※この作品はR-18です。

転生賢者は「加護なし」ですが、最強でした   作:nerd

34 / 34
陰謀と、抵抗

「君が大賢者の生まれ変わりだとして、これを秘密にするのかどうか」

 アイノがヴィクターを見ながらつぶやく。

「別にどちらでも。どうにでもなります」

「そういうところ、よくない」

 アイノはヴィクターを抱きしめる。

「で、なぜ抱きしめるのです?」

「かわいいから」

 ヴィクターはため息で返事をする。

「満足しましたか?」

「だから、そういうところ」

 アイノの後頭部をイェリーナがひっぱたく。

「痛い。何をする」

 ヴィクターを解放し振り返るアイノの鼻先にイェリーナは人差し指を突きつける。

「ヴィクターくんはみんなのもの!」

「勝手に所有権を設定しないでください……」

 ヴィクターがつぶやくとイェリーナは人差し指の先をヴィクターに切り替える。

「却下」

「この件に関してはイェルに同意せざるを得ないわ」

 マリーが腕を組んで頷きながら言う。

「僕の人権はどこに……」

「あら、かわいいの前にはそんな些末なことどうでもいいのよ」

 イェリーナの言葉に力なく笑うヴィクター。

「些末……」

「いいこと考えた!」

 マリーが突然声を上げる。

「これから、ローテーションで添い寝!」

「賛成!」

 ノータイムでイェリーナが返事。アイノも頷く。

「どこが『いいこと』なんですか……」

 ヴィクターは頭を抱え、またもため息。

「あたしも、イェルも、アイノも幸せ。三方幸せのいいことだと思うんだ」

「僕の意思は……?」

「それっておいしい?」

「はい、おいしいので認めてください」

「やだ」

「即答かよ……」

 ヴィクターが頭を抱えているとノック音が響く。

「はい?」

 ヴィクターがドアを開けるとそこにはエドウィンが立っていた。

「すまんな、夜分遅くに。ヴィクター、下に降りてくれ。マーシャ殿が待っている」

「はあ……」

 気の抜けた返事を返すとヴィクターは上に一枚羽織っただけで部屋を出る。

「あ、さっきの話は却下ですからね?」

「いーやーでーすー」

 

「さっきの話ってのは?」

 沈黙を埋めるようにエドウィンが問いかける。

「まあ、バカな話ですよ」

 ヴィクターは階段を降りながらため息をつく。

「そうか。あの三人相手なら、まあ、なあ……ヴィクター、大変そうだな」

「仕方ないことですね。そういえば、マーシャ・ブレンダンさんの用件って聞いていますか?」

「いや。だが夜中に来るってことは、あまりいい話じゃないだろう」

「洞窟(ダンジョン)走破者(ストライダー)になんてなるんじゃなかった……」

 エドウィンは肩をすくめて苦笑。

「そりゃ、贅沢な悩みってもんだぞ」

 階段を降り、玄関の吹き抜けエリアに待つマーシャに二人は合流する。

「んじゃ、連れてきましたよ。俺は部屋に戻ります」

「待って。あなたにも関係のある話なので」

「は?」

 戻ろうとしたエドウィンをマーシャは呼び止め、座るように手で指し示す。

「3号棟寮長、エドウィン・パーシヴァル。部屋割りの命令書よ。三日以内に完了させて」

 羊皮紙一枚、テーブルの上を滑らせてエドウィンの前に置く。

「……学業とは関係ないんじゃないのか?」

「本来なら、ね。私もだいぶ抵抗はしたんだけど副理事長が」

 エドウィンは羊皮紙をつまみ上げしばらく眺める。

「ヴィクター・ヴァレンに204号室を与える、ね。ってことはケイトを押し出せ、ってことだな……確かに副理事長のサインだが。理事長はなんて?」

「条件付き賛成。どうせ一人部屋っていっても広いんだからケイト・ワーナーを押し出さず二人でしばらく部屋使え、だって。本当に何考えているんだか……」

 もう一枚、羊皮紙を滑らせる。

「ブレンダン家は僕をおもちゃか何かと思っているんですかね」

 エドウィンがもう一枚の羊皮紙を眺めている間にヴィクターは静かにマーシャに問いかける。

「いえ、決して、そんな!」

「とりあえず、この部屋割りはお断りします。どうせ聞いてるんですよね?」

『……なぜわかった?』

 マーシャの肩のあたりからフィルの声がする。

「わかるも何も、丸見えじゃないですかそんなもの」

 ヴィクターはつまらなそうに言うと席を立つ。

「正式にお断りしましたからね」

 ヴィクターが指を鳴らすと羊皮紙が二枚、細かな塵になる。

「な……お父様の付与済羊皮紙を無詠唱で消すなんて……」

「そんな命令書はなかった、そういうことです。それでは、おやすみなさいませ」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。