エドウィンに連れられヴィクターは210号室に移動する。エドウィンがドアをノックする。
「エドウィン・パーシヴァルだ。新規同室者を連れてきた」
「はーい」
女性の声の返答にヴィクターはエドウィンを見上げる。エドウィンはヴィクターを見て、ため息。
「ちょっとまってください! イェリーナさんちゃんと服着て!」
別の女性の声がする。
「えーいいよ面倒くさい。減るもんじゃなし」
「羞恥心が減ります!」
「んなもんもともとないから気にするなって。エドウィンなら紳士だから大丈夫だし」
ドアが開く。緩いシャツと下着姿の長身、金髪のロングウェイビーヘア、碧眼女性が立っている。
エドウィンは視線を外し、ヴィクターを指差す。
「イェリーナ・フェデリシア・クァローリン、ヴィクター・ヴァレンだ。最年少の楯。あまりいじめるなよ」
エドウィンはヴィクターを見ながら言う。
「ヴィクター、彼女はイェリーナ・フェデリシア・クァローリン。9年生。アルデカーンの男爵家の三女だから失礼のないようにな」
イェリーナはしゃがみこんでヴィクターと視線の高さを合わせる。
「あら、美少年ね。イェリーナよ。イェルって呼んでね」
「ヴィクター・ヴァレンです……」
ここでヴィクターは視線をそらす。
「挨拶の途中で視線をそらすなんて失礼よ?」
イェリーナはヴィクターの顔を両手で挟んで向きを直す。ヴィクターは目を閉じている。
「あの、イェリーナ・フェデリシア・クァローリンさん」
「イェル」
「……イェルさん」
しばらくイェリーナは考え込んでから返事する。
「そうねー、イェル姉さんのほうがいいかしら」
「いやその……イェルさん」
「んもう、しかたないなあ。なあに、ヴィクター?」
「胸、見えてます……」
ヴィクターが小さく指摘するとイェリーナはケラケラと笑う。
「いいもの見えた? なんなら吸う?」
ヴィクターはイェリーナの手を振りほどき、エドウィンの後ろに隠れる。エドウィンは盛大なため息。
「イェリーナ・フェデリシア・クァローリン、下がってくれ。ヴィクターが怯えている」
「かわいいなー」
イェリーナが引っ込むとエドウィンはヴィクターを部屋に押し込む。
「ま、頑張ってくれ。この部屋にはあと二人、アイノ・ヴェステルとマリー・クラレンスという女性がいる」
すがるような瞳でヴィクターはエドウィンを見上げるが、彼は首を振ってため息をついてからドアを閉じる。
「骨は拾ってやる」
部屋にはベッドが4つ。ベッドに下に引き出しが設えてある。あとはライティングデスクが一つ。
「ヴィクターくん、正装だねえ」
イェリーナがヴィクターの服装を見て言う。
「え、ええ。半成人式からそのまま来ましたから」
「んじゃ、紹介しましょうかね。あたしが仕切っていい?」
イェリーナが同室の二人に聞くと、ふたりとも頷く。
「あっちの黒髪ぱっつんの平らな子がアイノ・ヴェステル」
背中を丸めたボディのメリハリの薄い女の子がヴィクターに会釈する。
「そっちのブラウンのポニーテイルのロリ巨乳がマリー・クラレンス」
「誰がロリですか! 背低いの気にしているのに!」
そこでイェリーナはふっと目を伏せる。
「なんであたしたちここにいるんだろうね。種族神下級の加護しかないのに」
怒っていたマリーもそれを聞いて俯く。
「僕なんか加護なしですよ」
ヴィクターはニッと笑いながらイェリーナに右手を差し出す。
「え……?」
「加護なしです。でもここにいます。ここに来れたってことは、きっと、ちゃんと理由があります。大丈夫」
イェリーナはヴィクターの手を取るとそのまま引っ張り、抱きしめる。
「なんだろ、なんかすごく安心できた。ありがとう、ヴィクター」
「もごむごふご!」
ヴィクターは豊かなバストに包まれてくぐもった声で抗議する。やっとのことで抜け出す。
「イェルさん、一応僕男なんです。もう少し気を使っていただけるとありがたいのですが」
「えー……だって可愛いんだもん。抱きしめたくなっちゃう」