ふうま災禍さん!? 邪眼の使い方間違ってますよそれ! 作:ごきまる
小太郎を見送ってから数時間が経過した。
ふうま災禍は壁掛けの全身鏡の前に立っていた。
鏡に映る対魔忍スーツに着替えた自分の姿を見つめている。
小太郎はもうとっくにふうま屋敷に着いているだろう。
災禍の邪眼によって意識を揺り動かされ、封じられていた記憶が戻った小太郎は愕然としていた。
さらに、少し怒ってもいた。
何を思いだしたのかは聞かなかったが、災禍には察しがついていた。
時子が過労で倒れたというその日。
おそらく時子は一人の女として、小太郎を求めたのだ。
確信がある。
そして、小太郎と情交に及んだ後、ふうま当主とその厳しいお目付役である執事という、元の関係に戻るべくその時の小太郎の記憶を奪ったのであろう。
小太郎の腹違いの姉であるふうま時子。
彼女は先代が健在だった頃から、小太郎を見守り続けてきた。
ふうま時子は、小太郎にとっての母親であり、対魔忍としての師でもあり、そして厳格な父親代わりでもある。
時子は小太郎を甘やかさない。本当は誰よりも優しくしたいはずなのに、その心を圧し殺して、彼女は小太郎を対魔忍の男として、ふうまの当主として、立派に育て上げることを全てにおいて優先してきた。
十歳を過ぎても、邪眼を開眼しない、右目が開かないままの小太郎が一門の大勢の人間から失望され、次第に支持を失って、『目抜け』と蔑まれ始めた時も、時子の鉄の態度は変わらず、忍の鍛錬をやめようとする小太郎を激しく叱責したほどだった。
小太郎を甘やかすのはいつも災禍だった。
それは災禍と時子がお互いに示し合わせたことではない。
ただ、いつのまにかそういう関係ができあがっていたのだ。
さらに、四年前に新たな従者として先代執事・ふうま天音が加わったことで、ややこしい事態になったことがあったが――それは、いまはいい。
時子がどういう心境の変化で、小太郎を求めたのか。
災禍には全てを推し量る事はできない。だが小太郎が対魔忍の任務につくようになってから著しく成長し、一人の男として逞しくなっていったことが無関係ではないだろう。
ましてや、そのかけがえのない存在であり密かに恋しくも思っている男が他の女と関係を持っていると知れば・・・・・・。
災禍とてそれは同じだ。
「今頃、若様と時子は――」
うめきにも似た低い声が思わず漏れる。
魔界の酒が引き起こしていた頭痛はもう全く感じない。
あるのは懊悩。かきむしりたくなるような胸の疼きだった。
“災禍のところに泊まりたいんだったらいいですよ”
時子はそう言ったらしい。
何故そんなことを言ったのか。そして、
「私はなぜ・・・・・・」
うめきはわめきになっていく。
「なぜわたしは若様の記憶を呼び覚ました? なぜ時子の元へ還した・・・・・・」
答えは分かっている。ふうまの従者として義務を、務めを果たしたのだ。
だが、なぜそうしたのか思い出せなかった。分からなかった。
“あ~~~、なんかもう今日は学校なんかに行きたくないわー”
二人で一緒に朝を迎えたあの日の小太郎の言葉が脳裏によみがえる。
ふうま宗家に仕えることよりも、対魔忍として生きることよりも、これまでのなによりも深いきずなを、つながりを感じたあの夜のことを思い出す。
災禍は鏡に映る自分の姿を見つめながら、その場でうずくまりたい気分になりながら――。
ふと唐突に、何故自分は対魔忍装束に着替えたのかを理解した。
自分の両足は米連製の黒いサイボーグレッグ。
隠密性に優れた機械の足は、忍以上に音一つ立てない。
ふうま災禍は身をひるがえし、ふうま別邸から外に出た。
――――
―――
――
―
災禍は深夜のふうま屋敷に来た。
ふうまの従者として、自分は主が望んでいることをして差し上げた。
務めを果たした。
しかし、それはそれとして。
災禍は音もなく屋敷の中に忍び込んだ。
(どうかしてる・・・・・・私は)
主君の住居に無断で侵入するなど許されることではない。
それでも災禍は自分の目で確認したかった。その衝動にあらがえなかった。
居間に入ろうとしたところで、災禍は“声”を聞いた。
(これは――キッチンから!?)
ふうま屋敷に住んでいるのは小太郎と時子だけ。
今の二人なら
「あんっ! あ! あぁっ!」
弾む喘ぎ声。いつもの低く落ち着いた声とは別人のようだが間違いなく時子の声だ。
小太郎の激しい息づかいも聞こえる。
キッチンから死角となる廊下の壁に災禍は背を寄せると、肩を震わせながら右手で左の二の腕をぎゅっと握りしめて身をよじった。
「もっとぉ、もっとですぅ! お館様ぁ! 災禍にしようとしてたみたいにして! 激しく、激しく突いてくださいぃッ!」
媚びきった、それでいてどこか挑発するかのするかのような声音。
自分の名前を叫ばれて、災禍は我慢できずに――。
気づかれてはいけない。絶対に。
廊下の暗がりに溶け込むように、気配を殺そうとするが、切ない息遣いを、身体の震えを、完全に抑えることが出来ない。
慎重に、慎重にキッチンをそっと覗き込む。
(嗚呼ッ、若様、時子・・・・・・)
時子は壁に両手をつき、腰を落として尻を小太郎に差し出していた。
昨日まさに災禍がいたところと同じ場所。同じ姿勢だ。
(す・・・ごい・・・・・・若様・・・・・・時子も)
「はっ・・・あ、くっ! 時子っ!」
小太郎はズリュッズリュッと力強く濡穴に抽挿をつづけている。時子は上半身がいつものスーツ姿で下半身は剥き出しだ。その姿は女の災禍から見ても、淫ら心を刺激するものだった。
グチョグチョと淫靡な水音がたち、パチンパチンと腰を打ち付けられる度に時子の汗だくの尻と足が震える。
(もし昨日、若様に何も言わず、アサギとの約束もすっぽかしていれば、私が・・・私が若様とッ)
「もっとぉ・・・・・・もっとですぅお館様! 災禍にしたことを、全部私にもしてくださいぃ。私も、災禍があなたにしたことを全部してあげますからぁ・・・あひ!? ひい! おチンポ、さらに大きく――突いてくる角度が変わって・・・・・・あぐっ――いいいっ!」
時子は歯を食いしばって顔を跳ね上げさせた。
(時子、あんな風になるのね・・・・・・っ)
――いささか時子の様子は激しすぎる気がした。男と女の性臭以外にも、独特の匂いを災禍は嗅ぎ取った。その匂いはどこか心を狂わせるような、馴染みのあるものだったが・・・・・・。
しかし、そんなことに気をやる余裕は災禍にはなかった。
自分のことを快楽のダシにされ、災禍の胸は疼き、同時に昂ぶりに変わった。
いや、激しくまぐわう二人を見てとっくに興奮していた。
二人を凝視しながら災禍は右手で胸を揉みしだき、しゃがみ込んで足を大きく開いた。
対魔忍スーツの白い股布の間に左手を差し込む。
(んんっ! 私のアソコ・・・・・・もうこんなにっ)
災禍の陰唇はすっかりほぐれて、濡れそぼっていた。
災禍の指は尖りきった乳首を挟み、コリコリと扱き、陰唇をほじくる。
「ぁ! ~~~ぅッ!」
声を押し殺しながら、痙攣して跳ね上がろうとする腰を落としたまま踏ん張り、災禍は自分の陰核を弄りながら一気に達しようとした。そこへ――。
視界の隅の暗闇が、影が蠢いたように思ったのとそれは同時だった。
「ねえねえ、お姉さんもあの中に混ざりたそうだね♪」
「!!!!????」
ありえない。
振り向くとそこには、この場に絶対いるはずのない女の顔があった。
驚愕と混乱。災禍の蜜壷がギュウウウと収縮し、ビチャビチャと愛液が噴き出して床を濡らす。
“きゃあ”という小娘のような悲鳴を上げ、ふうま災禍は腰が砕け、床につんのめり――。
キッチンからハッキリと見える明るみに転がり込んだ。
災禍さんが一ヶ月ほど五車を留守にして調査任務についてる間、屋敷には異次元から来た居候が住み着いていたんですよ。しかたないね。