その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
基本的に文章を変えることは少ないですが、連続した会話文の中に地の文を捻じ込んだり、気に入らない表現を変えたりはしてます()
「お、音也? さっき神域に向かったはずじゃ……でも、雰囲気が少し違う気がするわね」
「あー、なんて説明したら良いかな。俺は確かに君たちのことは知っている。だが、恐らく君たちの知る“音也”ではないぞ」
数ヶ月ぶりに音也のお母さんの姿を見たことで一時気が動転したものの、すぐに持ち直した私は、すぐ近くに控えていた“音也のような姿をした音也ではない存在”のことを見つめる。
姿形は確かに音也そっくりだ。纏う雰囲気も大部分が音也の物である。しかし、それでも微妙に彼とは違う部分が幾つか見受けられるのだ。口で説明出来る物ではないが……。
「あ、でも音也の親戚にあいつそっくりの兄さんが居たよな」
「そういえばそうね。でも……それにしてはおかしいわよ。普通に考えれば私たちの住む地球の人間で、魔力反応を持つ者が居るわけない。文音さんもそう。貴女たち、何者なの?」
そう。目の前に立つ音也モドキと文音さんからは巨大な魔力反応があったのだ。音也モドキに関しては雫と同格ぐらいの強さだが、文音さんは明らかに異常である。雫やハジメくんは勿論、私やファンガイア化した音也よりも“強い”と分かったのである。
疑問点は他にもある。音也ですら不可能であった、“道具を使わずに異世界へやって来る”という神業にも近いことを文音さんか音也モドキは平然と成し遂げたというのだ。これで疑わない方がどうかしてる。
文音さんは日本に居た頃からチートじみていたのは伏せておこう。廃れるどころか現在も最前線で戦い続け、挙げ句の果てには神をも瞬殺したイクサを開発していたとしても、だ。
「疑うのは分かるけど、これから説明するからまずは仕込み針を収めてくれる? こうも殺気立っていると話しにくいから」
「……分かったわ」
「とりあえず、知らない人のために自己紹介しておくわよ。私は紅文音。紅音也の母親。私がまだ高校生の頃に一人この世界に召喚されたことがあるわ」
「で、俺はタケダコウヘイ……という名前で向こうの世界で暮らしてた。本名はオトヤ・デッドだ。元はこの世界の住民だったが、色々あって君たちが住んでいた世界に飛ばされて文音さんに世話になった。こっちの世界では“亜人の英雄”だなんて呼ばれていたな」
「「……は?」」
私とハジメくんの声が重なる。どちらの話もとにかく衝撃的なのだが……とりあえずツッコみたい。声を大にしてツッコみたい!
「高校生の頃に一人でこの世界に召喚されたってどういうことですか!?」
「どうもこうもないわよ? あのクソ神にある日突然この世界に召喚されたの。ムカついたから修行しまくって神代魔法を全部取得して、イクサの原型も開発してクソ神をとりあえず封印して日本に帰ってきただけよ。あ、そうだ。ミレディは何処に居るの? この世界に来てから感じられる魂魄がミレディしかなかったけど」
「あ、ダメだ……頭パンクしちゃう」
「文音さんは解放者たちと面識があるってことだな? こっちも頭がパンクしそうだが……まあ良い。それよりも、亜人の英雄って。話だけは聞いてるが、まさか音也の隣人だったのか?」
そうだった。質問したいことは他にもあったのだ。目の前に立っている“オトヤ”は、話を聞くとずっと私たちのことを見守ってくれた人物ということになるのだ。
それに、ヤクザに殺されそうになったのを助けてくれた人物は目の前に立つオトヤになる。あの当時は“音也”が助けてくれたとばかり思っていたが、実際の所は違うと伝えられている。どんな理由があって助けてくれたのかはサッパリ見当が付かないが、それでも多大な恩を受けたのは確かだ。
「それにしても……大きくなったな。二年前だったか?」
「やっぱり、貴方は……」
「随分と強い瞳を持ったな。もう死んでしまったが……吸血鬼族のあいつにそっくりだ」
「それって……」
「さあ、こんなしんみりとした話は終わりだ。俺の話を聞かせたら一日では終わらないぞ。とりあえず、俺は仮面ライダーキバの紅音也役と仮面ライダービルドの猿飛一海役を演じている。そしてこの世界では亜人の英雄だ。それだけ伝えておくからな」
これ以上の質疑応答は無理だと悟った私は、言及をひとまず止めにした。敵ではないことだけ分かれば、正直十分だったりする。
「ねえ露葉ちゃん。ミレディの居る場所に連れて行ってくれる? その途中で、どうしてこの世界にやって来たかを教えるから」
「……分かりました。空間魔法を使いますね」
「それじゃあ話す時間はない、か。仕方ない。ミレディに会ってからの方が良さそうね」
「ねえ、クラスメイトの皆は戦う準備をしながらハイリヒ王国に戻ってくれる? 確か彼処には【神山】という場所があったはず。わざわざ“神”なんて付けるぐらいだから、【神域】と直結してるはずよ」
ザワザワと騒ぎ出すクラスメイトから視線を外すと、私は目の前に大きめのゲートを作り出す。ハジメくんから場所は教えてもらっているため、座標を特定するのは簡単だ。大変なことと言えば、距離がそこそこあるので疲れやすいと言ったところだろうか。
あっという間にゲートを開いた私は、見慣れない住処のような場所へ足を踏み入れるのだった。
──────────────────
「ちょちょちょ、いきなり入ってこないでよぉ! 不法侵入容疑で天体から放り出してやろうかと……思った、じゃ、ん……!?」
「ミレディ! 姿形が全く変わってないじゃない! どんな魔法使ったのよ!」
「フミネぇぇぇえ!? そんな、嘘でしょお!? 有り得ないよ、有り得ない! そうだ、これは夢だ! ほっぺた抓ればきっと……いたたたた!」
「相変わらず騒がしいわね。ほら、現実に戻ってきなさい。私はここに居るわよ」
「ほ、本当だ。ちゃんと手に触れてる。温かいよ……あたた、かいよぉ」
「ほら、折角の再会なんだから泣かないの」
開口一番、文音さんの姿を見て絶叫を上げ、自分の頬に紅い痕が残るほど強くほっぺたを抓るミレディ・ライセンの姿に、私はほんの少しだけ引いた。
しかしその混乱もあっという間に終息させる辺り、文音さんはやはりただ者ではなさそうだ。
「でも、何でこの世界にまたやって来たのさ? わざわざ戻ってくる必要はなかったんじゃない?」
「それについては今から説明するところだったの。そこまでややこしい話でもないけどね」
ほう、と一度息を付いた文音さん。少し目を閉じて何処から話そうか思案している文音さんのことを見ていると、不覚にも私は彼女がとても“若く、とても美しい”と思ってしまった。
これまで文音さんとは数回会って話しただけなので、彼女の姿をまじまじと見つめたことはない。だが、改めてじっくり観察してみると、文音さんは年不相応な若さと美しさを自然と出している。
だが訝しがることはなかった。むしろ、「ああ、なるほどな」と納得した。文音さんが神を瞬殺できるほどの力を持っているなら、再生魔法を使って永遠の若さと美しさを保っているとしても不思議ではないのだ。
「まず、ここに居る人たちは“黒いイクサ”については知ってるわね? あの機能はライザーフエッスルによって使用が可能になる。で、私はライザーフエッスルに異世界だろうと探知が可能なGPSを取り付けたのよ」
「そ、そうだったんですか。それじゃあ、私にライジングイクサを託したのは……」
「露葉ちゃんが音也と雫ちゃんの行方を追いたがっていたのを利用させてもらったの。私だって息子の行方が知りたかったしね。それに、いきなり神隠しのような現象に音也たちが遭ったと聞いていたから賭けてみたというのもあるわ」
「賭け、ですか?」
「さっきも言ったけど、私は高校生の頃に異世界へ召喚されている。あの時もいきなり召喚されたから、世間では神隠しと称されていたの。それを思い出して、もしやと思ってね」
なんて鋭い人だ。確かに雫や音也が姿を消した時は、様々なメディアが“現在の神隠しか”という見出しで盛り上がっていた。連日、クラスメイトの家に足を運んでは無神経な質問を繰り返すマスゴミも今では懐かしい。
あまりにも非現実的な事件だったため、クラスメイトの親や警察はパニックに陥っていたのを覚えている。
そんな中、この人だけは“経験”という大きなアドバンテージを持っていたとはいえ、物事を正確に把握して先読みしていたのである。
「それじゃあ、何である程度分かっていたのに自分でこの世界に赴かなかったんですか?」
「あの時点ではまだ“賭け”であり“予測”だったからね。確信を持つまでは待っていたかった。それに、転移しようとしてもあのクソ神が対策を練っていたら本末転倒になる。それなら、音也がデストロイモードを発動させるまではひたすら準備を進めて待とうと考えてたのよ」
それが、今日だった。そう締め括った文音さんに対しての不満は誰一人として零さなかった。いや、零せるわけがなかった。
少なくともここに居るメンバーは全員エヒトルジュエの恐ろしさを知っており、彼女であっても異世界へ転移するのは至難の業だということを嫌というほど理解することができたからだ。
「ねえフミネ。デストロイモードが発動するまで待った理由はあるの?」
「簡単よ。デストロイモードは対神特効モード。あれを発動させたということは、少なくともエヒトルジュエの力が弱くなることを指しているの。そのぐらいにデストロイモードは強力よ。あの野郎を封印した時もデストロイモードだったから、奴も無視はできないでしょうし」
「ふ、封印したんだ。やっぱり最強の解放者の名は伊達じゃないね」
「まあ、封印といっても“器”に自分の魂を移さない限りは【神域】から出ても力を十全に発揮できなくするだけよ。あの時はオマケ程度で“汝、其処から動くことを禁ずる”をぶつけて身動きを完全に封じたけどね」
「フミネは息をするように概念魔法を生み出してたよねぇ。一つ一つの思いが強いからかな?」
息をするように概念魔法を発動させたというミレディの言葉に私たちの顔が盛大に引き攣った。概念魔法がどんなに凄まじい力なのかは音也が証明済みである。
神であるアルヴヘイトを文字通り瞬殺し、あのエヒトルジュエですらも即座に撤退を選ぶほどの効果を発揮した概念魔法。発現すらも困難な概念魔法を、息をするように何時でも作り出せるなど常軌を逸している。
この母親があっての音也である。その事実を、私たちはこれでもかというほど理解させられるのだった。
一応ですが伏線回収です。本当に申し訳程度の伏線回収ですが()
分からない人は急章を見れば理解できるかと思われます。
それと、最近新しい評価が基本的に高評価なのが本当に嬉しいです。気がつけば5ヶ月も連載してますが、ここまで来たら完結させる以外の選択肢はないですわ()
ちなみに“デッド”は英語で紅を「Deep red」と言うのをバラして当て字的な形にしただけです。何の捻りもございません。
恵里の処遇はどうする?
-
勇者バカ之河の被害者だから救おう
-
消せ(無慈悲)