※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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遅くなりました。実は今日まで部活の全国大会があったんですよ。結果は7位でした()
それと、年内に完結できるか不安になってきました()


第十一楽章 理不尽の果てに

光が爆ぜる。

 

俺はエヒトルジュエの繰り出した魔力弾を棺桶で吸収し、逆に反射することで攻撃を加えていく。神の攻撃ですらも吸収し、更には反射して威力を倍増させる光景は嘘と冗談を総動員したかのような信じられない光景だろう。

 

「我の攻撃を受けても壊れないアーティファクトなど……大した物だ」

「まだ余裕ぶってるのか? それとも今のが全力とでも?」

「……その傍若無人な態度は一体どこから来るのだ? イレギュラー如きに本気を出す我ではない」

「なら、バカ言ってないで早く殺してみろよ」

 

縮地で踏み込んでエヒトルジュエの懐に一気に攻め込んだ。そのままファンガイアスレイヤーを雫の抜刀術のように振るい、避けようとするエヒトルジュエの腹を切り裂きながら尚も急迫する。

 

エヒトルジュエの背中側から棺桶が首を揃えて銃口を向け、俺のことを巻き込む勢いで最上級魔法が次々と発射された。逃げようとしたエヒトルジュエのことは“念力”と“自然発火能力”で動きを止め、クソ野郎の腹にファンガイアスレイヤーを突き立てて地面に押し倒す。

 

イクサがエヒトルジュエの放つ反則級の破壊力を持った魔法を何度も受けて破壊されそうになるも、それを上回る速度で即座に再生してしまうためエヒトルジュエの顔が醜く歪み始めた。

 

「イレギュラー……お前は、抵抗していた魂魄共と同じぐらいにしぶといな。本当にイレギュラーな存在だ。余りにもイレギュラーすぎる。フリードの出現でバランスが崩れかけた遊戯を更に愉快なものにする為、異世界から力ある者を呼び込んだというのに……本命を歯牙にもかけぬ強者になるとはな」

「ほう? なら、今回に限って召喚した理由でもあるのか?」

「昔と違って、現代にはフリードに対抗できる人材がいなかったのでな。まさか、吸血姫や竜人まで生きていたとは思わなかったのだよ。どちらも上手く隠れたものだ。……この世界に良い駒がいないのなら別の世界から調達するしかあるまい」

「……別の世界、ね」

「そうだ。もっとも、お前たちの世界に繋がったのは全くの偶然ではある。どうせならと、我の力を強化できる魂魄を持つ者を探した結果だ。神の身なれど、世界の境界を越えることは容易くない。まして、以前の器だけでは【神域】の外で直接干渉することもままならんほどだ。結果として、どうにか上の世界から引き摺り落とすことには成功したわけだが……お前のようなイレギュラーを含む、おまけが多数付いて来てしまった」

 

この話からするに、エヒトルジュエは己の力を強化できるほど強い人物を探していたのだろう。つまり、俺たちが召喚されたのはエヒトルジュエの器捜しというのが本来の目的ということだ。

 

しかし、俺たちの住む世界はどうやらこの世界の上位の世界らしく、大まかな作業しか出来なかったということだろう。

 

「だが、お前というイレギュラーのおかげで本来なら一人見つかれば幸運だったところを、何人も強力な力を持つ人物を作り出してくれたのでな。結果から見れば良かったと言えるのだよ。これだけの力があるならば、【神域】の外でも十全に力を発揮できる。異世界へ渡ることも容易い」

 

異世界へ渡る。これは、恐らく俺たちの住んでいた世界へ侵攻することを意味するはずだ。そして、その前にこの世界に居る有りと有らゆる生物が死ぬことも意味する。

 

奈落の底に落ちた頃の思考のまま今日を迎えれば、俺はこの世界の生物に関してはどうでも良いと感じただろう。だが、残念なことに今は違うらしい。

 

人並みに怒りを覚えるし、何より死なせたくない人物が何人も出来てしまった。

 

「異世界へ、ね。そんなこと、俺がさせるわけないだろうが」

「まだ分からないのか? 我は……」

「神様だって? ふん、この程度が神様なのか。だとすれば、俺の母親は何者なんだろうな?」

 

その言葉を紡ぎ終えた直後、俺は再度エヒトルジュエに突撃した。虚を突かれたらしく、ほんの一瞬だけ反応が遅れたのを見逃さずにエヒトルジュエの胸にファンガイアスレイヤーを突き立てる。

 

「で、どうした? 神様ってのは所詮この程度なのか? もっと俺を本気にさせてみろよ」

「イレギュラーッ。貴様ゴハッ!?」

「動揺のしすぎで言葉すらマトモに出てこないか? それもそうだろうな。これまでお前が敵わなかったのは俺の母親だけだからな。だが、これでハッキリとした。お前は神なんかじゃねえな」

 

強制的にエヒトルジュエの事を宙に軽く浮かせて腹を蹴り飛ばし、一度距離を確保してから酷く歪んだ表情を見せるエヒトルジュエに言葉を投げかけた。

 

「ぐくっ……何を根拠にっ」

「おお、神様ともあろう者が無様なもんだな。まあ教えてやろう。お前はこの世界の者ではなく、元は別世界の“人間”だろ?」

 

俺は続ける。エヒトルジュエは、ただの人間である俺の攻撃如きでここまで息を上げている。さらに、こいつは奈落の底に封印されていたユエや隠れ里に居たティオのことに気がつけなかった。この世界を創造した神であるならば、彼女たちを見つけることは容易いはずだ。それなのに見つけられなかったのは不可解である。

 

そして、何よりおかしいのは“別の世界”という概念を知っていることだ。「この世界にいないから他の世界の人材を」なんていう考えは、最初から異世界が存在していることを知らなければならない。全知全能の神なら話は別だが、こいつの力が及ぶ範囲は神単位で考えれば極めて狭い。

 

「元々はただの人間だった。だが、ある時に何かが生じて強大な力を手に入れた。信仰を幾星霜もの間集め続けたお前は、“神と見間違えるぐらいには強い力”を得たのかもしれないけどな。それでも、お前が神だということは有り得ない」

「ふむ……見事な洞察力、恐れ入る。流石はイレギュラーと言ったところか。確かに我は異世界の人間だった。元々は、ただ魔法の極みに至っただけの、な。もっとも、幾星霜の時を経て集めた信仰が我の魂を昇華させ神性を与えた以上、神であることに違いはない。そのおかげで、ある程度の概念魔法ならば無効化出来るほどにはなったな」

「まだ神を名乗るのか。お前が神であるならば、俺のことを難なく殺せるはずだがなあ……」

 

あくまでも自分は“神”であると言い張るエヒトルジュエに、流石の俺も呆れ果てる。

 

棺桶を背中に戻し、鎖で繋いだ俺は最大級の侮蔑と嘲りの視線を送りつつ、ファンガイアスレイヤーを宝物庫に放り込んでファンガイアバスターを新たに取り出した。

 

「そんな小さなアーティファクトで何が出来るのだ? この後に至ってお前は諦めたとでも――」

「見当違いも甚だしいな」

 

まだ油断をしているエヒトルジュエに対し、俺は数回引き金を引いてから突撃する。ドンナーやシュラーゲンほどの破壊力がないのはエヒトルジュエの言う通りである。こんな小さなアーティファクト、というのもあながち間違ってない。

 

だが、それは随分と前の“情報”だ。古い情報に縋っているのでは、俺に勝つことは不可能である。

 

「む……神剣を貫通しただと?」

 

いつの間にか取り出していたであろう剣で弾丸を撃ち落とそうとしたらしい。が、弾丸は何事もなかったかのように剣をすり抜けてエヒトルジュエの腕に突き刺さった。

 

それを確認した俺はエヒトルジュエの目の前に辿り着いた瞬間にゼロ時間連続転移を行う。

 

「舐めるなっ」

 

エヒトルジュエも負けじとゼロ時間連続転移を繰り返し、俺の転移先にコンマ数秒の間に追いついてくる。転移した先でファンガイアバスターの射撃を撃ち込み、そのまま再度転移をするとエヒトルジュエもまた、転移して俺のことを追いかけてくる。

 

何度射撃を受けても動きが鈍ることのないエヒトルジュエ。魔力を消費することなく転移を繰り返す俺。傍から見ればただの泥試合。終わりの見えない、泥沼のような戦いだ。

 

「――ォォォオオオオオオオオ!!」

「またその力かっ」

 

今度は転移した瞬間に身体を180°回転させ、〝我、汝の絶対なる死を望む〟を付与させたファンガイアスレイヤーで一気にエヒトルジュエの懐へ斬り込んだ。

 

エヒトルジュエの振るう剣にファンガイアスレイヤーを蛇のように巻き付かせ、一気に引き抜くことで粉砕させるとガクンッと身体を“落として”エヒトルジュエの足を掴む。

 

強引に俺の元へエヒトルジュエ引き寄せて、すれ違いざまに一太刀浴びせながら下へ投げ捨てると、身体を独楽のようにクルクルと回転させながら背中に背負った棺桶たちの魔力を一気にチャージして解放させた。

 

小口径の対空砲のようにポンポンと棺桶から発射される魔法弾は、一撃一撃が通常のブロウクン・ファングを遥かに超える破壊力を持つ。

 

対するエヒトルジュエは巨大な輪後光を再度纏って光星を作り出し、まるで幾何学模様でも描いているかのように飛び出させてきた。ある種の芸術性すら感じさせる光の流星群。球体状のものもあれば、刃のように曲線を描くものや、ブーメランのように回転しながら迫ってくるものもある。

 

両者のちょうど中央に当たる位置で激突したそれぞれの流星群は、轟音と、凄絶な衝撃と、恒星が生まれたのかと錯覚するような閃光を放つ。二つの流星群は中央でぶつかると互いに弾かれあっているため、力が拮抗しているらしい。

 

流星群をそのままに、俺はファンガイアスレイヤーをもう一度取り出して流星群の中へ突っ込む。たちまちイクサが傷つき所々が変身解除されるも、イクサの治癒能力を信じて俺は正面突破を試みた。

 

「っぁあああああああああああっ!!」

「これを突破するというのかっ」

「その程度、俺に通用するわけねえだろうがあああああっ!」

 

追い打ちのように発射された極光すらも己の身を顧みることなく猛進していく。

 

滅茶苦茶に吹き飛ばされても一瞬で再生するイクサ。流石に何度も受けては再生が追いつかない部分も生まれてきているが、それでも俺は意に介せずエヒトルジュエの元へと進み続けた。目には絶大な殺意の光を。身体には全てを滅する概念を纏いながら。

 

遂には流星群を完全に突破し、エヒトルジュエを目の前に捉える。そのエヒトルジュエはほぼ無意識といった様子でゼロ時間転移をして逃げに出た。それを俺は〝天歩〟と〝爆縮地〟を併用することでほぼ直角に進行方向を変えて尚も追い縋った。

 

「うおおおおおおああああ!!!」

「くっ、この。食らえ! 〝真なる神威〟!」

 

これまでの戦いで見た極光とは比べ物にならないぐらい大きく、かつ途轍もない破壊力を持った〝真なる神威〟が俺の身を包んだ。一瞬でイクサが消し飛ばされ、再生してもまたすぐに破壊されていく中でも俺は進むのを止めない。

 

止めようとすら思っていないことは、俺の身体から噴き出す魔力を見れば一瞬で理解することが出来るだろう。魔力は噴き出す勢いが弱くなるどころか、最初と比べても確実に噴き出す勢いが強くなっているのだ。その殺意は衰えるどころか、時間が経つに比例して巨大になっていく。

 

「無駄だぞ、イレギュラー! お前が死ぬまで永遠に発射され続ける滅びの光だ!」

 

極光の出力が更に上がり、遂にはイクサを貫通して俺の肉を焼き始めた。頬骨が、肋骨が、指先の骨が露わとなる。血が噴水のように飛び出しては極光によって蒸発し、尚も俺の身体から許容量を間違いなく超えた血が流れ出ていった。

 

〝無限強化〟の加護を受けた俺の肉体は焼かれた次の瞬間には治癒するも、再度極光によって溶かされるを繰り返しており、誰がどう見ても俺はこのまま死ぬと思えるだろう。それは、俺だって同じなのだから。死を間近に感じているのは他でもない俺なのだ。

 

それでも。それでも、だ。俺は、それでも!

 

「見つけ、たぞっ!」

「お、おのれっ。あれをも突破するとは、お前は本当に人間なのかっ!?」

「人間、だ。強い意思と罪を背負った、ただのヴァイオリニストだっ!」

 

極光の中からエヒトルジュエの手首を掴み、突進の勢いそのままに地面へエヒトルジュエを叩き付ける! ファンガイアスレイヤーを振り回し、奴の首元に突き立てる! 理不尽な事柄は更なる理不尽で押し返す! いくら強かろうが、相対するのが神だろうが、敵と見なした者は全てこの手で消し去る! 今までそうして来たように、全ての障碍を喰い破るっ!

 

「ガハッ、イレギュッ――」

「はぁ、はぁ……死ねえええええ!!」

 

これまで無事だった右目までも焼け落ち、俺の容態は完全に満身創痍と言ったところだ。露出した骨の部分を覆う皮膚も完全には再生していない。

 

それでも殺意を途切れさせることはなく、見えない視界の中でも正確にエヒトルジュエのことを射貫き、ファンガイアスレイヤーを一度首から引き抜いて再度突き刺そうとする俺の姿に、奴は神を名乗るというのに言葉を詰まらせた。

 

「舐めるな、イレギュラー! これで終幕だ!」

「ぐ、がはっ」

 

こめかみ付近に大剣をエヒトルジュエによって突き立てられ、俺は盛大に吐血をすることになった。大剣は脳味噌まで到達しているのか、俺の視界はレッドアラートのように赤く染まっており、酷い耳鳴りが俺の頭部の痛みを加速させる。治りかけていた傷口も治癒を止め、再び俺の全身から血が噴水のように飛び出した。

 

「く、くく。はは。見事、本当に見事だ、イレギュラー。この我に焦燥を感じさせ、本気を出させるとは。称賛に値する。もっとも、お前の持つ力が我に届いているのかと問われれば、否と答えるしかあるまい」

 

若干上ずった声をあげるも、悠然と微笑んでいるのだろう。多少の余裕を取り戻した声を出したエヒトルジュエは、動かない俺の頭を掴んで耳元でらしく、ヘドロのように粘ついた声音で囁いた。

 

「お前の大切なものは全て我が壊してやろう。地上で抵抗を続ける同胞たちも、故郷の家族も、全て踏み躙り、弄び、阿鼻叫喚を上げさせてやろう」

「………」

「だが、安心するがいい。この素晴らしき魂魄たちだけは丁重に扱ってやる。お前を始末した後は、お前の最愛の者の魂魄やその姉の魂魄も取り込んでやろう。そして、たっぷりと有効活用させてもらうぞ。隅々まで、存分に、丁寧に、なぁ?」

 

愛する人たちは良いように弄ばれる。大切な人たちは奴の手によって皆殺しにされる。心安まる故郷の地は、見るに堪えない“平原”と化するのは明白であろう。

 

耐え難き言葉は、俺の生きる気力すら奪ってしまうかもしれない。“諦める”という言葉がほんの一瞬だけ脳裏に浮かんだ気がした。“気がした”というのは、それを理解する前に俺の口が動いていたからだ。

 

「リミッター……全解除」

「ん?」

 

小さな、小さな呟き。しかも掠れていて、間近にいたエヒトルジュエをして聞き逃しめたのだろう。怪訝そうな声をあげた。

 

そんなことは正直なところ、どうでも良い。その理由は簡単だ。

 

「変……身」

『ベ・グ・ラ・ン・ヅァ・フ・ラ・イ・ガ・ー・バ・ー』

「何を――んなっ!?」

 

聞き慣れない電子音が響き渡った次の瞬間、エヒトルジュエが驚愕の声をあげた。

 

俺のこめかみ付近に突き刺さっていた大剣がポキリと折れ、残っていたであろう刀身もポロッと地面へ滑り落ちた。生身であった俺の身体は、瞬く間にデストロイモードのイクサへと包まれた。

 

――頭部のフェイスシールドが、ガチャリと上下左右に展開された。そして、俺の身体からは莫大という言葉でも足りないほどの魔力と魔皇力が噴出した。

 




ここに来て尚も新しいギミックが登場するイクサに関して少々やりすぎたかもしれないと思う一方で、してやったりと思う気持ちが何処かにあるのが何とも言えません()

次回は露葉&ハジメVSエーアストたちです。描写は……うん、頑張ります()

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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