二人は大きな建物に着く。
「ここだ。入って奥にある受付で名前を言えば後はやってくれるはずだ」
「はい、ありがとうございます」
ヴィクターはエドウィンに頭を下げると建物の中へ入っていく。
建物は2階建てで、入り口は吹き抜け、壁に階段が設えてある。奥にカウンターが見える。
ヴィクターはそのまま奥に進み、カウンターに立っている女性に話しかける。
「昨日よりこちらにお世話になっております、ヴィクター・ヴァレンです」
「ああ、あなたが!」
話しかけられた受付嬢がニッコリと微笑む。カウンターには他にも数人の女性が立っていて、ヴィクターの名乗りに一斉に反応する。
「ええと、もう今年度の講義はほぼ終わっているので、来年度の
分厚い紙の束を取り出し、ヴィクターに渡す。
「じゃ、これから説明しますから、必要ならメモを取ってください。メモ用の紙とペンはそこにあります」
まずシラバスを読んで、どの講義を取るかを決めてください。決定したら履修計画表に記入します。この履修計画表は新年度開始1週間までに提出の義務があります。
履修した講義の評価は担当教官によって行われます。評価は特S、S、A~Eの7段階で、Eは不合格です。Dは条件付き合格で、追試が必要と評価されたものになります。
講義によっては前提講義が必要で、この場合C以上の評価が取れていない場合はその講義を取ることができません。履修計画に書いてもいいですが、前提講義未履修ということで評価は行われないのでもったいないことになります。
特Sを取った時点で救国の楯を卒業することが許可されます。もちろん残って更に技能を磨くことも許されています。
救国の楯の学生は卒業時、救国機関のいずれかの組織に就職することが義務付けられています。この時、今まで取った講義の評価から各組織より求人票が届きます。
本人の強い希望で全く異なる職を選ぶことも可能ですが、あまりかけ離れた組織への就職は断られます。この場合、求人票を出した組織の間で協議が行われます。
特Sを取った講義によって求人票は自動的に振り出されるので行き先がないということはまずありません。例えば剣術で特Sを取れば救国の剣などの軍事組織から必ず求人票が発行されます。安心してくださいね。
もし10年生完了までの間に特Sが取れなかった場合、放校処分となります。この場合10年間の経費の一部の返済義務が発生します。このときには救国機関から民間の各種ギルドへの斡旋が行われます。真面目に働けば5年くらいで返せますからこっちも心配しないでくださいね。
以上が履修関係のお話です、大丈夫ですか?
次に各種行事の話をしますね。
学年初めの日に入学式、進級式を行います。そこから1週間は履修計画作成期間で講義はありません。その後履修が始まります。講義は前期後期制で、前記の終了は降雨期明けくらいに設定されています。
ヴィクター・ヴァレンさんはヴェイリンガー出身でしたっけ? そしたら豊作祈願の祭りの始まる前日までですね。
この間に取った講義によっては複数回集団での戦闘を学ぶための宿泊研修が行われます。シラバスを注意深く読んでスケジュールを組んでくださいね。
後期は……ヴェイリンガーなら収穫のための器具を準備するための鍛冶屋祭りがあるでしょう? あれの翌日から始まります。休みは60日になります。
後期には秋に地域住民との交流を目的とした交流祭が行われます。
そして後期終了は半成人式の一週間後。入試が始まりますのでそこで終了となります。
入学試験の翌日には成績には関係がない伝統行事として寮の部屋対抗戦
ここで受付嬢が固まる。
「なるほど。僕は入って1週間で洞窟踏破しなければならない、ということですね」
ヴィクターが肩をすくめて言うと受付嬢は頷く。
「ちょっとこれ理事長に文句言ってきます! 入って間もない7歳の子が、加護なし4人で洞窟踏破って!」
受付嬢はテーブルを強く叩く。ヴィクターは受付嬢の手に自分の手のひらを重ねてから微笑む。
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。今までだってなんとかしてきたんです。なんとかなります」