ふうま災禍さん!? 邪眼の使い方間違ってますよそれ! 作:ごきまる
対魔忍RPGXのメインチャプターとイベスト、恒常ガチャSR『ふうま天音』の回想の一部ネタバレを含みます。
キャラ崩壊がいつもよりヒドいかもしれません。
十二月三十一日、大晦日。
あと少しで日付が変わり、新年を迎えるという刻限。
ふうま屋敷では時子と災禍、そしてふうま天音の三人がリビングにて座卓を囲み、酒を酌み交わしていた。
「今頃、若様は
御車神社とは五車町ができる遙か以前からある古い神社で、五車学園裏手の山を登った山頂にある。
何の神が祭られているのかも不明だが、古くから忍たちに信仰されている古社である。
小太郎は友人達とそこで新年のカウントダウンを迎えるために今は屋敷にいない。
「んん・・・災禍、何か・・・・・・言いましたか?」
トロンとした目で時子は眠たそうな声をあげた。今にも眠りこけてしまいそうな様子である。
「フッ、もう酔い潰れているのか。だらしがない」
そう言ったのはふうま天音。
ふうま先代当主の執事であり、時子の少し年上のくノ一だ。
腰まで届く長い髪を結わえたポニーテールと、邪眼を発動させた時は紅い右目に左は碧眼というオッドアイになるのが印象的で、中性的な顔立ちをしている。
災禍や時子に比べるとやや細身の体に今も執事服をまとっているのは「まだまだ自分は時子を正式な執事と認めたわけではない」という意思表示である。
さらには何かにつけては時子に、
“姉の立場を利用して若に取り入ったエロ女”
“実力不足の執事”
等々、あらぬ非難を浴びせるので、時子は辟易としており、二人は顔を合わせる度にいがみ合っている。
「やめさないよ。今日は諍いをやめて従者同士、お互いの労をねぎらおうと言い出したのは天音でしょ」
「おお、そうだったな。すまんすまん、今年もご苦労だったな時子。ささ、もう一杯飲むがいい」
「ん、んん~」
言われるままに空になっていた酒グラスになみなみと注がれ、勧められるがままにゴクゴクと飲み干していく時子。
ややあって――。
半目がちだった瞼が完全に閉じ、昏倒したような勢いでガクンと卓に突っ伏し、ふうまの執事は寝息をたてはじめた。
明らかにおかしかった。
かなり酒はすすんでおり、三人とも酩酊しているが、その中でとりわけ時子が酒に弱いわけではない。
ここまで隙だらけの醜態を見せたりはしないはずだ。
「ん~むにゃ・・・御館様・・・・・・」
「おやおやぁ~~~~? 一体どんな夢を見てるのかなぁ?」
「・・・・・・天音、時子に一服盛ったわね?」
「そうだ」
悪びれずにハッキリと答える天音を見て災禍はため息をつく。
「実はお前だけに相談したいことがあったからな」
災禍は怪訝な顔をした。
「私に?」
「うむ。実はな――」
「お三方、酒は足りておられるか? 追加のおつまみは如何かな?」
くすんだシルバーカラーのメタル装甲に身を包んだサイボーグがやってきたので天音は慌てた。
ライブラリー。最近になってふうま家に仕える事となった壮年のサイボーグ対魔忍で、今はふうま宗家御庭番を結成してその長を務めている。
「うお!?
「おや、時子殿はもうお休みか」
「あ、ああ。私たち二人であとで寝室に運ぶから気にしないでくれ。な? 災禍」
ジトッとした視線を天音に投げてから、災禍は1オクターブ高い、よそ行きの声でライブラリーに話しかけた。
「それにしても、ライブラリーの料理はどれも絶品ねっ。よかったら一、二品作り方を教えてくれないか?」
「先代の秘書を務めていた貴女にお褒めいただくとは光栄だ。喜んでお教えしよう」
「そそ、それはまた今度にしてくれないか。実は災禍に大事な話があってな」
「ふむ・・・・・・・・・・・・なにやらお邪魔のようだから、私は失礼しよう」
ライブラリーは空気の読める男である。
妙にそわそわしている天音と、そんな天音にやや憮然といった表情を向けている災禍を見て、出来たての料理を盛った皿を座卓に置くと、その場を退散していった。
「・・・・・・はぁ~~~~~」
「そ、そんなでかいため息をつくなよ。私だってお前に相談をするのは苦渋の決断なのだ」
時子を眠らせてまで、相談することといえば小太郎関連のことに決まっている。
「で、一体何なの?」
天音は座卓にガシッと手をかけ、災禍に頭を下げた。
「現状、若の寵愛を一番受けているお前に無理を承知で頼むッ。若と私の仲を取り持って欲しいのだ!!!」
あまりにもストレートな物言いに災禍は思わず固まり、目を丸くした。
「こ、このくらいの頼みは聞き入れてくれてもいいはずだッ。私が以前、“宗家の血統存続のために我ら従者三人の内、誰か一人が若の胤を身に宿すべきだ”と提案した時に、“当主が五車学園を卒業するまではこの件は保留にするべき”という時子の意見にお前は賛成しただろ」
「え、ええ」
「大体なんでお前はあの時、時子の味方をしたんだ・・・・・・私の方針が通ればその役目にお前を推薦するつもりだったのに・・・いや、それはまあいい。過ぎたこと――」
「ちょっと待て」
「ん?」
災禍は手に持っていたグラスの酒をグイッと飲み干し、咳払いをするとまじまじと天音を見つめた。
「あ、あなた、身籠もり役に私を推薦するつもりだったのっっ?」
今度は“何をそんなに驚いているんだ”とでもいう風に天音がジッと災禍を見つめる番だった。
「そりゃそうだろう。血を絶やさぬように近親婚もやむなしという忍の因習が根強いとはいえ、時子は論外だ。未熟なこいつが執事の大役を務めながら御子の子育てを兼任できるはずがない」
「んぅ・・・ふふ。はい、約束です・・・・・・いつか私を、時子を、お嫁さんに・・・・・・えへへ、ムニャムニャ・・・・・・」
とんでもない寝言が聞こえてきたので、災禍と天音の視線が幸せいっぱいの夢を見ているのであろう時子の赤ら顔に集中する。
「な? 昔からこいつはすまし顔で厳しいお目付役を演じてはいるが、本音は若の寵愛を独占して甘えたい一心なのだ。第一子を身籠もりでもしたらどうなるか分かったものじゃない。任せるわけにはいかんだろう」
「な、なるほど(その点は私たち二人も似たようなものじゃないかと思うが黙っておこう)」
ボロクソに言われているとはつゆ知らず、眠り続ける時子を尻目に天音は持論を展開し続ける。
「かといって私も無理だった。若が精通を迎えられた当時はまだ私が五車と敵対することをやめて宗家に帰参したばかりの頃。リスクが大きすぎる」
「冷静な判断ね(そういう判断ができるなら執事の役を巡って時子といがみ合うのも止めたらいいのにと思うが、これも今は黙っておこう)」
「若のこと、お家のことを考えれば、あの時の適任者はお前しかいなかったというだけのことだ」
そこまで言うと天音はグラスの酒をあおり、一息ついた。
「――ってそんな過去のことよりも今のことだ!」
「ええと・・・つまりその、若様の女になりたいということ?」
「いや違うッ。私だってくノ一だぞ。そんなことは頼まない。い、一応、私も若と肉交は結んではいるのだ」
「あら、そう」
しれっと相づちを打つが、冷やりとした塊が身の内を通り抜けていく。
小太郎を独占したいという気持ちは時子だけではない。災禍とて同じだ。
「ただ・・・・・・ただな? 関係は一夜限りのものでな・・・・・・それ以降、若の態度がすごく余所余所しいのだ。さ、避けられているといってもいい」
「・・・・・・そういえば」
災禍は年末に天音がふうま屋敷に戻ってきてから、小太郎と言葉を交わすところを何度か見ているが、小太郎の様子が妙にぎこちなかったのを思い出した。
「お前と時子は、今年からはもう、何度となく若と体を重ねているんだろ・・・」
「ま、まあ・・・・・・ね」
「たいていは若の方から求めて来られるのだろう?」
「・・・・・・そ、そうねぇ」
「何故だ、何故私のことは求めてくださらないのだろう・・・・・・」
「それは、普段あなたが政府機関に出向していて五車にいないから・・・・・・」
「いやそれだけが理由ではないはずだ。メールなどのやりとりもすごく素っ気ないし・・・・・・もしかすると、いやもしかしなくても私は、若に、嫌われてるのか?」
段々と涙声になってきた天音を見て災禍は慌てた。
「若様の不興を招いた原因に思い当たることはないの?」
「ない、無いはずだ・・・・・・最初で最後のあの夜も、その、すごくよかったはず・・・・・・だし」
「・・・・・・」
「ハッ!? もしかして若の方はそうでもなかったのか?? わ、私には若の性欲を駆り立てさせるほどの魅力がないッッ!? 雑魚か?? 雑魚マンなのか???!??!」
「落ち着きなさい。若様の態度が急変したのはその夜以降なんでしょ? 一体あなたどういう風に若様と閨を共にしたの?」
「そ、それは・・・・・・段取りは完璧だったはずだ。まず夜の学園の教室に若をお連れしてだな」
「ふむ?」
「若の素行や女性関係をリサーチ済みだった私は、若の女癖の悪さをまずは咎めだてた後、性欲の発散なら私が引き受けると申し立てたのだ。その、普段時子がやってるような感じよりもさらに厳しい態度と言動でな」
「・・・・・・それから?」
なにやら雲行きが怪しくなってきたがとりあえず続きを促す災禍。
「当然、若は反発する。普段、時子と違って臣下の礼をつくしている私がそのような高圧的な発言と態度をとったので逆上しておられたな。さらに私は『動転輪*1』で若の動きを拘束し――」
「は?」
「私との性交を拒否する若に、まずは強制的な手コキで射精していただいて――」
「待て天音。それではまるで逆レイプではないかッ」
思わず敵と相対している時のような口調になって突っ込みを入れる災禍。
「これはすべて計算づくのことだ。若の素行や性的嗜好はすでにリサーチ済み。普段の気さくで大らかな性格とは逆に、性交時の若は逞しく荒々しい性をお持ちであることも把握しての行動だ。もちろんこの後、動転輪は解除したぞ。そして、これ以上無いくらいに昂ぶられた若は、私を徹底的に犯してくださった・・・・・・深夜までな♡」
「はぁ・・・あなたねえ・・・・・・」
話を聞くにつれ、ふうま天音がセックスにおいて、ケタ違いの被虐嗜好の持ち主であることに災禍は気づいた。
そして、男女の色事に関して相当ズレた感覚を持っていることも。
(無理らしからぬこと・・・・・・か? 時子が聞いていなくて本当に良かった)
ふうま天音の生い立ちは特殊だ。
その強力すぎる邪眼を恐れられ、親の愛情を得られず、幼少期から先代ふうま当主・弾正の元に預けられた天音は戦いに明け暮れる日々を過ごした。
敵からも味方からも『悪鬼羅刹』『山犬』などと恐れられ疎まれたほどの戦闘狂だった。
そして運命のあの日。
密かに父と慕っていた主君・弾正を守れず、逆に救われた彼女は生まれ変わることを決意する。
それまでの行状を改め、戦闘以外の知識を必死に学び、ふうま宗家の執事の役割を担ったのだ。
その苛烈な生き方は弾正の死後も、ふうま忍の残党として戦うことで四年前まで続いたのだ。
おそらく同志はいても、友人と呼べる者も存在しなかったのではないか。
彼女の日常生活や男女関係に対する感性が歪むのも仕方が無いことなのかもしれない。
(案外、時子にいつも噛みついているのも天音なりの友達感覚なのかもしれないな。本人は絶対否定するだろうが)
宗家の血統存続問題に関してあれほど冷徹な判断が出来るのに、主の寵愛を受けるために行ったアプローチの仕方は、好きな子を思わず苛めてしまう子供以下ではないか――と、災禍は内心呆れた。
しかも本心は自分が苛めてほしいときてる。ややこしいことこの上ない。
「では・・・・・・・・・・・・私のやり方は間違っていたと」
プルプルと震える天音。
「これ以上無いってほどの悪手。大悪手よ。あなたは時子とはまた違う信頼を若様から得ていたのに・・・・・・台無しじゃないの」
「え、どういうこと・・・・・・」
「あなたが若様と再会した四年前。あの頃は若様の心が一番曇っていた時期よ。物心もつき始める頃、同年代の者が忍法に目覚めてゆく中、邪眼に開眼せず、対魔粒子も活性化しないため、一門の者達から脆弱と蔑まれ、軽蔑の目に耐えられなくなっていた時、若様はあなたと出会った」
「う、うむ」
「ふうま抜け忍衆を己の私兵として支配下に置いた鉄華院卍鉄に対し、若様と力を合わせて立ち向かい、勝利した」
「さ、最後は佐郷に助けてもらったんだがな」
「そしてあなたは若様を仕えるべき主と見定め、従者となった。かつてのふうま宗家の懐刀。戦闘において最強の邪眼ともされる『動転輪』の使い手が、自分に忠義をつくしてくれる――当時の若様がどれだけ救われたことか」
「嗚呼・・・・・・若・・・・・・」
「天音、あなたに対しては憧れに近い感情と親愛を若様は感じていたはずよ。なのに、その女が邪眼を使えない自分に対して邪眼を使って体を拘束し、臥者の流儀に則った行為にケチを付け、屈辱的なセックスを強いた。これ、どういうことかおわかり?」
「・・・・・・」
天音は無言で手酌して酒をあおった。
いつの間にか時計の針は進み、新年を迎えていた。災禍も天音も相当な深酒をしていた。
「ど、どーすればいいんだぁ」
「とりあえず若様が初詣から帰ってきたら、謝罪して、ついでに自分がどーしよーもないドMだってこともぶちまけちゃいなさいよ。若様はお優しいから、あなたを受け入れてくれるわ・・・・・・多分」
「災禍、お前、一緒にイテクレ・・・」
「な、なんで私を巻き込む――」
「私は知っているんだぞぉ。お前、時子を交えて3Pまでしただろう?」
「なっ?」
「時子はよくて私と一緒はいやなのかよぉ」
「なんで知ってるんだ全く・・・・・・」
うだうだ言い合いながらも酒をグイ飲みする災禍と天音。
「うう~~んん・・・・・・ふぁ・・・・・・・・・・・・あ、粛正しないと♪」
傍らで時子は先ほどとは別の夢を見ているようで、不穏な寝言を漏らすのだった。
三人とも相当酔っ払っているんだと思ってください(((