箱に棒が複数突っ込まれている。順にリーダーが引いて、マーシャに渡す。
ヴィクターも同じように引き、マーシャに渡す。
「6番入り口、16番目エントリー」
受付から洞窟に至るまでの地図を渡され、整理券が渡される。ヴィクターは3人のところに戻る。
「6番入り口だそうです。ここからだと少し歩きますね。行きましょう」
ヴィクターは地図を見ながら歩き、考え込んでいる。
「おそらく僕たちは終わりの方のエントリーです。露払いが終わっているので最初は楽……ただし、初戦はかなりキツ目の相手に当たる、と」
「なんで?」
イェリーナが不思議そうにヴィクターに聞く。
「人間の寮が5棟、他にエルフ、ドワーフ、リザードマン、ライカンスロープたちの寮が合計7棟、人間側は割と埋まっている印象がありますが、妖精族などはさほど埋まっているとは思えないので平均75%で見積もっています。そうするとざっくり計算して160チームくらい。そして地図には入り口が8番まである」
アイノとマリーはお互いの顔を見て、首を振る。
「さて、大雑把にでも作戦を考えましょう。僕が前衛をやります。突っ込んだらマリーさん、支援を。イェルさんは適当に魔術ぶっ放してください。僕が合わせます。アイノさんは全体を見てできれば指示出し、難しかったら治療に専念してください。大丈夫。僕たちは強い」
「ヴィクターくんは戦闘訓練してるの?」
マリーが問いかけるとヴィクターは頷く。
「ええ、少なくとも風邪っ引きアダム卿とやって勝てるくらいは」
「……アダム卿、健康マニア。病気なんてしない」
アイノがぽつりとつぶやく。
「でさー、あたし適当に魔術ぶっ放せって言うけど、そんなにできないよ?」
「そうですかね……? 中級はいけるでしょ?」
「やれないことはないけど、それ撃ったら倒れるよ?」
ヴィクターは足を止め、イェリーナの左手を取り、手の甲に人差し指で何かを書く。
「リン・アヴァ・デウィルの紋章です。今日一日は持つはず」
続いてヴィクターはアイノの左手の甲に何かを書く。
「サフィーヌ・キファ・オリ・エンディ。紋章の力は一時的ですが、でもあなたのポテンシャルを開くはずです」
マリーの手の甲にも何かを書く。
「アーグ・ヴァンデル。それぞれ今は閉じられている本来の力を一時的に開く紋章です」
「リン・アヴァ・デウィル?」
イェリーナが不思議そうに繰り返す。
「気にしないでください。ただ、その紋章は本物ですよ。
「6番入り口からエントリーするパーティ! ブリーフィングするぞ!」
入り口に立つ教官が大声を張り上げる。
「まず、パーティのエントリーは2分間隔で行う。
終了は3日後。期間が過ぎたら強制排出される。
ダンジョン内にはセーフティエリアがあるからどうにもならない場合はそこへ逃げ込め。
セーフティエリアは見りゃわかる。光る水晶が真ん中に置かれている。
あるいはこのあと渡す救助ホイッスルを吹け。強制排出される。
入り口は同じだがパーティごとに洞窟は異なる。よかったな! 小賢者に感謝と怨嗟を! 以上だ」
3人は顔を見合わせて、その後ヴィクターを見る。
「ちょっと計算外だけど……ま、なんとかなるでしょ」
「なるの? ヴィクターくんのご飯とか水とかどうするの?」
マリーの言葉に曖昧な微笑を返すヴィクター。
「マリーさんはバックパックにご飯と水、持ってますか?」
「一応3日分くらいは……」
「イェルさんもアイノさんも同様ですか?」
二人は頷く。
「なら大丈夫です」