コーディはアーロンをロープで縛り上げ、担ぎ上げる。
ベアトリスはまだ泣きじゃくっているジャネットを抱き上げて家に向かう。
ヴァレン家が見えてくる。徐々にたんぱく質の焦げる匂いが強くなる。
コーディが勢いよくドアを開けると玄関に倒れているヴィクターの姿が見えた。
「ヴィクター!」
ヴィクターはコーディの大声にも反応を示さず、ぐったりとしている。
担ぎ上げていたアーロンを少し乱暴に降ろし、ヴィクターに駆け寄るコーディ。
ベアトリスもジャネットを降ろしてヴィクターに駆け寄る。
「ああ、ああ、ヴィクター! 返事をして頂戴!」
ベアトリスは取り乱しながらも詠唱を開始、焦げた衣服をまず
全身に赤いシダのようなパターンが刻まれている。そのパターンが少しずつ薄れる。
ベアトリスはここで魔力切れを起こし、詠唱が止まる。倒れそうになったベアトリスをコーディが支える。
「ヴィクター!」
コーディがヴィクターに向かって呼びかける。
「うるさいです……」
弱々しくも返事をするヴィクター。
「よし、帰ってこい、ヴィクター!」
ヴィクターの体が淡い青の光に包まれる。光が消えるとパターンは消え、綺麗な肌に戻っていた。
ベアトリスは呆然とその光景を見ている。
「水神さま……?」
「どうした?」
妻のつぶやきにコーディが尋ねる。
「今、水神さまの声が聞こえました。この子は愛されている、と」
「愛されている……だと……? 加護があれば、もしかして……」
「さあ、どうでしょうね?」
ヴィクターは突然目を開き、起き上がる。
「あー……着替えてきますね」
呆然としている両親を置いて、ヴィクターはスタスタと自分の部屋に入ってしまった。
しばらくして着替えたヴィクターが出てくる。
「大丈夫なのか……?」
心配そうなコーディにヴィクターは頷く。
「多分、僕よりお母さんのほうが危ない。魔力を使い切ってしまっている」
ヴィクターはベアトリスの手を取るとそっと念じる。
「
「世界には魔力が満ちあふれています。それをちょっとだけ誘導しただけですよ」
ヴィクターは母に微笑む。
「ヴィクター」
コーディが難しい顔でヴィクターを見下ろしている。
「これから、アーロンとジャネットは罰を受けなければならない」
「なぜ?」
「悪いことをしたからだ」
「僕はなんともありません。それで十分じゃないですか」
「おまえに怪我をさせた。すでに治ったからといって罪がなくなるわけではない」
ヴィクターは頷いた後、しばらくコーディとアーロンを見て、それからゆっくり問いかける。
「それは、僕がお父さんとお母さんを独り占めしていたからでしょう?」
コーディはヴィクターの問いに腕を組んだまま唸っている。
ベアトリスはおろおろとヴィクターとコーディを見て、その後ジャネットとアーロンを見る。
「それは、お前が……」
「加護なし、だからでしょ? でもね、二人はお父さん、お母さんと遊んだことがあったのかな?」
コーディとベアトリスはヴィクターを見て、その後俯いてしまう。
「兄さんや姉さんが罰を受けるなら、ヴァレン家全員が受けるべきだと思う」
ヴィクターはベアトリスを見上げながら告げると、コーディが声を荒げる。
「子どもが、何をわかった風に!」
「子どもだからだよ」
激昂したコーディが右手を振り上げヴィクターへ迫る。ヴィクターはその踏み込みに合わせて膝を正面からかかとで蹴っていた。
コーディは激痛に膝を抱え倒れ込む。
「ヴィクター!」
ベアトリスが声を上げる。
ヴィクターは意に介せず右手、右足を前に、軽く握って構えたままだった。
転がっているコーディがヴィクターを見上げている。
「おまえは……誰だ……?」
弱々しいコーディの声にヴィクターは構えを解いて答えた。
「ヴィクター・ヴァレン、あなたの息子ですよ」