※この作品はR-18です。

圧倒的な実力を有した者たちは、欲望の限りを尽くし、人類を蹂躙する   作:黒椿

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蛇馬鵜圧突苦

 午前十一時。俺は事件が起こった現場である近江大橋の近くに来ていた。すでに集まっている何人かの野次馬に紛れ、現場の近くまで歩く。

 

 

 現場となった河川敷は規制線で封鎖されており、当然ながら中に入ることは出来ない。だが、元より中に入るつもりはないので、それは構わない。俺のやるべきことは、事件の解決ではなく、犯人の殺害。警察に関わる価値も意味も毛頭ない。

 

「とはいえ、どうするかな……」

 

 犯人を断定するつもりならば、現場検証した方が楽なのは間違いない。警察の鑑識ならば、科学的な検証がせいぜいだろうが、俺ならばもっと違う検証が出来る。精液を残し、遺体をバラバラにしているのであれば、調べればある程度犯人の目星を付けられるだろう。

 

 

 だが、それをやるつもりであれば、あの規制線の中に入る必要がある。それが面倒なのだ。

 

 

 もちろん、あの規制線の中に侵入する方法はある。普通じゃない方法で、警察官の目も野次馬の目もすり抜けて入り込む。それだけの話だ。

 

 

 ただ、犯人殺害を目的としていることを考えれば、不必要な痕跡を残すのは避けたい。となれば、やはり、俺独自(・・・)の方法で調査するより他にない。ものっそい怠(だる)いが、証拠を残さない方が先決だ。

 

「朝から妙に騒がしいけど、何かあったの?」

 

「変死体ですって」

 

「いやだ、怖いわぁ」

 

「ほんとよねぇ。あのレイプ事件から、そんなに時間が経っていないっていうのに……本当物騒だわぁ」

 

 近くの主婦がそんなことを話しているのを聞いて、俺は内心呆れてしまう。知らない、ということの何と幸せなことか。

 

 

 しかし、連中は何も悪くない。ニュースでは変死体が発見されたとだけ報道されており、連続殺人とは無関係としている。その状態で件の事件と結びつけろ、という方が無茶な話だ。まぁ、どっか適当な推理モノの主人公とかなら感づいたりするのかもしれないけどな。

 

 

 そんなしょうもないことを考えながら、俺はさりげなく調査(・・)する。些細な綻びも見逃さないように、痕跡の一切を残さないように。

 

 

 ――ダメだな。軽く見た範囲でしかないが、今、この周囲で疑わしいと思える奴はいない。

 

 

 犯人は現場に戻る、などとよく言うが、どうやら、今回の犯人はそうではないらしい。あるいは、タイミングが合わなかったか。いずれにせよ、これ以上ここにいても仕方がない。

 

 

 そこで俺はとあることを思い出し、堤防から近江大橋の方へと向かい、そのまま橋を渡った。

 

 

 

 

 

 

 橋を渡り、歩いて十分ほど。俺は足四の西部にある歓楽街の一角に来ていた。巨大なスクランブル交差点を渡り、古びた電気屋の横を抜けていく路地裏へ進む。しばらく歩けば、薄暗い飲み屋街に出る。

 

 

 多数の風俗店や居酒屋があり、夜の街として賑わっているこの周辺だが、今はそのほとんどが店を閉めている。まぁ、現在時刻は正午前後なので無理もないわけだが。

 

 

 今、来た道は抜け道で、本来は逆方向、すなわち俺の正面にある道から来るのが正攻法だが、そちらもガード下に繋がっているというだけあって、治安はあまりよろしくはない。

 

 

 ましてや、この辺はとある暴力団が縄張りにしている土地だ。結構大きな規模であるため、他の組が絡んでくることは早々ないとはいえ、一般人にとってあまりいい場所とは言えない。

 

 

 

 

 

 

 そんな場所にわざわざ来たのは、俺なりの礼儀だ。俺は数軒ほど通り抜けたところにある居酒屋の前に立ち止まる。ここが俺の目的地だ。『Bar Shadow』と書かれた看板の横に下に降りる階段があり、そこから地下にある店に入れる仕組みになっている。

 

 

 昼でも薄暗いということもあって、普通なら躊躇しそうだが、俺は慣れているので、何のためらいもなく店の中に入る。すると、入口の近くの机の上に茶髪をモヒカンにした男が文字通り座っていた。こいつは草壁(くさかべ)永太(えいた)。あいつの手下の一人だ。

 

 

 俺が入ってきたのを見ると草壁はすぐに立ち上がり、笑みを浮かべて話しかけてくる。

 

「おっ、ユーキさんじゃないっすか。どうしたんすか?」

 

「あぁ、オミの奴と、ちと話しておきたいことがあってな」

 

「オミさん……すか。すんません、今、少し立て込んでて……とだけ、言っときますかね。建前上っすけど」

 

 ほんのわずかな陰りを感じさせながらも、ニヤニヤ笑うその顔で大体の想像がつく。やれやれ、相変わらずのようだな。つっても、前に会ってからそんなに経っちゃいねえけど。

 

「はっ。女連れ込んでマワしてんだろ。構わねえよ、どこにいるか教えろ」

 

「りょーかいっす。んじゃ、そこの奥にいるんで、ご自由に入ってください」

 

 苦笑しながら、草壁は個室に続く通路を指差す。まぁ、こういうのは珍しくも何ともないからな。向こうも慣れたもんだ。俺は右手を上げて、礼をすると、言われた通りの方向に進む。

 

 

 進むにつれ、女の悲鳴のようなものと、男たちの下卑た笑い声が聞こえてくる。

 

『やめてぇ! お願い! 謝るからぁ! もうやめてぇぇぇ!!!』

 

『なぁに、寝ぼけたこと言ってんだよ! ガキに生きる価値なんざねえんだろ!? なら、てめえみたいなゴミ女も生きる価値なんざねえに決まってらぁ!!!』

 

『いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!』

 

「はぁ……。今日も盛ってやがんな、おい」

 

 小さくため息をつきつつも、俺は扉を開ける。すると、予想通り、金髪のケバい化粧をした女が裸にされて、複数の男に囲まれていた。女の性器からは精液が漏れ、何人かの男たちが裸になっている時点で輪姦決定だ。まぁ、分かりきっていた光景なので、とくに驚きもせずに遠慮なく部屋の中に入る。

 

 

 男たちは扉が開いたことにこそ驚いたようだが、俺の姿を見て、安堵の表情を浮かべる。だが、それが見えていなかったのかどうか知らないが、女が目を輝かせて、こちらを見る。

 

「あ……」

 

 女は必死の形相で俺に注目している男たちの隙をついて、俺の近くまで来る。そして、俺の服を掴み、縋るように喚きはじめる。

 

「た、助けて! この人たちに……ぎゃっ!」

 

「うるせぇ。俺に触んじゃねえよ、ゴミが」

 

 適当に腹を殴ると女は撃沈する。髪を掴んで、そのまま引きずると、男たちが道を開けてくれる。そこを通って、女を元の場所に投げ捨てる。

 

「悪いな。うざったくて、ぶん殴っちまったけど、よかったか? 一応、怪我させねえ程度に加減はしたんだが……」

 

 俺の発言に紫色に染めた髪を刈り上げた大柄な男――鬼頭(きとう)良春(よしはる)が両手を広げ、おどけてみせながら、口を開く。

 

「いや、ぶん殴ってくれて構わねえさ。こいつは不倫で男を強奪した挙句、その夫婦の子供(ガキ)を痛めつけて殺した奴だからな。ちな、今回の依頼主は夫を奪われて、息子を殺された女な」

 

「おーおー、これまた随分なクズだな」

 

 俺は鳩尾を殴られて白目を剥いて気絶している女を見て、そう吐き捨てる。夫と子供を奪った挙句、子供を殺されりゃ、そりゃ恨まれて当然だ。

 

「ま、ガキにゃ存在価値がねえだの何だのほざいて、不倫してなお父親についてきてくれた健気な子供を殺すようなカスだからな。とりま、一通りマワしたら、バラして、依頼人に写真を送るつもりだ。それから……あいつの祭壇でも作ってやろうと思ってる……」

 

 なるほど。この依頼はこいつらにとって、ある意味の弔い合戦にもなっているということか。その証拠に他の連中も鬼頭の言葉にわずかにぴりつく。

 

 

 

 

 

 

 こいつらがこれだけピリついている理由。それは今朝の事件に関係している。今朝の事件の被害者、北峯(きたみね)木綿子(ゆうこ)はこいつらの仲間だ。だからこそ、こいつらはここまでブチ切れている。

 

 

 寄せ集めの不良たちで結成されたチームにしては、こいつらの仲間意識は強い。それ故か生半(なまなか)なことでは裏切らないし、裏切れば相応の報いを受けさせられる。そして、ひとたび抗争になれば、超絶した力を以て、敵を叩き潰す。まさしく、筋金入りのゴロツキ共だ。

 

 

 

 

 

 

 ……にしても、これはこれで一種の慈善事業となっているのが恐ろしい。純粋な人助けなどもするが、こいつらがメインとしているのは復讐代行だ。依頼人から依頼を受け、ターゲットへの復讐を代行する。それで結構な稼ぎを手に入れているらしい。

 

 

 そして、こいつらが復讐代行業者として相手にするのは救いようのないクズばかりだ。残念ながら、この国だけでも害虫は少なからずいる。そういった連中を全国から攫い、ここで襲って、永遠に悪さが出来ないようにいろいろと手を回す。それがこいつら、『蛇馬鵜圧突苦(ジャバウオック)』の仕事だ。

 

 

 もちろん、女に限って言えば、性欲を満たすために動いてるレイプ集団と言われても否定は出来ねえが、少なくとも、こいつらのやり方を否定することは俺には出来ない。世界には救えないクズが山ほどいる。そういった連中を処分するための害悪というものは必須だ。いわゆる必要悪ってやつだな。

 

「……っと、そういや、何の用だ? 伝言か依頼でも持ってきたのか?」

 

 そこで鬼頭がハッとした表情になって、そんなことを聞いてくる。あぁ、そういえば、こいつらに用事があって来たんだったな。このゴミカス女のせいで、俺も一瞬忘れてた。

 

「いや、純粋にオミと話しに来たんだよ。お前らにも関係のある話だから、あいつをここに呼んじゃくれねえか?」

 

「分かった。つっても、ちっとばかりピリついてるからな。あまり刺激すんなよ」

 

「……まぁ、努力はしよう」

 

「努力って……まあいいか。ちと待っててくれ。すぐに来るはずだ」

 

 そう言って鬼頭は上着のポケットからスマートフォンを取り出すと、少しばかり操作をして、再びポケットに仕舞う。

 

 

 それからすぐに黒髪を坊主頭にし、左顔面に波のタトゥーを入れた大柄な男が出てくる。この男がオミだ。フルネームは野村(のむら)影臣(かげおみ)。蛇馬鵜圧突苦のヘッドであり、俺とは腐れ縁だ。

 

 

 この男こそが蛇馬鵜圧突苦を一つに纏め上げたカリスマ。そして、他を隔絶する圧倒的戦闘力。こいつに勝てる者は数少ない。俺も真っ向勝負では分が悪いくらいだしな。

 

 

 凄絶なオーラと負の思念を可能な限り、抑えつけながら悠然と歩くその姿は、なるほど、確かに支配者に相応しい。

 

「よっ、どーしたよ? ユーキ」

 

 オミは露骨な作り笑いを浮かべて、そんなことを言ってくる。右手を上げて、気さくに話しかけてきてはいるものの、かなり苛立ってるのが分かる。長い付き合いだ。表面は取り繕ってても、煮えたぎる内面を見通すことなど造作もない。

 

 

 この男の状態で――いや、この空気の中で目的を果たさないといけないのか、と内心ため息をつきつつも、さっさと本題に入ることにする。

 

「無駄話は嫌いだから、本題だけ言っちまうぞ。今回の連続強姦殺人の犯人、そいつへの殺害命令が俺に出た」

 

 一瞬空気が凍る。そりゃそうだ。今の俺の発言は、今回の犯人は俺がやるから、お前らは手を出すな、と言っているのと同義だ。周囲に不穏な空気が流れるが、構わず続ける。

 

「あいつが何考えてるかは知らねえ。せいぜいが俺が潰せばあいつにとって都合がいいってことくらいだ。一応、事件の調査は進めちゃいるが、その前にここに顔を見せておこうと思ってな」

 

「……………………つまり、俺らは手出しすんな、ってことか?」

 

 地の底から響くような声でオミは言う。明らかにブチ切れている。周囲にいた連中がそれにわずかに息を飲んでいるが、俺は肩をすくめて、話を続ける。

 

「怒るのは分かるが、俺にブチ切れられても困るぜ。俺はあくまで筋を通しに来ただけだ。文句を受け付けるために来たわけじゃねえ」

 

「……………………」

 

「あいつだって、この依頼を俺に寄越したことの意味は分かってるだろうさ。いずれ、この借りは返す。それに加えて、犯人の死体をここに運ぶことを約束しよう。だから、今回のところは手を引いちゃくれねえか?」

 

 直後、オミは凄まじい殺気を俺にぶつけてくる。刺す、という言葉すら生温いほど凄絶な殺気。空気が歪み、近くにあったグラスの全てがピシリと音を立てて、粉々に砕けていく。俺の言葉に苛立ちを見せていた他の男たちが完全に怯えてしまっている。

 

 

 これを落ち着かせるのは面倒だし、やる意味もない。俺はただ無言で同等の殺気をオミに向けて放つだけだ。しばしの間、俺たちは睨み合いになる。やがて、オミは盛大にため息をつき、その殺気を仕舞(しま)う。

 

「……ちっ。わーったよ。……そのかわり、さっき言ったこと、忘れんじゃねえぞ」

 

「ああ」

 

 ひとまず、オミはこの件に納得した、と見ていいはずだ。問題は他。先刻は殺気のぶつけ合いで何も言えなくなっちまっていたが、だからといって、何も思うところがないわけではないだろう。

 

 

 俺は鬼頭をはじめとした他の連中の表情を窺(うかが)う。すると、鬼頭は先ほどまでのような恐怖とは違う感情で体を震わせていた。

 

「……昨夜(ゆうべ)、俺はあいつと一緒にいた……」

 

「あ?」

 

 突然語りはじめた鬼頭に俺は眉をひそめる。だが、黙って視線だけで先を促す。鬼頭は右手で頭を抱え、両眼から涙をこぼしながら、淡々と言葉を紡ぐ。

 

「一時くらいだったか……前日も徹夜やってたから、俺らは解散することにした。あいつは文句を言ったが、結局、そのまま別れたんだ……」

 

 鬼頭は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。他の連中も目を伏せ、悲しげな表情をしている。それを一通り視線だけで見回したところで、鬼頭は両手をどかし、涙に濡れ、血走った目で俺を睨みつけてくる。

 

「けど、それが間違いだったんだ! あいつの言う通り、徹夜で付き合ってやるべきだった! いや! せめて……せめて……最後まであいつを送ってやりゃよかったんだ! カンナなんかは、ショックで家に引きこもっちまってる! 許せねえ……許せねえんだよ!! 今回の犯人だけは、ぜってーによぉ!!」

 

 血を吐くような叫びだった。こいつの言い分は分かる。仇である犯人を殺すことを他者に委ねるなど到底納得できないことだろう。だが、同時にこいつが俺のことを忘れるくらいに冷静さを失っていることも容易に見て取れた。

 

「馬鹿野郎。忘れたのか? 鬼頭。確かに俺は犯人への殺害命令を下された。けど、肉体的に殺せ、とは一言も言われてねえ」

 

「……あ?」

 

 ほんの須臾の間、俺を睨みつけていたが、やがて鬼頭はその目を見開く。どうやら、ようやく思い出したようだな。俺の力を。

 

 

 だが、念のために俺の使命と言葉の真意を話しておくことにする。誤解する可能性は出来るだけ減らした方がいいからな。

 

「具体的な司令がない限り、俺にとっての殺害命令とは犯人に二度と舐めたことが出来ねえようにすること。それが達成できりゃ、残りモンはてめえらにくれてやる。俺がさっき言ったのはそういう意味だ」

 

「!」

 

「だからこそ、そいつは納得して引き下がった。そうだろ? オミ」

 

「あぁ……。本当は骨の髄まで俺らに手を出したことの意味を分からせてやりたかったんだけどな。あいつがお前にそれを任せたって言うんなら俺は引き下がるしかねえ。もっとも、最後のとどめはもらうがな」

 

 オミは両腕を組み、憮然とした表情で壁にもたれかかる。それに苦笑しつつも、改めて鬼頭たちの方を見る。

 

「確かに犯人に自らの手で思い知らせることが出来ねえのが納得できねえってのは分かる。だから、改めて約束しよう。どんな手を使ってでも、犯人をどん底に叩き落とすことを」

 

 これがせめてものこいつらへの礼儀だ。そして、同時に俺にここまでやらせた犯人への怒りが内心で燃えはじめる。ちょっと力がある程度で調子に乗っているだけの分際で俺に手を焼かせた償いは必ずさせる。そう俺は決めた。

 

 

 こいつらの了解が取れたと見た俺は鬼頭の目をジッと見る。すると、鬼頭は小さく息を吐き、両手を上げて、口を開く。

 

「いいだろう。俺はお前への委託を支持する。……すまなかったな。軽率な発言をしちまった」

 

「構わねえさ。大事な仲間を殺されりゃ、誰だってそんなもんだ」

 

 そう言って俺は鬼頭たちの間を通り抜けて、入口の方へと歩きはじめる。

 

「用件はそれだけだ。仕事の邪魔して悪かったな。せめて、少しくらいは手助けしてやるよ」

 

「ひっ!」

 

 俺は入口に向かうついでにどさくさに紛れて逃げようとしていた女の腕を掴み、そのまま乱暴に倒す。直後、俺の近くにいた奴らが女を取り押さえる。女は何やら喚くが、男の一人に顔面を殴られて大人しくなる。

 

 

 意識するまでもなく分かるほど露骨な動き。何の力もない素人風情が罪から逃れようとするなんざ、虫唾が走る。弱者は弱者らしく、大人しく運命を受け入れてりゃいいんだ。

 

「っと、やっべえ、気付かなかったぜ。いつの間に目を覚ましたんだ?」

 

「俺とてめえが殺気をぶつけ合った時だよ。そん時に気付いて、逃げる隙を探ってたってところじゃね? 知らねえけど」

 

 実際、オミとの睨み合いのあたりでこいつが妙な動きを始めたから、その時と見て間違いないだろう。視界の隅でチョロチョロされてうざかったが、ひとまずこのクズに逃げられるという事態にならなくてよかったことを喜ぶとしよう。

 

「じゃ、俺は帰るわ。またな」

 

「おう」

 

 軽く右手を上げて別れの挨拶を告げると、オミも同様に右手を上げて応えてくれる。それを見た俺は扉を開け、部屋を出た。

 

 

 その後、何やら物音が聞こえてきたが俺は一切を無視した。店の入口にいた草壁に軽く挨拶だけして、店を出た後、俺は犯人を突き止めるべく、飲み屋街を抜けた。

 

 

 

 

 

 

 街を抜け、人気のない路地裏に来た俺は携帯電話を取り出し、ウレに電話をする。伝える内容は先ほどオミとした約束のこと。言うべきことをさっさと言って電話を切った俺は再び歩き出す。

 

 

 さて、後は犯人を突き止めるだけだ。それが終わったら、様子見を少しだけして、さっさと始末するとしようかね。

 

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