぐりする間に自分も強張った顔をほぐす。
「貴様らっ!校門で立ち止まってアナルセックスもしないでナニをしている。生ハメをしろ!ゴムハメでもいいが中に出せ」
朝に持ち物検査を指揮していたSSが近づいてくるが今の俺たちには片桐がいる。名声学園一のビッチ対SS指揮官。本当なら焦るところだが虎の威を借る狐の気持ちで少し興味がある。
「あっ、いえ…今からこの兄妹とドスケベ遊園地のコーヒーパッコで3Pを楽しむつもりみたいな?あはは~」
「なるほどパッコの回転による遠心力で深く合体し相手を離さないアクメバティックなプレイか…さすがは模範的ビッチな片桐だ。今後も転校生の手ほどきを頼むぞ」
「どうもです~…ほら、早く行きましょう」
片桐は施設名とプレイ人数を言っただけなのにSS指揮官のこの信用。島自体がエロに塗れた青藍島でビッチの頂点と言われる片桐の格を実感した。
「これが明日辺りにはコーヒーパッコを愛液で止めたとか色々尾ひれがつくのよ…」
「流石にそりゃないだろ」
「あるのよ」
それが本当ならもはや概念の域である。
「んほぉおおお。七瀬さんと回るパッコの中でドチャクソに絡み合うのもいいけど初めては静かなお家でがいいかもしれないと具申するであります」
「早く歩けこのおバカ。まだ見られてるんだよ!」
「ああん」
俺たちは悠々と正門から脱出することに成功した。
■
しかし青藍島は甘く無かった。逃走に次ぐ逃走の末安息の家の玄関で俺たちは突っ伏す。片桐がいることでSHOガードマンは回避できた。しかし一部の観光客(それもかなり粘着質)は逆に引き寄せられるのだ。丁寧に先約があることを盾に断っていた彼女だが盗撮した写真を誰かがSNSへあげたことで始まった鬼ごっこには骨がおれた。
「はぁ、はぁ…お邪魔、します。何で今日に限って…ごめん…」
「きゅぅ…」
「気にするな。リビングに座っててくれ」
同じ境遇の片桐を切り捨てるような真似はできない。むしろ方向音痴の俺と引きこもりの妹がいなければいつも1人で逃げ切れていただろう。俺たちの外が落ち着くまで家にいてもらうことにする。
「兄…ちょっと。奈々瀬さん帰すの待って。あれ使う」
「お、おう。片桐、もう少し残っていけ」
「別にいいけど…?」
数秒前まで床に突っ伏していたはずの妹の目がいつになく真剣だった。好みのギャルビッチをおいて1人自室に引っ込むほどだ。
「妹さん…アタシ怒らせちゃったかしら?」
「いいや、片桐の安全を確保してくれてる」
妹が起動しに行ったエロシュンは青藍島を飛び交うドスケベ通信を逸物に見立て飲み込むオナホ型全方位アンテナとオナニー用のエロ情報を選別するクライアントで構成されるエロ通信傍受システムだ。
今頃妹は”片桐”や”ビッチ”などの単語を検索用のエロ辞典に打ち込みその文字や音声を含むドスケベ通信を監視しているのだろう。
「よく分からないけど…なんかすごいのね」
「アサちゃんは九九はできないし寝起きが悪いしおバカだけど天才だ」
「褒めてるのそれ?」
次いでアサちゃんの良いところを100個ほど羅列していく。片桐は生意気にも呆れ顔で、聞き上手だった。夕陽で暑かった部屋がクーラーで冷えてきた頃妹がタブレットを手に部屋から出てくる。
「少しずつ離れた地点に偽の目撃情報を流してるんだけど…なんか島民の反応が予想以上なんだよね。ごめんなさい奈々瀬さん、時間をくれたら絶対安全にするから」
「だとさ。もうこんな時間だし落ち着くまで晩飯食べていくといい」
材料は何があったかと冷蔵庫を漁る。この島に来てから買い物にもろくに行けていない。心配だったがなんとか肉野菜炒めと味噌汁を人数分作れそうだ。
「助かるけど、いいの?」
「奈々瀬さんと夕食!微妙なご飯が一流のディナーに。どこにお金を振り込めばいいですか」
「大歓迎だとさ」
久しぶりに妹以外と食卓に着いた。普段より皿の上の料理が暖かく見えるのはたどたどしく料理する俺たち兄妹に見かねた客人が手伝ってくれたからだ。
「むごっもご。おいしい!おいじい”よ兄ぃ~」
「…ああ、すごく美味い」
「そんなに?大げさよ」
俺たち兄妹が生きるための毎日の食事が色を取り戻した瞬間だった。大したことではないと片桐は言うがご飯がおいしいことは気持ちを前向かせる。妹は…片桐がいるだけでテンションが天元突破だが明るいことに違いない。
「ごめん兄ぃ…やっぱ明日からまた微妙なご飯に戻るのツレエょ」
「こればかりはな…2ヵ月で上達の気配もないし家政婦さん雇うのもありかな」
洗い物を終え妹とひしっと抱き合い橘家の食事事情を嘆く。しかしここは青藍島。
「メイドとか人妻プレイしたいって人が一部紛れてるわよ?」
ちゃんと仕事はしてくれるかもしれないがプラスαでヤルことも要求される可能性があるとのこと。人の家掃除しに来てるのか汚しに来てるのか分からない。
「んんっ。そこでこの家事代行サービスサイトなのだわ」
「言ってるだろ。俺はドスケベセックスが大嫌いなんだ」
「アタシが雇われてあげる。見たとこちゃんと掃除もしてないみたいだし…作り置きもしてあげるから」
「本当か!?」
聞けば仕事で忙しい女性宅を狙って担当していたが連れ込んだ男がいる可能性もあるしマネージャーに男性宅への勤務を催促されていたとか。また隠れ蓑にしてごめんとは片桐の言だがこちらとしても願ったり叶ったり。しかし身体がビッチと認識する片桐へ素直に頭を下げるのを拒否する。
「兄!どうせ独学じゃ料理は上達しないし教えてもらいなよ。上手くいけば料理教室のギャルビッチ先生に手取り足取り教えてもらうシチュがあるかもしれない」
「ええっと。時間がある時なら別にいいけど?」
「俺のはじめては処女に捧げると決めている!だが…ぐぐっ料理は教えて、ください」
俺はこの日何かを失ったと思う。
1日の始まりは朝食からというが俺たちはそれを実感していた。冷凍してあった白米も卵焼きも俺たちの焼きたてと比べるまでもなく美味い。これを知ってしまったら以前の微妙な味に戻れない。
「うおぉおおお!奈々瀬さんが握ったご飯だと思うと何か活力が湧いてくる!今なら九九の七の段も言える気がする」
「いやラップで人数分くるんでくれただけだからね。だがその心意気やよし、やってみろ」
写真立ての父と母も光の当たり具合か温かくこちらを見守っているように見える。アサちゃんが自発的に九九を覚えようとするなんて片桐には感謝しかない。今度食事の礼も兼ねて何か贈ったりした方がいいのだろうか?
「しちいちが…な、奈々瀬さん」
「なんでそうなる!」
もはや数字ですらなかった。
「は?7は奈々瀬さんを模したギャル数でフェラビッチ数列だから!パコットだって
「おのれ青藍島!おのれビッチ!貴様等はいつもそうだ!」
果たして妹が九九をマスターする日は来るのだろうか。俺はアサちゃんの頭を侵略するあの似非ビッチをどうやって消すべきか考えつつ久しく家族以外の人物のことで妹と騒ぐ場をどこか悪くないと思っていた。
パコ・パコ・パコ