圧倒的な実力を有した者たちは、欲望の限りを尽くし、人類を蹂躙する 作:黒椿
俺の前に現れたサイは体長十メートルは優に超えるだろう大きなモノだった。大きな目の瞳は赤く染め上げられている。口には牙があり、頭には一本の角。いずれも長く鋭く、見ただけで切れ味が優れているのが分かる。体毛は紺。だが、それらの毛も尖っており、アレに当たってもダメージを受ける可能性は高い。
さらに角から紫色の液体のようなモノが垂れている。おそらくは毒だ。下手すれば、かすっただけで即死する危険がある。見た感じはなかなか厄介そうな奴だ。
「グルルルル……」
「!」
刹那、サイがこちらをその赤い目で睨みつけたかと思った時にはすでにサイは俺のすぐ近くまで来ていた。凄まじい突進速度。並大抵の技量ではとても反応できない。その時点で俺とサイとの距離は三メートルもなかった。サイは一歩でその間合いを潰し、その鋭い角で俺の心臓を貫こうとしてくる。
「……それで終わりか?」
けど、俺は角を左手で掴むことでその突進攻撃を防ぐ。毒があろうと知ったことじゃない。どうせ、そんなもん効かない。俺は左手に力を込めて、角を握り潰すと、即座にサイの脳天に拳を叩き込む。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
凄まじい断末魔を上げて、サイは消滅する。それを冷めた目で見つつ、軽く両手をパンパンと叩く。すると、俺の右側の何もない空間からピロンと機械音のようなものが聞こえてくる。
「ん?」
そちらに目を向けると、何かの画面が空間に投影されていた。その画面には『Level up!』などと出ており、画面の下に棒グラフのようなものがあり、その上に『1→15』と数字が出ていた。それを見て、俺はこの世界に導入したレベルが他でもない俺自身に適用されていたことに気付く。
画面の右中央には青いボタンが光っており、それを押すと画面が消失する。その代わり、俺の視界の右上に『menu』と書かれたボタンが出現し、それを意識すると、目の前にステータスや地図などのさまざまなボタンが出現した。それぞれのボタンを意識すると、ボタンに応じた情報が視界に出現する。それを見て、俺はこの機能についてある程度把握する。
「チュートリアルのつもりか? ほんと、相変わらず、よく分からん力だ」
設定などを丸投げすると、どんな世界なのかを俺に理解させるためなのか、こうやって、死ぬほど簡単な何かをさせようとしてくる。まるで力に意志があるかのようだ。けど、力に意志があるなどという話は聞いたことがない。まぁ、単に俺が興味がないだけかもしれないが。
「本当はそれじゃいけねえんだけどなぁ……。ったく、本当何のためにあんなところで生きてるんだか」
まぁ、愚痴ってても仕方がないし、先を急ごう。
それから、十五分も歩けば森を抜け、街のようなものが見えてきた。いや、正確には街を守っているのであろう、巨大な壁と門が見えてきた、と言うべきか。
「結構しっかりしてる感じだな」
俺は遠目に大きな門を見て、そう呟く。あれだけ大きな門だ。中にある街も相応に立派なもののはずだ。つまり、人口が多く、お眼鏡に合う青髪ロング美少女を発見できる確率が高くなるということだ。
門についてはどうでもいい。門番に俺が止められるわけがないし、止められたところでどうとでもなる。だから、俺は何の躊躇もなく、門の方へと歩いていった。
――予想通り、門番に止められることなく、素通りして街に入った俺は改めて獲物を探す。
――ふむ。改めて見ると生活感があるな。
それが街を見た俺の感想だった。いつも使っている世界は俺が指定しなければ、誰一人動かないハリボテだ。しかし、この街は俺が何もしなくても、各々が独自に動いている。久しぶりに見る光景に、しょうもない感傷を抱いてしまった。
だが、それもすぐにやめる。そろそろ女が抱きたくなってきたからな。誰かよさそうな奴はいないかな。青髪ロングでなくても、最悪美女美少女なら何でもいい。……というと、今度は逆に選択肢が多すぎるか。何せ、さっきから見渡す限り、男女問わず顔立ちの整った奴しかいないから。
「お」
「きゃ!」
曲がり角で人とぶつかってしまう。声と感触からして女だ。向こうから飛び出してきた感があったとはいえ、ぶつかって倒したのは事実。謝って手を差し伸べようとしたところで、俺は動きを止める。
「……?」
俺の反応に少女は首を
俺の前に座り込んでいたのは、青髪ロングで、しかも、かなり整った顔立ちの女だ。ビンゴ。
ただ気を付けないといけないのは、ここはいつもの世界と違い、人々が普通の営みを行っている、ということだ。ここだけ聞いてると意味不明なこと言ってんな、俺。
とにかく、発見したからと言って、即この女を抱くのは違う。もちろん、無理矢理抱くことは出来るが、それは俺の望むところではない。
「……すみません。先を急いでるので」
そこで少女が
そこまで考えたところで、ふと俺はこの世界に来た目的を思い出す。
「……いけね。その場の勢いに任せて、肝心なこと忘れてたわ」
俺は何のためにこの世界に来たのか。力をひけらかして無双するためというのもあるが、最大の理由は女を抱くためだ。さっきのような場合では、シチュエーションなんか気にしないで、さっさと犯してしまうべきだった。それをせずに見逃したのは完全な失策だ。
けど、決めたことを早々に撤回するのもダサい。しかし、無理に我慢したせいで体が悶々として仕方がない。
――やむを得ないな。あの女に関してはマークしておくとして、違う女を適当に抱くとしよう。……何か本末転倒なことしてんな、俺。
「まぁ、こんなんだから、俺はいつまでも中途半端なんだろうな」
このままこの世界で適当に女を見繕って抱いてもいいが、それじゃ、いつもと同じだ。それなら、ひとまず、この世界は保存して、いつもの世界に戻った方がいい。もちろん、さっきぶつかった少女のことも記録しておかないとな。
「この世界に来て、やったことがサイ一匹ぶち殺しただけって……。さすがに救えなさすぎるだろ、俺」
自分の無計画さにほとほと愛想が尽きるが、これもいつものことだ。愚痴っていても仕方がない。こういう時は、さっさと行動に移すのがベストだ。俺は作業を瞬時に終わらせて、この世界の時間を停止させると、いつも使っている性欲発散用の世界へと旅立った。