※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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みんな光輝のこと嫌いすぎじゃね?()
まあ仕方のないことだけど……実は書いてて自分もスッキリしたのは内緒です。原作を読み返していると尚更()
ちなみに一話にあれだけの感想が送られたのは初めてです。本当にありがとうございました!
今回は休憩に近いですので、サラッと流し読むだけでも大丈夫だと思う内容です。


第九楽章 理と人を超えた力

「さて、ここに留まる必要もないし行くか」

「紅……すまなかった。光輝のこと、殺させてしまって……」

「お前の謝罪なんて求めてねえよ。それに、今回に関してだがお前は悪くない。そんなに謝るな」

 

龍太郎の謝罪を軽く聞き流して俺は前を見る。やなり、同じように氷壁が溶けて出口が出現しており、その奥には強い魔法陣の反応を感じられた。

 

どうやら、次の部屋が終点らしい。精神的に中々の負担をかけさせられたこの大迷宮も遂に終わりの時が近づいているらしい。

 

「あれ? 音也くん……光輝くんの聖剣が再生してるよ」

「何だと? 再生……ふむ。念の為持っていくか。“聖剣”と付くぐらいだから何かあるのかもしれないな」

「ん……勇者の遺品?」

「そうなるな。元の世界に戻ったら彼奴の親に渡してやろう。お宅のお子さんのなれ果てとな」

 

氷壁の奥へ足を踏み入れながらそんなことを話し合う。軽く龍太郎と鈴の頬が引き攣っているのは気のせいではないだろう。

 

氷壁の奥をさらに進むと、そこには神殿のような物が広がっていた。

 

幾本もの太い円柱形の氷柱に支えられた綺麗な四角形の空間で、やはり氷で出来ている。今までの氷壁のように鏡かと見紛うような反射率の高い氷ではなく、どこまでも透き通った純氷で出来ているかのような氷壁だ。

 

そして、何より目を引くのが地面だ。ここに来るまで、ついぞ見なかった水で溢れていたのである。どうやら、この空間はそれほど低温ではないらしい。大量の湧水が流れ込んでいるようで、広い湖面のあちこちに小さな噴水が出来ている。おそらく、どこかに流れ出ていく穴もあるのだろう。

 

そして、そんな湖面には氷で出来た飛び石状の床が浮いており、それが向かう先には、巨大な氷の神殿があった。ちょうど、俺たちが出てきた側の対面だ。そこまで四角形の湖面に浮く氷の足場が続いているのだ。

 

「へえ……やっぱり解放者も人なんだな。流石に住処まで水が凍る空間で暮らすのは勘弁してくれってか」

「逆に何だと思ってるのよ……」

 

雫から貰ったツッコミはスルーして俺は氷の足場を使って神殿へと進む。特に何事もなく対岸へと渡ることが出来た。

 

神殿の入口は両開きの大きな扉になっており、そこには雪の結晶を模した紋章が描かれていた。解放者〝ヴァンドゥル・シュネー〟の紋章だ。特に封印などがされている気配はなく、力を込めて押せばすんなりと開いた。

 

「中はしっかり住処か……恐れ入るな」

 

そのまま適当に部屋を探していると、数分でお目当ての魔法陣を発見することができた。特に疑うこともなく足を踏み入れれば、何時ものように魔法が脳内に直接刷り込まれていく……はずだった。

 

「ぎっ!? ぐあああああああ!?」

 

唐突に、耐え難い頭痛が俺を襲った。見れば俺だけではなく、ハジメ、雫、ユエも同じように苦悶の声を上げながら頭を抱えている。

 

先に痛みから気絶してしまった三人を見やりつつ、俺は強引に足に力を入れるとフラフラとだが立ち上がった。

 

「お、音也くん。無理しないでね」

「つゆ、は。大丈夫だ。俺は何とかな。それよりも倒れてる三人を寝室に運んでやれ」

「わ、分かったわ。シアちゃん、香織ちゃん、ティオ、手伝ってくれるかしら」

 

いそいそとこの場を立ち去った俺の嫁たちを見送り、俺は今、何が起こったのかを整理する。

 

【変成魔法】を手に入れた。これは間違いない。現に、俺の脳内には変成魔法についての知識が入っている。

 

ならば、先ほどの凄まじい頭痛の正体は何か。その答えもすぐに理解できた。

 

今の俺には全ての神代魔法の知識がある。【生成魔法】、【重力魔法】、【空間魔法】、【再生魔法】、【魂魄魔法】、【昇華魔法】。そして、【変成魔法】だ。これらは全て、この世界における〝理〟を自由自在に操る魔法である。

 

それを前提知識にして、これまで手に入れた神代魔法の“正確な力の根元”について考えてみるとしよう。

 

「生成魔法は無機物に、重力魔法は星のエネルギーに干渉する。空間魔法は境界に、再生魔法は時に、魂魄魔法は生物の持つ非物質に干渉する。昇華魔法は存在するものの情報に、か。そして変成魔法は……有機物に干渉すると」

 

ここまでを理解して、俺はようやく新しく手に入れた力が何なのかを理解することができた。

 

かつてリューティリスは言っていた。全ての神代魔法を手に入れて一段階昇華させたとき、その人物は〝概念魔法〟を作り出す知識を得ることができる、と。

 

俺が先ほどまで感じていた頭痛は、概念魔法の知識を刷り込んだ際に膨大な知識を一気に脳が理解しようとしてオーバーヒートしたものということだ。それ以外に有り得ない。

 

「概念魔法、か。ようやく母さんと肩を並べられる資格を持ったということかよ。それにしても神代魔法はやはりぶっ壊れだな。人間が手に付けて良い領域を遥かに超えてるじゃないか……」

 

手にした力の強大さを改めて理解した俺は、誰も居ない空間で一人ポツリと零すのだった。

 

──────────────────

「なるほど……ある程度は理解したわ」

「手に入れた力はハジメとユエも同じだ。とりあえず、当分の間ハジメとユエで日本に帰るための概念魔法を作ってくれるらしい。俺たちは戦闘に使える物が出来るなら頼む、とのことだ」

「分かったわ。それにしても概念魔法ね……神代魔法は元から何処かおかしいとは思っていたけど、まさかここまでとはね」

 

一番最後に目が覚めた雫に概念魔法の知識とこれまで手に入れた神代魔法の説明をすると、飲み込みが早い雫はすぐに全てを理解してくれた。

 

なお、此れ等を説明している間、俺は雫に思いっきり抱き締められた状態である。女子特有の鼻をくすぐる匂いと、胸元に当たる二つの双山がストッパーの存在しない俺の理性をこれでもかと言うぐらいに刺激してくる。

 

「ところで、私が倒れてから時間はどれぐらい経過しているのかしら?」

「半日ぐらいだな。一応香織に診察してもらったが、特に体に異常はないらしい。起きてから少しすればいつも通り動けるさ」

「そう、了解よ。かなりキツい頭痛だったから、何が起きたのかと思ったけどね」

「そりゃ俺もだ。痛みなんて久しいからな。思わず気絶するところだった」

「そう言いつつも気絶しない辺り、音也らしいわね」

 

クスリと笑って雪のような白髪を揺らす雫。俺は彼女の白髪を軽く撫でると、聞きたかったことを思い出したので雫に尋ねることにした。

 

「そうだ。雫は虚像の自分に何を言われた?」

 

そう、雫が試練で何を言われたのかを知りたかったのである。

 

露葉や光輝の前例のからして、己の負の感情をぶつけられて心を病む、または病みかける事態が発生しているかもしれない。もしそうならば、早急に対応が必要だ。特に雫に関しては、一度心を壊してしまっているため、また心を壊してしまったら耐えられないと俺は思っている。

 

だが、俺の心配は杞憂だったらしい。雫はフワリと微笑むと、俺のことをより強く抱き締めて何があったのかを話してくれた。

 

「そうねえ……まずは人殺しと言われたわ。そして、重い愛情を持っていて音也が何時までも受け入れてくれると思っているの? とも言われたわよ」

「そりゃまた……」

「でも大丈夫。そんなこと百も承知しているし、仮に音也が逃げたとしても……私が地獄まで追いかけて捕まえるから」

「奇遇だな。それは俺も同じだ。雫が逃げたとしても、俺は絶対に逃がさない。お前はもう……心も体も俺の物だからな」

「そう言いながら、私が嫌だと言えば素直に解放してくれるんでしょう? 本当に優しいわね。悶え死んでしまいそうだわ」

 

二人きりの、甘い空間が部屋を包み込む。誰か一人でも足を踏み入れてしまえば、体中の糖分を吐き出してしまうぐらいには激甘な空間だ。

 

念には念を入れて部屋の入り口にはハジメ特性の錠前を付けているため、誰かが出歯亀しに来ることは出来ないが。

 

「……なあ雫。皆には、雫が起きてもしばらくはメンタルケアに勤しむと伝えている。これがどういう事か分かるな?」

「ええ。体を重ねることもメンタルケアの一つでしょう?」

「察しが良くて助かる。これはあれだ、概念魔法を発現させる前の補給みたいな物だ。下心はない。そういうことさ」

 

雫のことを抱き締め返してそんなことを宣う。そう、これは補給なのだ。決して、下心があって彼女のことを犯すわけではない。

 

何を言っても納得されないのは承知しているが、体を重ね合った物同士なら分かることがある。それは、お互いが一番近い距離に接することでとても安心し、疲れも取れていくのである。

 

「音也、少し雰囲気が変わったかしら? どんな音也も大好きだけどね」

「ああもう、本当にお前は可愛いな」

「ゃ……もう、いきなりはダメよ。最近はすっかり敏感になったんだから」

 

首筋にキスを落とすと、雫はピクリと体を震わせる。咎めるような表情が、また愛らしくて俺は雫の耳元に囁いた。

 

「言い出しっぺは雫だ。だから、俺は止まらない。止めて欲しいなら引き剥がしてみな」

「ぅ……音也、反則よ。そんなこと言われたら拒否できるわけないじゃない。元より拒否するつもりはなかったけど……それでも反則よ」

「ククッ……すまないな。反則ばかりのヴァイオリニストで」

 

反省は一切しない。必要すら感じない。そんな俺に、雫は軽くため息を付いたが、すぐに微笑むと彼女も俺の耳元に呟くのだった。

 

「なら、私も負けない。反則合戦は得意よ」

 

この後、滅茶苦茶ヤッた。数時間後に俺たちは、お互い肌をツヤツヤさせながら部屋を出るのだった。

 




ゼアムさんからとても面白い意見を頂いたので、何処かで必ず使用させてもらいます。他にも要望だったり“こんなの良くね?”みたいのがあればDMの方にお願いします。返信は返せなくても、必ず目を通しています。

次回は短かった氷雪洞窟編ラストになります。四ヶ月以上続いているこの作品も間もなく終盤に入りますので、最後まで見てくれると嬉しいです。

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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