※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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テスト期間中ですが、登下校の電車内で書き上げてしまったので出しておきます。ちなみに私は文系なのですが、唯一ある理系科目の化学で死にかけました。読者さんの中でテストが近い人がいましたら、早めに準備を始めることを強くお勧めします()


第三楽章 大迷宮の中の大迷宮

通路を抜けた先にあったのは、先の見えないラビリンスだった。

 

壁で区切られ上が吹き抜けとなっている、アスレチックパークなどでよく見る迷路そのままだが、その規模は冗談のようだ。見える先だけでも確実に一キロはあり、そこから先は雪煙で見えなくなっているのだが、横幅が確実に十キロメートルはあるので、おそらく奥行もそれくらいあるのだろう。

 

「方向は……あっちか。羅針盤があるから迷路が迷路じゃなくなってるな」

「マジかよ。創設者涙目じゃねえか。こいつがライセン大迷宮の時にあれば楽だったんだけどなあ。あいつ、わざとハルツィナに預けてたよな」

「ん……ミレディのことだから仕方ない。底意地の悪さは一級品」

「ですねえ。それにしてもあの時からもう数ヶ月ですか。時が経つのは速いですねぇ」

 

当時そこそこ苦労したことを思い出して語り合う俺たち。そんなことをしながらも俺は九九艦爆を十機近く飛ばして奇襲攻撃を仕掛けるて待ち構える魔物を蹴散らしていく。

 

遠くで爆発音が響き渡るのを感じながら俺たちは迷宮の中の迷路をテクテクと歩く。ミラーハウスのように壁には俺たちの姿が映し出されており、普通に手探りで探せばあっという間に集中が途切れてしまうだろう。

 

「どいつもこいつも良い性格してるよな。俺たちがイレギュラーな存在で本当に良かった」

「あら、珍しいわね。音也がイレギュラーな存在であることに感謝するなんて」

「でも分からなくもないよ。音也くんやハジメくんが居なかったらどの大迷宮も攻略出来たか分からないからね」

 

両手に侍らせている雫と露葉さんの言葉を軽く聞き流しながら音を聞いて気配を探る。と、その時である。氷壁の内側から何やら反応があった。

 

すぐに顔を引き締めると、露葉さんに合図を送って殲滅を任せる。露葉さんはニコリとそれはもう魅力的な微笑みを見せると、手にした和傘をクルリと回して右肩に軽く乗せた。

 

それと同時に氷壁の内側からブルータルモドキ、またの名をフロストオーガが五体ほど現れた。

 

「「「「「グォオオオオオッ!!」」」」」

「あらあら、大したことなさそうね」

「お、おい紅。助けなくても良いのか?」

「お前の目は節穴か? 露葉さんは雫の姉貴だ。お前が思っている数十倍は強い」

 

悠然と歩いてフロストオーガたちに近づき、自然な動作でフロストオーガを一体ヒョイと和傘の上に持ち上げる露葉さん。困惑顔のフロストオーガたちに構わず露葉さんは和傘を大道芸のようにクルクルと回し、目を回したことを確認するとポイッと空中に投げ捨てた。

 

そして軽く指を弾いて仕込み針を飛ばし、的確にフロストオーガの心臓部に突き刺して絶命させる。何とも鮮やかな動きだ。

 

「“爆雷の術”」

 

そして一言呟くと、和傘を空中に投げ捨てて錦糸のような目に見えないくらい細い糸をフワリと宙に浮かせてから忍術のトリガーを引いた。

 

途端に糸が絡みついたフロストオーガからバリバリバリバリ! と纏雷をモロに食らったようの音が鳴り響いた。原理は不明だが、糸を通して凄まじい電気を流したのだろう。

 

「ふう……こんなものかしら?」

 

降下してきた和傘を手にしてそんなことを呟く露葉さん。光輝や龍太郎は唖然としており、鈴に関しては「お姉様……」なんて言っている。精神状態がマトモなのは恵理だけかもしれない。

 

しかし、それだけ露葉さんは強く魅力的である。それは間違いない。俺たちの中ではティオの次に年長者であり、普段は変態なティオよりも落ち着いているため実質まとめ役のお姉さんだ。

 

その見返りとして姉妹丼を食べさせられるのはよく分からないが……案外ちゃっかりしてる所があるのだろう。

 

「どうやら注意すべきは氷壁からの奇襲攻撃だけみたいだな。まあ、気をつけていれば大した強さではないから瞬殺できるだろうが」

「多分、勇者くんでも単騎で行けるよ。そのぐらい弱いから」

 

露葉さんがさり気なく光輝に爆弾を落とす。彼女もまた、光輝のことは嫌いなのだ。彼が原因で可愛い妹がいじめられたともなれば仕方のないことだろう。

 

その後、唐突に氷の槍が突き出すトラップや、氷壁そのものが倒れてくるトラップなど様々な迷宮らしいトラップと、奇襲をかけてくる魔物共を突破し探索を続けること十二時間。

 

俺たちの目の前には氷で生成された巨大な両開きの扉がある突き当たりに出くわした。茨と薔薇のような花の意匠が細やかに彫られており、四つほど大きな円形の穴が空いている。

 

「なるほど、セオリー通りなら如何にもな穴にはめ込む鍵を持ってくると……」

「一端休憩しないか? 歩き始めてから既に半日が経つ。勇者(笑)の体力も限界だろ」

「だな。ここらで一休みと行こう」

 

ハジメの言葉に頷いて、俺は宝物庫から大きな天幕を取り出した。奇襲に備えて壁はないが、下は床暖房な上に、支柱それぞれを結ぶように結界と冷気を遮断する機能が施されているので、実質、室内にいるのと変わらないという優れものだ。

 

これを一人で作りきったハジメには脱帽である。大迷宮で休むが故に土足で上がるのだが、部屋の絨毯からコタツの中まで全て〝再生魔法〟が組み込まれた鉱石の欠片が裏地に貼り付けられており、常時浄化してくれるのだ。

 

「炬燵は最高だわあ……」

「ふふ、雫ったらほにゃほにゃになってる。でも視覚的には寒かったからね……暖まりたいわ」

「ん……同意。でもキバット、炬燵の中に潜り込むのは良くない。猫みたい」

 

早速炬燵の中へ入っていく雫たち。何人かは既に真冬の昼間に見られる幸せそうな顔をして、周囲の空気ごと癒しに来ている。

 

俺はと言うとシアを呼んで備え付けの台所に入り、料理を開始した。宝物庫から【海上の町エリセン】で仕入れた魚介類や野菜を取り出して魔法類を駆使しながら調理を始める。

 

「すまん、魚介類を頼めるか? 鍋を作りたいんだが」

「任せてください! 漬けダレはポン酢風味で良いですかね?」

「その辺は一任する。兎に角任せたぞ」

 

食べやすい大きさに野菜を切って味付けをし、栄養バランスの良いサラダをサッと作り上げる。さらに【湖畔の町ウル】で仕入れた白米を炊いてなるべく日本人らしい食事の準備が整ったところで、シアも準備が終わったらしい。

 

出汁を取ってから材料を放り込み、グツグツと煮立てる鍋の中を見ながら普段はあまりやらないシアとの雑談を始める。

 

「なあ、最近ハジメとはどうだ?」

「順調その物ですよお。最近はすっかり優しくなって、香織さん優先なのは変わりませんけど私にもしっかりと構ってくれますねぇ」

「香織優先なのは……仕方ないわな。元の世界にいた頃から相思相愛だったし」

「香織さんとは見ている私が熱くなるぐらいにラブラブですからねぇ。あ、でもハジメさんから『香織みたいに燃えるような気持ちではない。でも穏やかで愛しく思えるのがシアだ』って言われたんですよ!」

 

シアの言葉を聞いてなるほどと思う。彼にとっての二人は、太陽のように情熱的な気持ちを持っているのが香織であり、月のように優しく穏やかな愛情を持つのがシアということだ。きっと彼なりに考えて出した答えであり、覚悟も決まったのだろう。

 

「そうか。ようやく報われたなあ」

「はい! 諦めなくて本当によかったですぅ!」

 

誰が見ても惚れそうなぐらい素敵な笑顔を見せたシア。あの頃の、泣き虫で甘えることしかできなかった弱虫なウサギはもうどこにもいない。俺の目の前には、随分と逞しくなった頼もしいウサギがいるだけだ。

 

「良い顔するようなったな。本当に良かった。さて……おしゃべりはこの辺までにして、そろそろ鍋を持っていこうか」

「はいですぅ!」

 

鍋を魔法で浮かしてシアに笑いかける。シアもまた笑顔を作ると皿を重ねて先に台所を出た。天真爛漫を絵にしたかのような、明るく元気をもらえる声で「みなさ~ん、ごはんですよぉ!」と言いながら。

 

そんなシアを見て俺はクスリともう一度笑うと、今度こそ台所を後にしてお腹を空かせている雫たちに出来立ての鍋と白米を持っていくのだった。

 




次回は……いつになるかなあ()
未確定ですが、出せそうなら出しますのでよろしくお願いします

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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