※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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今回は恵理VS虚像の恵理です。今回も三人称視点ですがご了承ください。それと、今回はペルソナ3要素を多分に含みます()

ちなみに次回は勇者(笑)が出ますよ()


第七楽章 本心・隠していた気持ち

「来い! “アルテミス”!」

『くふふ……“アルテミス” やれ』

 

召喚された二人の神が放った矢がぶつかり合い、凄まじい爆発を巻き起こす。爆発の余波に吹き飛ばされながらも恵理は音也ばりの神憑りな受け身を取って跳ね上がり、空中でこめかみに拳銃を当てる。

 

恵理とは対照的な色をした“白い恵理”、虚像の彼女はニタリと笑いながら落ち着いて拳銃を同じようにこめかみに当てた。

 

両者同時に引き金を引き、辺りには二発の銃声が鳴り響く。それと同時に、二人の背中側には見た目も雰囲気も大きく異なる“神”が召喚される。

 

「やれ! “アポロン”!」

『任せるよ…… “ヘルメス”』

 

恵理が神弓を引いて空中から射れば、虚像の彼女はすばしっこい身のこなしで全ての矢を躱して宙に浮き上がった。

 

すぐさま恵理は“アポロン”を消して新しい神を召喚する。

 

「受け止めろ! “アテナ”!」

 

鏡の盾を持った戦神アテナを召喚し、その楯を手にして虚像の恵理が繰り出す攻撃を反射する。しかし数発は受け止めきれず、衝撃がもろに伝わって恵理が吹き飛ばされた。

 

「ぐう……!」

『くふふ……一体何時になったら認めるのかなぁ? もう既に、分かっている事じゃん』

「黙れ……黙れっ! 奏でろっ “オルフェウス”!」

『ああ、また強化してくれたんだね。そんなに死にたいんだぁ…… “ハーデス”』

 

琴から飛び出した大量の魔法弾を文字通り“死なせる”事によって被弾をゼロに抑え、今度は自ら襲いかかった虚像の恵理。力の差が徐々に増しており、恵理が何かを認めまいとしているのである。

 

再度“アテナ”を召喚して鏡の盾を取り出し、肉薄してきた虚像の己を受け止めた恵理が呻き声を上げる。

 

『分かっているんだろう? 認めない限り、君は勝てないんだけどぉ?』

「うるさい……!」

『どうしたんだい? 君は欲しい物があれば何処までも突き進む性格をしているじゃないか。以前も光輝くんを手に入れるために何人もの人を殺したよねぇ?』

「それはっ……そうだけど! そこまでして欲しい物なんて今は……!」

『あるよねぇ? とても身近に。あと少し手を伸ばせば届きそうだけど、絶対に触れられない距離にあるよねぇ?』

「……」

 

盾を弾き飛ばして至近距離で“死”の念が込められた魔法弾を発射しながらもニタニタと嗤う虚像の己に、恵理のメンタルは既に崩壊寸前である。

 

実は露葉以上に気持ちに蓋をしてきた恵理だが、虚像の己によって強制的に自覚させられ、さらにはこれまた蓋をした自分の暗い気持ちを悪魔の囁きによって剥がされそうになり、余計に精神を使っている恵理は反論する気力すらもなくなったのか、ついには受け答えを止めてしまった。

 

『紅のことを父親と重ねてみてるのは誰もが認知している。でも本当は、一人の女として見て欲しいんだよねぇ?』

「っ…… “アルテミス”!」

『でも、手の届かない所に居るんだよねぇ? 届きそうで届かない、もどかしい位置に立っているだよねぇ? それなら邪魔者全てを消してでも手に入れれば良いのに、君は本当に臆病なネズミちゃんだよ』

「くっ、射貫け! 〝月矢・集〟!」

『まだ認めようとしないのぉ? いい加減飽きてきちゃうよ。君の攻撃、まるでそよ風が顔を撫でてるぐらいにしか感じないんだよねえ!』

 

渾身の魔法も難なく弾かれて明らかに動揺した恵里に、彼女の虚像が“アポロン”を召喚して太陽のように輝く矢を発射した。

 

動揺した隙を狙って放たれた攻撃を恵里が躱せるわけがなく、呆気なく恵里は氷壁へと叩き付けられてしまった。

 

『一思いに殺してあげる。そうすれば紅のことで悩まず、あっという間に逝けるからねえ。感謝しなよ?』

「ぐっ……うう……」

『言い残すことは……ないよねぇ。あってもどうせ、君のことなんて気にしないよ。残念ながらね! “アポロン”、 〝巨星・滅〟』

 

虚像の露葉が最後に言い残したい事を聞いたのに対し、虚像の恵里はそれすらも聞かずに本物を消そうとする。彼女の容赦ない性格が前面に押し出されているとよく分かる。

 

当の本人はというと、氷壁にベッタリと血を塗りつつも己を死へと誘う攻撃が目の前にして冷静でいた。

 

(僕は、紅を父と重ねて見ている?)

(イエス。重ねて見ている)

(僕は紅に女として見て欲しい?)

(……イエス。見て欲しい)

(紅が欲しい?)

(イエス。全てを捨てても欲しい)

(その感情は独占欲? 恋愛感情?)

(どちらも。僕は両方の感情を持っている)

(僕は、紅のことが好き?)

 

自問自答を繰り返し、虚像の己が自分に投げかけた言葉を呑み込んでいく恵理。この土壇場で、自分の命が消えてしまうかもしれない状況で、恵理はようやく己の気持ちに気がついた。

 

「そう、だよ。僕は……大好きなんだ。紅のことが、大好きなんだ。こんな所で死んで……永遠にお別れなんて絶対に、嫌だ……!」

 

目の前に迫る“巨星”を見上げながら恵理がフラフラと立ち上がる。大量の血が流れ出したことによって心音がうるさいぐらいに鳴り響き、怠さは感じるが血の代わりに流れ出した魔力が刻一刻と力強くなっていく。

 

半ば灼熱の“巨星”に呑み込まれながらも、恵理は拳銃をこめかみに当ててニヤッと音也そっくりの笑顔を作った。そして、熱によって皮膚が溶かされるのを厭わず一言、しかし絶対の意思を込めて叫びながら引き金を引く。

 

「……“タナトス”!」

 

ドパンッ! バリイイイン!

 

とても幸運なことに、拳銃に内臓されていた“能力強化弾薬”が発射されて炸裂、恵理の全能力が一気に超強化された。

 

灼熱の巨星が風のように露散し、本来なら塵一つ残るはずのなかった恵理と、虚像の恵理ですらも見たことのない人型の何かが真っ直ぐ宙の一点を見つめている。

 

恵理が召喚した人型の何か“タナトス”は無数の棺桶を鎖で繋いだオブジェを背負い、飾り気のない一振りの刀を構える処刑人のような出で立ちをしており、顔には獣の頭蓋骨を模した無機質な仮面を付けている。

 

『それは……まさかっ!?』

「“タナトス”。ギリシャ神話で死そのものを神格化した神さ」

『冥界の支配者“ハーデス”とはまた違う。君の召喚した者は……そうか。生きる物全てに必ず訪れる、残酷な終わり。それを“確定”させるのがタナトスということか……』

 

音也への気持ちを改めて理解し、受け入れたことによって弱体化していくことに気がつきながらも恐れた様子で虚像の恵理が推測を並べる。

 

虚像は彼女自身であるが故に、理解してしまったのだ。恵理が召喚した“タナトス”の力が、どんなに強力で、この世の理にすらも干渉出来てしまうほどの影響力を持っているのかを。

 

「僕はもう逃げない。鼻から諦めて、自分の気持ちに蓋をするぐらいなら最初から全力で当たって砕けた方が何倍もマシだよ。二度と、自分の気持ちを飼い肥らせて暴走するなんていう愚行は犯さないためにもねえ!」

『そう、か。心は決まったんだねえ。今の君にはどんな言葉を言っても折ることは出来なさそうだよ。……分かった。次で終わらせよう。己の弱さとの決別、勿論できるよねぇ?』

 

虚像の恵理は“アテナ”を召喚し、何処となく儚い表情で最後の攻撃だと暗に宣言した。

 

対する恵理の表情は大して変わらない。強いて言うなら、爛々と光っている紅眼の輝き度合いがより一層増したぐらいだろう。

 

両者が睨み合い、耳に嫌というほど心音が鳴り響く。考えることは同じ。成すことも同じ。雌雄を決するのは僅かな緩みから生まれる隙を突けるかどうかである。

 

「……やれ、タナトス! “神踊・影”!」

『っ、アテナ!』

 

──ォォォォオオオオオオ!!

 

咆哮を上げながら真っ直ぐに突進したタナトスに対して僅かに反応が遅れた虚像の恵里は、咄嗟に鏡の盾に隠れながらも長剣を構え、何時でも迎撃できるように力を温存した。

 

ギリギリまで引きつけ、一撃目を盾で何とか受け止めたアテナは、反撃のために長剣を横に薙ぎ払ってタナトスの体を斬り裂いた。

 

確かに斬り裂いた。そのはずであった。しかし……。

 

『んなっ、消えた!?』

 

手応えがする前にタナトスは陽炎のように揺れたと思うと、禍々しい黒色のオーラを露散させながら影のように姿を消してしまったのである。

 

咄嗟の事態に虚像の恵里の心が焦りを感じ、何が起きたのかをある程度だが把握したときには、既にチェックメイトであった。

 

宙に浮いていたアテナがガラスのように砕け散り、虚像の恵里は胴体をズルリと滑らせて体が二分割されていた。

 

「“神踊・影”は死神の特性を存分に活かした魔法。本来なら攻撃された時点で苦痛を与えてからゼロ時間転移を好きな時に、何度でも繰り返せる物だけど……思ってた以上に体力がなかったらしいね。一回だけ転移して斬り裂くだけで精一杯だったよ」

『は、は。素晴らしかったよ。今の君なら、きっと……』

 

発動させた魔法がどんな物だったのかを聞かされた虚像の恵里は、満足そうな表情で空気中へと溶けていった。

 

タナトスもまた、恵里が体力的に限界だったのもあってガラスのように砕け散り、後には息を乱して座り込む恵里本人だけが残された。

 

恵里は遠くから聞こえる最愛の人とライバルの楽しげな笑い声を遠耳に捉えると、自身も笑みをこぼして這いながらもその声がする方向へ進むのだった。

 

 

その数瞬後、音也と露葉、そして恵里が鉢合わせしたのは言うまでもない。

 




アルテミス……表向きは月のように穏やかな性格を恵理がしているから。
アポローン……恵理が嫉妬深い所や激情を秘めていて、“熱い”部分があるから(こじつけ)
ヘルメス……頭が良く回って狡猾な部分があるから。
アテナ……反射したい→鏡の盾なら反射できるという理由。あとは単純に戦神だから使えそう。
オルフェウス……ヴァイオリンからの弦楽器繋がり。本当ならヴァイオリンの神様がよかった。
ハーデス……絶望を与えるため。冥界の神って強そうだから(クソみたいな理由)
タナトス……恵理が死を間近に感じ、幸運にも拳銃内に入っていた能力強化弾を身に撃ち込んだ結果、たまたま召喚できた。概念魔法の要素をほんの少しながら含んでいる。

恵理が神を召喚して己の力に出来るのは降霊術としての力が最上位であるからです。
降霊→(実は対話してから)使役しています。

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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