新学期
「あー、あたしもう10年生なのよねー」
進級式を終え寮に戻ったイェリーナがぼやく。
「大丈夫ですよ。今年はなにか特S取れるでしょう」
ヴィクターが履修計画表を書きながら答える。
「そうかなーそうだといいなー。で、ヴィクターは何取るの?」
「体術、魔術、付与術、治癒術、剣術、槍術、心理学、錬金術、数学、諜報論の初級講座ですね」
「初級……ねえ」
「前提講座なんでこれ取るしかないんですよね」
「あたしはそのへんCで取っちゃったからなあ……どうしようかなー」
「今のイェルさんなら応用魔術系か大規模攻撃魔術あたり特S取れると思いますよ」
「んー、そうだなー、じゃあその2つと、魔術の初級講座も聴講生で取ろーっと」
「私も付与初級聴講しよーっと」
マリーの言葉にアイノも頷き、答える。
「あたしも治癒初級聴講登録」
「なんでですか……」
ヴィクターが首を振りながらため息をつくとイェリーナはヴィクターの隣に移動して頬をつつく。
「だってヴィクターと一緒に居たいんだもん」
しばらく黙ってイェリーナの顔を見て、その後マリーとアイノを見るヴィクター。
三人はうんうんと頷いている。
「僕はつまらない七歳……あ、八歳になるのか、そんな子ですよ?」
「
「そりゃ、イェルさんもそうじゃないですか」
「あたしたちはヴィクターのおまけだもの」
ヴィクターはため息一つつくと、履修計画表に向き直る。
「止めたところで聞かないんですよね。好きにしてください」
「うん、好きにする」
イェリーナはそう言うとヴィクターを抱きかかえる。
「なにするんですかー!」
柔らかな膨らみに顔を押し付けられているためかくぐもった声でヴィクターが反論する。
「だって好きにしていいって言ったじゃない」
「そういう意味じゃないですっ!」
ヴィクターはなんとかイェリーナの包容から抜け出すと、乱れた髪を軽く整える。
「まったくもう……あ、アイノさん、同じことしようとしないでくださいね。マリーさんも」
「……チッ」
アイノは小さく舌打ちする。マリーは両手を広げた姿勢で近寄っていたが、両手を下げる。
「いいなあ、イェル」
マリーが小さく言う。
「いいから、計画表書いてくださいよ、もう」
「もう、書き終わった」
アイノが答えたところでヴィクターは計画表にまた視線を戻しながら言う。
「じゃ風呂にでも行っててください」
「取るもの決まっているのに、何を悩む?」
「休みの間のスケジュール調整ですね」
「あー……がんばれ」
アイノはそう言うとヴィクターの頭を軽く撫で、部屋を出ていく。
ドアのところで振り返る。
「あ、風呂から戻ったら抱きしめる」
「なんでですか!」
風呂から戻ったアイノに抱きしめられぐったりとしているヴィクター。
ニコニコ状態のアイノ。
解放されたヴィクターはフラフラとベッドに向かおうとする。
「あ、お風呂入ってないのにだめだよ!」
マリーに阻止され、抱きしめられる。もう無抵抗のヴィクター。
「わかりました、風呂行ってきます」
マリーの腕の中でふがふがと答えるヴィクターを見て、ウンウン頷くマリー。
「じゃ、あたしもお風呂っと」
「……ちょっと過剰じゃないですか?」
ヴィクターはやっとマリーから解放され、その後文句を言う。
「だってかわいいんだもん!」
イェリーナの力説に頷く三人。
「……勘弁してくれよ……」
ヴィクターのつぶやきに不思議そうな顔のマリー。
「ね、ヴィクターくん、七歳だよね……?」
「言ったじゃないですか、大賢者の生まれ変わりだって。わりと体に引っ張られてますけど精神構造はおじいさんですよ」
ヴィクターはウィンクして人差し指を立てて左右に振る。
「あ! そういえばその話まだちゃんとしてなかった!」
イェリーナが声を上げる。
「そうですね、じゃ、風呂上がりにでも少ししますか」
ヴィクターはそう言い残して部屋を出ていった。