「まず、マリーさん。良い判断でした。体の感じはどうですか?」
「……魔力の消耗をあまり感じないわ。前この二つのバフを短時間に発動させたらしばらく気持ち悪くなってたのに」
ヴィクターは小さく頷く。
「次、イェルさん。体調はどうですか? それと予想外の効果に驚いていますね?」
「体調は、悪くない。というか爽快なくらいなんだけど……なにあれ……いつもなら一つか、よくて二つ出るくらいなのに。それにあんなに爆発するなんて」
「爆発は詠唱がしっかりしていなかったからです。制御しきれずに余った魔力が周りに漏れたんですね。今回は間に合わないので爆発するものとして考えながら打ってください」
イェリーナは顔をしかめてうつむく。
「才能なしだからと甘えていたから……ヴィクターに怪我を……」
「治るからいいです」
ヴィクターはイェリーナの背中を軽くさするとアイノに向き直る。
「アイノさん、いい詠唱制御でした。短縮詠唱までできるとは」
「実家、治癒師。だからたくさん聞いてた」
「なるほど。いいですね。ただ短縮詠唱な分、効きがかなり悪いです」
ヴィクターは左腕を見せる。傷はふさがっているものの、紫色に変色し大きな傷痕ができている。
「短縮する場合音節省略をする代わりにアクセントでカバーします。こんな感じに」
水神への請願。ヴィクターの左腕の傷痕が消える。
「難しいようでしたら短縮詠唱ではなく正式詠唱で。大丈夫。僕は即死しませんから間に合います」
「ヴィクター、一ついいかしら?」
イェリーナがヴィクターの隣を歩きながら言う。
「なんでしょう?」
「この紋章があの結果を生み出している。違う?」
「そうですよ」
「あれは、何?」
しばらくヴィクターは考えこむ。
「私達は武・火・水・嵐・地・魔神の加護を得て武術や魔術を行使している。そして種族神はそれぞれの種族の保護者。種族神の加護がなければ生きていけないほど弱い――はたして、それは真実ですかね?」
「え?」
「加護があるとより強い術の行使がしやすい。それは経験則上の話であり真理であるのかな、と。今紋章で一時的に神との
彼らの前方にかなり明るい部屋がある。
「……ちょうどセーフティエリアがあるようです。少し話が長くなります。そこで休憩がてら説明しましょうか」
十人ほどの大人がゆったりと横になれるほどの広さのある部屋の中央に、輝く水晶が設置されている。
ヴィクターは水晶にそっと触れる。
「これは、なかなか。さすが小賢者」
ここでヴィクターは水晶に手を触れたまま三人に振り返る。三人はヴィクターの近くに腰を下ろし、見上げている。
「じゃあ、少し長い講義を始めようか」