※この作品はR-18です。

転生賢者は「加護なし」ですが、最強でした   作:nerd

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決着

 ヴィクターの体が紫色に輝く。

「身体強化か! 面倒な!」

「さてね」

 ヴィクターは前へ一歩踏み出す。その一歩で男へ詰め寄り、小剣で男の足を突く。

 男は刺された足を気にせずヴィクターの右手を殴りつける。

 ヴィクターは剣を手放し、そのまま前へ跳ぶ。

 ヴィクターは振り返り、左手を差し出す。左手から小剣へ雷撃が落ちた。

 電撃は火を呼ぶ。男の足が炎に包まれる。

 男は炎を意に介せず、刺さっている小剣を左手で引き抜き、そのままヴィクターへ投げつける。

 ヴィクターはそれを簡単に左手で掴む。

「少しは痛がれ化け物め!」

 ヴィクターの悪態に男は涼しげに答える。

「そういうものから超越しているからこその王だ」

「まったくもって律儀なものだ……少しは削らないとダメだったな、そういえば」

 ヴィクターは剣を鞘へ戻し、右手右足を前に構える。

 男は目を細めてヴィクターを見る。左手を前に右手を顎下に置き、握りしめる。

「私の何を知っているというのだね、少年」

「お前よりは詳しいと思う」

 男は一瞬で距離を詰める。

 ジャブ。ヴィクターは前手でパーリングしながら右へサイドステップ。右ジャブを返す。

 男はそれをヘッドスリップでかわし、右ボディアッパー。

 ヴィクターは左手で掴むが、止めきれずボディに刺さる。

「ぐっ」

 小さく唸る。

「言っただろう、王だと」

 ヴィクターは後ろに跳び、構え直す。

 男は再び距離を詰め、左ジャブを伸ばす。

 ヴィクターはヘッドスリップで回避し、前に詰める。前に出ている男の左足を右足で外側へ払う。

 そこに男は合わせて右膝を頭に叩き込む。弾かれ、飛ばされるヴィクター。

「惜しいな。天稟(てんぴん)はいい。だが、あと3年というところだな」

 男は顎に手をやり、吹き飛ばされたヴィクターに近寄りながらつぶやく。

「そうかもな。だが今の手札で戦うしかない。そういうものだろ」

 ヴィクターは立ち上がり、構える。

「気が合うな、少年」

 男はローキックを放つ。ヴィクターは始動にあわせて膝へサイドキック。

 男はそのまま振り抜く。男の膝に乗り飛ぶヴィクター。

「軽い」

「バケモンかよ……いくら軽くても膝に全力で乗ったんだぞ」

 ヴィクターは右手で額を押さえて首を振る。

「化け物ではない、王だ」

 男はゆっくりとヴィクターに近づく。男の顔が小さく爆ぜる。

「バカ!」

 ヴィクターの悪態。男はその魔力源のイェリーナを睨みつける。

 男の周りに魔力の塊が浮かぶ。10、20、30……。

「お前の相手はこっちだ!」

 ヴィクターはその魔力の塊を左手で払いのける。爆発し、焦げていくヴィクター。

「やめて死んじゃう!」

 マリーが悲鳴を上がる。

 ヴィクターは魔力の塊を払い除け続ける。

 ついには左手首から先が飛んでいった。

「よくやるな、少年」

「きれいな女性に怪我はさせたくないからな。だがありがとう。自分で魔力削ってくれて」

 ヴィクターが右手で指差すと、男の左肩が白く光る。その後上に振り上げると光はすぐに消える。

 男の左半身がぼろぼろと崩れていく。

「貴様! 何をした!」

「さてね」

 ヴィクターは右手で焦げた左手首を撫でる。淡い水色に包まれ、手が再生する。

「遅延爆発(ディレイドブラスト)は術者の集中が切れると暴発するからこうするしかなかったんだけど、まあちょっと痛かったよ……さて、彼は彼奴をどのように見ていたか、これでわかる」

 男の崩れていく左半身からグズグズと黒い液体が流れ出す。

「なるほどね……まあだからこそ撃退できるわけだが……それにしても、ね」

 ヴィクターが再び人差し指で男を指差す。男は収縮し、赤黒いコアになる。

「ここはアレンジされているな。面白い」

 ヴィクターはコアをつまみ上げ、くるくると裏表を観察しながら小さくつぶやいたあと、振り返る。

 ヴィクターの視線の先にはしゃがみこんでぐずぐずと泣いているイェリーナ、肩をそっと抱いているマリー、呆然とヴィクターを見ているアイノがいた。

「ん?」

「ヴィクターくん、おかしい」

 アイノがポツリと言う。

「まあね」

 ヴィクターは焦げて千切れた自分の左手を回収し、収納鞄に入れる。

「……なんで?」

「結構優秀な触媒になるんだよ」

「やっぱり、おかしい」

「壊れているからね」

 ヴィクターはイェリーナに近づく。彼女は気配を察してヴィクターを見上げる。

「なぜ、手を出した」

「だって……ヴィクターが」

 ヴィクターはしゃがみ込み、イェリーナの両肩に手を置く。震えるイェリーナ。ヴィクターはため息をつくと右手で肩をポンポンと軽く叩いた。

「助かった。ありがとう。さ、いくぞ」

 

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