森の中での戦闘
森の中に少女と騎士が追い込まれている。
追い込んでいるのは仮面姿の男達5人。軽装であるはずのローブ姿の男たちの動きは重い。
一方騎士はその重装備と少女をかばいながらの逃走のため、追手を振り切れずにいた。
「こいつら……なぶり殺しにする気か」
騎士が吐き捨てるように言うと、すぐ後ろにまで迫ってきた仮面の男が答える。
「いいや、違うね。おまえはどうでもいい。女は生け捕りにしろって言われているんでね」
男は答えながら手にした剣を振る。騎士はそれを受け流し、突き返す。
「いやいや、なかなかいい腕だな。さすが一級騎士」
男は胸に騎士の剣を受けたが、平然とした表情で
「残念ながら、外れだ」
胸を貫かれた男はそう言うと急に消えた。固い音と共に仮面が地面に落ち、ローブがゆったりと舞い落ちていく。
手にしていた剣はそのまま宙に浮き、少女に向かって飛んでいく。
「姫様!」
騎士はとっさに左手を差し出し剣を掴もうとする。その瞬間、剣は反転し、騎士の左籠手の継ぎ目に刺さる。
「ははは、ばぁーか。生け捕りにしろって言われてるんだから殺すわけないだろ」
仮面の男が騎士と少女の間に割り込む。そして一人が少女を追いかけ、残りの二人と3人で騎士を取り囲む。
「ま、ここらで終劇、ってところだ」
騎士はがくりと膝をつく。
「きさ……ま……ら……ゆる……さん」
「おーおー、魂喰らいの一撃で即死しないとはさすがだね」
男はそう言うと地面に落ちていた剣を拾い上げる。
「じゃあ、もう一つやったら、どうかな?」
男は手の中で剣を
「ま、そろそろ姫様も戻ってくるでしょ。そしたらその目の前でばっさ」
急に仮面の男の顔面が弾け、仮面が半分割れる。破片が男の目を貫いた。
「ぐあああぁぁ!」
男は獣の咆哮を上げ、そして消える。
「どういう仕掛けだがわからないけど」
幼い声が森に響く。
「あと二人、倒せばいいんだよね?」
銀髪の少年が、先程逃げた少女を連れて現れた。
「ガキ! てめえ!」
先程までの重い動きとは違い、かなり素早い動きで男が銀髪の少年に向かって突っかかる。
仮面の男は出足の鋭いローキックを放つ。そこにタイミングを合わせて少年が男の軸足の膝へ向かってサイドキックを叩き込む。嫌な音がする。
声にならない雄叫びを上げ膝を抱えて転がる男。そして男の存在は消え、仮面が落ちる。
残った男が指を鳴らすと落ちていた剣が男の手の中に戻る。
「覚えてろ!」
男はそう吐き捨てると逃走する。
「忘れました」
少年は涼しい顔で言うと騎士の元へ駆け寄る。
「大丈夫……じゃないですよね。今治癒します」
少年が騎士に手をかざすと掌から柔らかな光が騎士に向かって流れていく。
「え……《
少女はその光を見て息を呑む。
「しばらくしたらこれで歩けると思うよ。じゃあね」
少年はそれだけ言うと立ち去ろうとする。
「あ、待って!」
少女に呼び止められて振り返る少年。
「あの、私、プリシラって言います。あなたのお名前を教えて下さい」
「ファミリーネームを告げない自己紹介は信用しないことにしているんだ」
そう言うと少年は手を振る。
「少年、それは仕方ないだろう。彼女はフィグ・ディルの姫だ」
膝をついたままの騎士が言う。少年は目を見開くと少女を上から下まで見る。
「いやそれは失礼した。でもフィグ・ディルってだいぶ遠くない? なんでヴェイリンガーにいるの?」
少年の疑問に少女がうつむきながら答える。
「去年の半成人式で水の中級神の加護があるとわかりました。水神の加護は珍しいので中級でも救国の楯に
「ふーん……僕はシ……ヴィクター・ヴァレン。半成人式は来年だから二個下だね」
騎士はゆっくり立ち上がり、ヴィクター少年に敬礼をする。
「フィグ・ディル一級騎士ジェラルド・グローヴだ。救援を感謝する」
「で、ジェラルドさんは護衛として姫様を救国の楯に連れて行くところだった、と。馬車は?」
「真っ先に馬を殺されてな、壊されたよ」
ヴィクター少年はしばらく考え込む。
「お金ある?」
ジェラルドが頷くと、ヴィクターは小さくため息をつく。
「じゃ、付いてきて。家に馬があるから」