ふうま災禍さん!? 邪眼の使い方間違ってますよそれ! 作:ごきまる
五車幹部一同「え?」
桐生「いや、滅ぶよ。この年間戦死者数と出生率じゃ」
※Hシーンまですっ飛ばしたい方は『深夜のふうま屋敷』までスキップするのもアリかもしれません。
「はぁ・・・・・・」
井河アサギは五車の居酒屋『おふくろの味 さな』に向かっている最中、ため息をついた。
彼女を憂鬱にしているのはふうま災禍の任務報告を聞いた後で参加した会議の内容だった。
その会議というのは・・・・・・。
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―――
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「ぐっぼああああぁーーー!!!?」
五車学園の会議室にて。
魔科医・
「フュルストの件で反省して、真面目に会議に参加したのかと思えばいきなり何を言うんだ貴様はぁ!?」
鉄拳を放った八津紫は激昂して叫んだ。
ずんずんと歩み寄って鬼の形相でさらなる制裁を加える勢いだ。
割と見慣れた風景なので誰も止めようとしない。
桐生佐馬斗は五車学園の地下施設に引きこもっているマッドサイエンティストである。
世界有数の多国籍企業であり、闇社会では人魔結託の巨大犯罪組織である対魔忍の最大の敵『ノマド』に所属していた魔科医であり、対魔忍アサギやさくら、
現在は八津紫への変態的執着心と割と純粋な恋心をこじらせており、なんやかんやあって対魔忍達に魔科医医療技術を提供しているのだ。
桐生「待て待て待て! 何で殴られなきゃいかんのだ!? 俺は真剣にお前ら対魔忍の危機を警告してやってるのに!」
ずり落ちた眼鏡をクイッと正しながら 桐生は立ち上がった。
彼の体は普通では無い。へこんだ顔面がうねうねと波打ち、潰れた鼻が芋虫のように蠢きながら元の形に戻っていく。
顔の下半分は血まみれだが。
「えっと、変態鬼畜魔科医さん? よく聞こえなかったんだけど、さっきなんて言ったの?」
五車学園教師の一人、影遁の使い手である井河さくらがのほほんとした声をあげる。
「だーかーらー! このままでは近い将来、対魔忍は滅ぶと言ったんだ!」
「こいつまだ言うか!」
手を振り上げる紫に、ビビりながらも嬉しそうに頬を染める桐生。
「お、俺を殴っても事実は変わらんぞ紫。フヒヒッ、これは純然たる事実だからな」
「根拠は?」
凜とした声が会議室内に響く。
「対魔忍が滅ぶという根拠と理由を述べて」
発言したのは五車学園校長にして対魔忍の頭領、井河アサギだった。
「それを一々説明してやらないといかんのか? お前達、今なんの会議をしているか忘れたのか? 五車町の少子化問題を議論する会議しててわからんのか――いいだろう」
コホン、と咳払いをして格好をつけながら桐生は会議室にいる面々を見渡した。
「今から三つ質問する。この中でガキがいる奴はいるか? 孕んでる奴もいたら手を挙げろ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「では結婚している奴は?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
会議室内には学園の教師の他に部隊の隊長など、数十人の幹部クラスの対魔忍がいる。
その中で、既婚者は全体の約三割。子持ちにいたっては二割ほどという少なさだった。
「最期の質問だ。今年の現在までの対魔忍の戦死者数は?」
「それは・・・」
口を開きかけたアサギに「いいさいいさ」と嘲笑を浮かべながら桐生はひらひらと手を振った。
「機密だって言うんだろ? この町の人口や学園のガキどもの総数すら俺は知らされてないんだからな・・・・・・とにかく、ここまで言えば凡人どもよりは幾らか頭の回転が早い貴様らなら理解できるだろう」
そう言って桐生は白衣の袖でちーんと鼻をかみ、倒れた椅子を戻してどかりと座る。
「いいか? 対魔忍の数は減り続けているんだ!」
「ぐっ・・・」
これには紫も言葉が出ない。
桐生の言うとおり、それは純然たる事実だったからだ。
三十数年前、人魔不干渉の暗黙の了解を破って進出してきた魔族達。
魑魅魍魎どもとの終わりのない戦い。
そして十数年前、中華連合と米連、二つの超大国の代理戦争が起こった半島紛争と同時期に勃発した対魔忍の最大派閥ふうま一門の反乱。
続いて、対魔忍筆頭門派の井河家と双璧をなしていた甲河家の滅亡。
日本政府の公的機関となり、組織化されて統制のとれた行動が取れるようになった対魔忍ではあるがその総数は確実に減っていた。
さらに桐生が暗に指摘したように、婚姻率・出生率もこの三十年でかなり低下している。
そもそも、その問題を話し合うための会議をしているのだった。
「その問題にはあなたに言われなくてもみんな気づいてます。でもこればっかりはねえ・・・・・・」
そういって英語教師・
「フン! さっきから黙って貴様らのグダグダ会議を聞いていたが一向に具体的な対策や施策案が出てこないから俺がズバリと絶望の未来を知らせてやったんだ。感謝するがいいッ」
「貴様には何かいいアイデアがあるのか?」
ふんぞり返っていた桐生は紫の発言に目を剥いた。
「だからぁ! 俺は前から色々提案してるだろうが! お前やアサギの細胞を使ってクローン部隊を創設するとか、孕んだ女の受精卵に細工して五つ子六つ子を産ませるとか! 胎児やガキどもの成長速度を加速させるとか!」
「あーダメダメ! どれもこれも全部、非人道的すぎるよ桐生えもん!」
「糞の役にもたたん倫理観に囚われている場合かぁ! スターウォーズの正義のジェダイだってクローンの兵隊を使ってただろうがッ」
「ジェダイはそれが原因で滅亡したじゃん!」
「ちょっとちょっとさくら先生、桐生さん。話が脱線してます」
静流がたしなめようとするが、桐生はさらにヒートアップする。
「正確なデータは無いが、三十年、いやあと二十年。死ぬ数と産まれる数がこのまま推移すれば最悪、組織としての体を保てなくなる。闇の世界では弱体化した組織など食いつぶされるだけ。そうなれば紫、お前も死ぬんだぞ!?」
「・・・・・・忍として、死ぬ覚悟はいつでもできている」
「そういうことを言っているんじゃない」
苦虫をかみつぶしたような顔で桐生は目をそらす。
「・・・・・・・・・・・・そもそもなんでお前らは結婚しないんだ? 子供が欲しくないのか? まあ、あんなモノの面倒を見る気など無いという気持ちは分かるが」
桐生の発言に、未婚の対魔忍達は居心地が悪そうに身じろぎしたり、顔を逸らしたりする。
「それを君が言うかなぁ・・・・・・桐生えもん」
いつも底抜けに明るいさくらが陰のある剣呑な目つきになる。
「なんだ、俺がこういうことを言うのがそんなに変か。それから桐生えもんといかいうふざけた呼び方はヤメロ!」
他人の気持ちなど微塵も配慮したことが無い桐生はそれに気づかない。
「たしかに、かつての対魔忍は“産めよ増やせよ”というのを使命の一つとしていたわ」
ぽつり、とアサギが呟いた。
全員が最強の対魔忍であり組織の長である総隊長に注目した。
「血統存続とその繁栄。一族の血を絶やさぬ事、濃くすることは最重要視されていた。でも我々はその古い掟や因習を捨ててしまった。恋愛や結婚、家庭を作ること・・・・・・そういったものに、良くも悪くも一般人と同じ感覚や常識を持ってしまった。その弊害がこれね。あなたの言うとおり、これは早急に何とかしないといけない懸案だわ」
「だから俺が協力してやると――」
「ダメよ。さっきあなたが言った“提案”とやらは全て却下。桐生佐馬斗、私はあなたが志賀あさつきにしたこと、許したわけじゃないわよ」
「・・・チッ」
ぴしゃりとそう言い放つと、露骨な舌打ちをした桐生には目もくれず、思案顔のまま俯く。
その後も意見は交わされたが、明確な対策案は出てこないまま、会議は終了したのだった。
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―――
――――
(・・・・・・どうしろっていうのよ。皆が皆、適当に相手を見繕って適当につがって子作りしろと?)
考えれば考えるほど憂鬱になる。
対魔忍の未来、それを守らなければならない重責がいつも以上に重くのしかかる。
悶々と考えているうちに、アサギは居酒屋さなの前までたどり着いた。
ふと、これから酒を酌み交わす相手のことを思う。
ふうま災禍。
彼女は『お家』と『主君』に忠誠を捧げる古いタイプの対魔忍だ。
だが同時に、忍の世界から背を向けた同胞達を思いやる優しさも兼ね備えている。
(あちらの話を聞いた後で、彼女の意見を聞いてみようか)
そんなことを考えながらアサギは五車唯一の居酒屋の暖簾をくぐった。
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