※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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お待たせしました。今回は露葉sideです。予定ですと、あと音也sideと露葉side、それぞれ二話か三話ずつ書いて完結させるつもりです。


第八楽章 殺戮・舞姫は花を散らし

あの後、文音さんから私たちは様々な道具を譲り受けた。私たちが対局するのは大量の神の使徒ということなので、文音さんは私たちの道具を一段階グレードアップさせ、神の使徒と殺り合うにあたって重要なことを幾つか伝えてくれた。

 

曰く、神の使徒の弱点は魔物と同じように存在している魔石だということ。不死身のように見えて、人間のように首を飛ばせば普通に殺せること。分解能力は確かに驚異的だが、掻い潜りさえすれば倒すのは難しくないこと。様々なことを教えてもらった。

 

「『ステータスプレートで何かしらの値が20000を超えられるなら神の使徒と十分に殺り合える。特に露葉ちゃんはハジメくんと並んで高ステータスなんだから、一人でも多くの使徒を殺してね』……か。相変わらず、サラッととんでもないこと言うわね」

 

昨日寝る前に文音さんが私にかけた言葉を思い出して、苦笑と共にそんな言葉が出てくる。現在私たちは神山から数キロ離れた場所に構えた要塞の外で待機している。この要塞はハジメが制作した物であり、文音さんが作り出した“時が遅延している空間”で制作された物だ。

 

ミリタリーの知識量は凄まじいハジメが作っただけあり、要塞の至る所にはフルオートの機関銃や対空砲が備え付けられている。また、ミレディの重力魔法と文音さんの結界魔法を組み合わせて出来た特殊結界が要塞を包んでいる。

 

近づいた砲弾が為す術なく地面に墜落したのを見せられて、乾いた笑みがこぼれ落ちたのは良い思い出である。

 

他にも、ハジメが以前制作して移動にもよく使われていた“超重戦車マウス”と“重戦車ティーガーII”に“中戦車チハ”を大量生産して要塞の手前に設置。地上まで降りてきた使徒や神域で生まれる魔物を根こそぎ殲滅するという作戦を立てた。無論、フルオートで動くため戦車を動かすための人員を調達する必要はない。

 

ちなみに要塞で待機しているのは、まず私にハジメ。そして文音さんにミレディ。音也のそっくりさんであるオトヤとキバット。レミアとミュウ。シアと香織。そしてリリアーナとその他のハウリア族という兎人族が居る。後は音也のクラスメイトが数人居るぐらいだ。

 

正直、人員不足と考えたくなるほど少ない。だが、文音さんは自信たっぷりに宣言したのだ。これだけ人が居れば、神の使徒を封じ込めるなど朝飯前だ! と。

 

「まあ、彼奴らを倒すこと自体は簡単だけどね。どのぐらいの数が来るか、よねえ……」

「なんだ、心配なのか?」

「嬢ちゃんも心配性だな。あの人が大丈夫と言えば何とかなるさ」

「あら、キバットにオトヤ。久しぶりの会話は楽しめたのかしら?」

 

いつの間にか背中側にはオトヤがキバットを肩に乗せて立っており、他のメンバーも続々と外へ出てきた。要塞に残るのは戦闘能力を持っていないレミアとミュウ。要塞内の兵器に指示を出すリリアーナ。そして最後の砦として文音さんだけだ。

 

「存分に楽しめたさ。ついでに変身も可能だと分かった。まあ、フミネに不死身にしてもらったから当たり前だがな」

「やはり、こっちの方が馴染み深い。神域に突入した彼奴とはまた別のフィット感があるな。正直なところ、先代キングより力を引き出しているぞ」

「やっぱり貴方もとんでもない化物ね。アルヴの野郎にやられたのが不思議なぐらいだわ」

「概念魔法も魔皇力も使えなかったのに無茶言うなよ」

 

音也とオトヤの決定的な違いを挙げるとすれば、概念魔法と魔皇力を使うことが出来ないことだ。しかし、それを補うほどの戦闘経験を積んでいるので問題は実質ゼロ。

 

「あの時は若かったんだよ」と苦笑するオトヤにこれまた私も苦笑を返しつつ、それとなしに空を見上げた。

 

ハジメも隣に並び立ち、同じように空を見上げる。私もハジメも、きっと同じ事を考えているに違いないだろう。

 

――もうすぐ、空が割れると。

 

訪れた日の出。東の地平線から輝く太陽が顔を覗かせ、西へと大きく影を伸ばす。

 

温かな日の光で世界を照らしつつ、真っ赤に燃える太陽が完全にその姿を現したそのとき、私は閉じかけていた瞳をスっと開け、そして呟いた。

 

「来たわ」

 

その瞬間だった。

 

世界が赤黒く染まり、鳴動したのは。

 

そして、私たちが向けた視線の先、【神山】の上空に亀裂が奔り、深淵が顔を覗かせた。

 

赤黒く染まった世界は、朝焼けのような燃えるオレンジ色ではない。血を練り固めたかのような、何処までもドス黒く不快な色だ。

 

そして、異様な色の世界には異様な音が鳴り響く。世界そのものが鳴動しているのだ。大地も、大気も、恐れ戦くように震えながら悲鳴を上げている。

 

空を見上げれば、【神山】付近の空一帯がビキッバキッと音を立てて四方八方へ亀裂が広がっていく。

 

「……まずはハジメね」

「ああ、分かってるさ」

 

しかし、異様な世界を見ても私たちに動揺は一切ない。それどころか全員が不敵な笑みを浮かべているぐらいだ。

 

それもそうだろう。私たちは、これから何が起こるかを知っているのだから。

 

「存分に食らって逝け」

 

ハジメが肩に担いで構えたのは某少佐もきっと腰を抜かすであろうロマン兵器。外面は物腰柔らかく、内面では滾る炎を持っており、大国二つと戦争をした民族が作り出した最強の“砲”だ。見た目が最早、コロニーレーザーのようだというのはハジメの言葉である。

 

驚くことなかれ、この砲の口径は46cmである。あのイクサキャノンよりも大口径であり、普通に使えば精度は最悪レベルだ。しかし、発射する物が太陽光を集束して生まれた巨大な極光なため、大口径でありながら抜群の精度を保っている。

 

この砲の名を安直に“大和砲”と呼びたいところだが、余りにも安直すぎてロマンがないということでハジメはこう呼ぶ。

 

“太陽光集束砲デス・パニッシャー”と。

 

さらにハジメは、巨大な反射鏡のような物を砲の射線を塞ぐように設置。最終確認を終えたのか、ハジメの口元がニヤリと割けたのが尻目に見えたが、すぐにハジメの顔は極光によって隠されることになった。

 

凄まじい轟音と共に発射された極光は、反射鏡を通り抜けて地上へ降り立とうとする使徒や魔物の元へ急迫した。“発射された時よりも、巨大な光の柱となりながら”。

 

有り得ない速度で急迫した極光に使徒たちが気がついたときには、時既に遅し。防御姿勢を取るどころか、何をするのかを考えているうちに超高熱の極光に呑み込まれていった。極光は全てを呑み込みながら尚も直進し、最終的には【神山】に直撃。使徒の分解能力でも食らったかのように、山の中腹に巨大な穴が生まれ、そのままバランスを崩して山その物が音を立てて崩壊した。

 

「……なんて破壊力よ」

 

思わずそんな言葉が出てくる。しかし、ハジメによる自重なしの開戦無双はこの程度で終わるはずがない。

 

次にハジメが懐から取り出したのは、掌に楽々乗せることが出来るぐらい小さい手榴弾だ。それをハジメは、野球の投擲フォームを取ってポイッと軽く使徒や魔物の居る場所へ投げ入れた。続いてドンナーを抜いたハジメは、数キロ先に不規則な回転をしながら落ちていく手榴弾を撃ち抜く。

 

ドパンッ! ドゴアアアア……!

 

手榴弾は当然爆発するのだが、ハジメが投げ込んだ手榴弾が普通の手榴弾な訳がない。その証拠として、爆発した手榴弾の半径百メートル以内に居た使徒や魔物が大量の血飛沫を上げながら破裂してしまったからだ。

 

ハジメが投げ込み、ドンナーで撃ち抜いた手榴弾の名前は“パルサーグレネード”。指定範囲以内の空間を一瞬だけだが“中性子星の重力を全方向から加重する”という、一見地味だが恐ろしい力を保持している。

 

ちなみに中性子星は地球の重力を1と考えた時におよそ200000000000倍もの重力を持つ、質量の大きな恒星の最後の姿だ。

 

ほんの一瞬とはいえ、尋常ではない重力がかけられた使徒や魔物は地面に血の染みを大量に作り出すに至った。

 

堪らずに、使徒たちがゆっくりと降下するのを止めにして高速で此方に向かってくるのを確認したハジメは、私の方を一度見やってニヤリと笑った。私もまた、音也のように不敵な笑みを浮かべ、一足先に空中へ飛び出した。

 

手には文音さんがグレードアップを施した鉄扇。それを正眼に構え、私は静かに詠唱する。

 

「――――凍てつく氷華の刃 蕾はここに開かれよ 吐息は触れる物全てを凍えさせ 花びらは存在する万物を切り裂け 今ここに 咲き吹き乱れよ 〝煉獄氷華〟」

 

どこからともなく蒼色の花びらが風に乗って私の周りに集まり、一つの巨大な花が咲くかのように広がっていく。辺りは既に氷に包まれており、地面のあちこちから霜が降り、やがて凍り付いた。

 

日本舞踊のような動きで体ごと鉄扇をユラリと揺らすと、全ての花びらがゆっくりと時計回りに回転を始めた。傍から見れば巨大な花その物が回転しているように見えるだろう。

 

やがて花びらの回転が速くなり、それに合わせて真っ白な風が辺りを駆け巡り始める。風にうっかり触れた小鳥を見ると、一瞬でカチコチに凍り付いてある種のオブジェクトと化していた。

 

最後にパチリと鉄扇を閉じれば、一気に風が強くなり花びらも途端に舞い散る。

 

「生まれてきたこと、後悔すると良いわ」

 

凍風に乗った花弁は人の意思を持ったかのように縦横無尽に空を駆け巡る。大気すら凍らせて雪を降らせるほどの寒さの中、花弁は満足に動けていない使徒の翼を断ち、四肢を削り落とし、心臓を挽肉へ変えていった。

 

――八重樫流奥義の一つである〝煉獄氷華〟。元になった技は〝乱れ桜吹雪〟であり、そこに気候変動を起こしかねない冷気併用することで発動する物だ。冷気に触れた物は問答無用で体内から凍り付き、花弁に触れればたちまち体を切り裂かれてしまう。弱点は、未だに詠唱をしないと発動が難しいことぐらいだろうか。

 

しかし、そこを加味してもこの技が恐ろしい物であることに変わりはない。パルサーグレネードには及ばないかもだが、音也の旧イクサを封じ込めるだけの力はある、というのが文音さんの意見だったりする。

 

「おいおい。あんたも大概じゃねえか」

 

いつの間にかハジメも空に浮かんでおり、私の隣でドンナー・シュラークを連射しながら呆れたような表情を浮かべている。

 

「呆れてるのはこっちよ? まあ良いわ。パルサーグレネードはまだ数があるのよね?」

「千個単位で残ってるぞ。こいつをどう使うつもりなんだ?」

「〝煉獄氷華〟の効果が途切れたらパルサーグレネード含めたアーティファクト大解放よ。あの木偶人形共を血祭りに上げるから」

「……やっぱりあんたは恐ろしいな」

 

ハジメにだけは一番言われたくない。が、そう口に出すのを我慢して私は風を操り続ける。

 

戦いはまだ、始まったばかりだ。

 

神にとっては世界の……

 

人類にとっては弄ばれた歴史の……

 

終わりの戦いが。

 




46cm砲の元ネタはもちろん大和砲です。要素的にはコロニーレーザーに近い物ですが、見た目は大和砲です。でも三連砲ではないですよ!()

パルサーグレネードは完全にオリジナル兵器です。元々は“ジュピターグレネード”でしたが、木星が思ってた以上に重力が弱かった(引力は強い)ので急遽変更しました。ちなみに重力の強い星としてブラックホールも候補にありましたが、名前が中性子星パルサーよりも格好悪かったので没にしています。

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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