ヴァレン家の4人は無言で家に戻る。ヴィクターはそのまま部屋に入り、小さな箱に自分の着替えなどを詰め込み始める。コーディがその部屋に入ってくる。
「今着ているその服も持っていけ。うちにはもう下の子はいない」
「はい」
ヴィクターは作業の手を止めずに返事をする。沈黙が流れる。
ヴィクターが作業を終え立ち上がったところへちょうどベアトリスがジャネットとともに部屋に入ってきた。
「ヴィクター、元気でね」
「はい。母上も健やかにお過ごしくださいませ」
ヴィクターはジャネットに手を差し出す。
「姉さんのことは嫌いではなかったですよ。姉さんはどうだかわかりませんが」
ジャネットは怯え、ベアトリスの後ろに隠れてしまう。ヴィクターはため息をついてからコーディを見上げる。
「リック兄さんは畑……ですね。アーロン兄さんは?」
「部屋から出てこないな。まあ仕方ない」
コーディの言葉に寂しそうな微笑みを返すヴィクター。
「そうですか……最後の挨拶が出来ないのは残念です」
ヴィクターは俯いて小さくつぶやく。その後コーディをまっすぐ見上げ、姿勢を正す。
「父上、お世話になりました。ヴィクター・ヴァレンは
ベアトリスが取り乱し、ヴィクターに抱きつこうとした。ヴィクターは右手を差し出して、それを阻止する。
「あなた方に与えられる罰、それは家族の再構築です。難しいですよ。7年掛けて壊した家族です。7年で戻れば上出来じゃないでしょうか。そして、そこに私がいてはならない。おそらくこれは、神たちが仕組んだことの一つなのでしょう」
ベアトリスは大粒の涙を流す。コーディはずっと眉間にシワを寄せたままヴィクターを見下ろす。
「ヴィクター。おまえは、いったい、何者だ?」
「ヴィクター・ヴァレン。コーディ・ヴァレンとベアトリス・ヴァレンの子。加護なし。今はそれ以上でもそれ以下もありません」
「
「はい」
コーディは天を仰ぎ、その後再びヴィクターを見下ろす。
「私はなぜこんな試練を受けねばならぬ、我が子はなぜこんな不幸にならなければならぬとずっと悩んで生きてきた……それは無駄だったのだろうか?」
「神はその人が耐えられる試練を下します。ヴァレン家は何らかの理由で選ばれたのです。その試練の結果がどうなるかは今はわかりません。あるいはずっとわからないままかもしれません。神の考えることなど我々が理解できようはずもありませんし。なれど、人として生きることはまた別ではありませんかな、父上」
ヴィクターはスラスラと答える。しばらくコーディは考えた後、ため息をついてから答える。
「……そうだな。神の考えることを思い悩んでも仕方のないことだ。今は前を向いて進むことにしよう。ヴィクター、すっきりしたよ。
コーディが差し出す手をヴィクターは握り返し、微笑む。
「はい、また、です。父上」
その後、ヴィクターは両手を開いてベアトリスに向き直る。
「また、です。お母様」
ベアトリスはヴィクターを抱きしめて慟哭する。ヴィクターはその母の背を優しく撫でる。
「家族というものは、いいものですね」