その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
ちなみにFineというのは音楽の終止記号の「フィーネ」という意味です。
サクッとまとめたつもりで書きましたので、最終回にしては読み応えがないかもしれないことをご容赦ください(重罪)
邪神エヒトルジュエとの死闘。そして、人類の存亡を賭けた戦いから二年が経過した。
主戦場となったハイリヒ王国では、ボロボロの町に対して急速な復興作業が行われた。戦いその物は露葉たちが請け負ったこともあり、一人の死者も出なかったハイリヒ王国は国民が総出になって国の復興作業に当たったこともあり、半年もしないうちにハイリヒ王国は前以上の活気を取り戻した。
その復興作業の先頭に立ったのは他でもないリリアーナだ。彼女は国民を何処かの誰かさんのような言動で鼓舞し、予定よりも早いペースで復興作業を終わらせている。
その最中、邪神と人類との壮絶な戦いは神話大戦と表されたという。更に音也たちは“解放者の意志を継ぐ者たち”として、永遠にこの世界の表舞台に立つことになった。その際にミレディたち解放者たちの名誉も回復し、時を同じくして再び歴史の表舞台に上がることになった。
さて、すっかり英雄視されている音也たちだが、彼らは戦いが終わってから一ヶ月ほどが経った頃に音也の“言霊”によって日本へ帰還した。とは言っても日本へ帰還したのはハジメとその嫁たち、そしてすっかり蚊帳の外に居たクラスメイトたちだけである。音也とその嫁たちは少なくともハイリヒ王国が復興するまで滞在していた。
その理由はとても簡単だ。エヒトルジュエをほぼ単独で殺害した音也があっちこっちで振り回されて中々帰させて貰えなかったからだ。
ハイリヒ王国は勿論だが、ミュウとレミアの故郷であるエリセンやガハルドの治めるヘルシャー帝国、果ての先にはブルックの町やらウルの町やらアンカ公国やらフューレンやらに招待されたのである。
英雄であるが故に断れなかった音也は、行く先々で恵里と合同の演奏会を開いたり八重樫姉妹にショーを頼んだりして日本に住んでいた頃では考えられないほど忙しかった。そして音也のことを愛する者たちも、彼を置いて帰ることは言語道断として結局一緒に振り回されることになった。
ちなみに夜になれば必ずと言って良いほど嫁たちと身体を重ね合っているので、彼の疲労は留まることを知らないどころか天元突破を繰り返していたのは内緒話である。
「日本に帰ったら一人旅でもしてゆっくり羽を休めるのも有りかもしれねえなあ」という彼の言葉により、夜の以下略の頻度が収まったりもしているのだが。
そんな音也たちも、招待された全ての場所に訪問し終えると、最後に亜人族の生息地であるフェアベルゲンを訪れて長老たちと酒を飲み交わし、そのまま日本へ帰還した。
ハジメたちが先に帰還したこともあり、彼らが帰ってきてもマスゴミ……ではなくマスコミは彼らの時ほど騒ぎ立てることはなかった。ただ、「行方不明だった伝説のヴァイオリニストが遂に帰ってきた!」という内容の番組がそこかしこで見られることになった。
文音が物騒な笑顔を携えて「今からでもテレビ局を潰す?」なんて吐いた時には全力で音也と父親が“説得”しに入った。神殺しを成し遂げた音也でも、力では母親に勝てないのだ……。
余談ではあるが、リリアーナとミレディにキバットは日本へ来ることはなかった。
リリアーナはハイリヒ王国の王女として国を纏め上げなければならず、どうしても日本へ行く算段がつかなかったのだ。こればかりはどうしようもなかったため、音也は一ヶ月に一度はハイリヒ王国に向かうと約束を交わしている。
また、ミレディは、これからますます発展していくであろう人類を見守りたいと話して日本への帰還に同行することはなかった。
ミレディは直前の直前まで悩んでいたが、最終的には「世界の均衡を保つために私が残るよ」と言い放った。彼女とも音也は一ヶ月に一度は会いに来ると約束をし、一度は別れをすることになった。
そしてキバット。彼は「世界のバランスが崩れたときの救済措置として残るさ」と早い時期から音也とオトヤに話しており、ユエとかなり揉めたが最後は泣く泣く別れを済ました。その際に音也がユエから“色々と搾り取られた”のは想像がつくだろう。
と、ここまでが過去の話である。では現在はどうなっているのか。それをこれから伝えていこう。
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──ありふれたラジオ番組
「本日のゲストは伝説のヴァイオリニストと言われる紅音也くんに匹敵する技術を持つともされており、ここ最近若者の間でブレイクしているヴァイオリニストの中村恵里さんです!」
「どうも」
「いやあ、ここ最近の人気は凄まじいですね! つい最近開催されたコンクールでは出場した奏者を寄せ付けなかったとか!」
「まあ、うん。音也に指導してもらったから、当然なのかもね」
「中村さんにとっての紅音也くんというのは一体どんな存在なんですかね? 憲法改正の翌日に中村さんは親元を飛び出して重婚した紅音也くんと電撃結婚しましたが、やっぱり複雑だったりします?」
「音也は僕の師匠であり、夫でもあるさ。彼にとって僕が一番でないのは悔しいけど、複雑な気持ちは一つもないね。それに、親元を飛び出したことに対しての後悔もないさ」
「あ、相変わらず達観としてますね。そんなところが若者たちからの人気の要因ですけどね! さて、本日はそんな中村さん宛のファンレターがたくさん──」
恵里は、日本に帰還してからボクッ娘美少女ヴァイオリニストとして名を馳せた。元より確執があった親元を飛び出して音也の元へ落ち着いた彼女は、彼の指導の御蔭もあって稀代のヴァイオリニストとして世の中から絶賛されている。
また、芸能界でも貴重なボクッ娘として若者たちから大変な人気を誇っていたりもする。リアルでもボクッ娘を許されるというある意味もの凄い状況だが、彼女はあくまでも淡々とヴァイオリンと向き合っていくだろう。
なお、私生活ではかつての母親と同じように音也とベッタリである。彼女の過去を振り返ってみれば、それも仕方のないことだろう。
──町の一角にある、とあるお店
「いらっしゃいませ、なのじゃ」
「ティオお姉さん! 今日も似合う服を選んで欲しくて来ちゃいました!」
「これはこれは。少し待っておれ。其方のイメージにピッタリな服を最近作ることができたのじゃよ。試着の第一号として、是非着てみてくれぬかの?」
「良いの?! ティオお姉さんありがとうございます!」
「これこれ。そんなに騒ぐ出ないぞ。転んで怪我でもしてしまったら、可愛らしい体に傷が入ってしまうじゃろう?」
ティオは、町の一角に竜人族の衣装を和服に落とし込んだ不思議な服を売り出す店を構えた。
中高生でも少しお小遣いを貯めれば買えるほどにお手軽な値段と、彼女の変成魔法によって竜の鱗を布状にした物を素材としてることもあって滅多なことでは壊れないなど、若い者のニーズを満たしまくっている。
また、店で働いている間は本来の思慮深い妙齢の女性の立ち振る舞いをしているからか、町中の人からは“ティオお姉さん”として恵里とは違った人気を集めている。
一方で、私生活では完全にデレた音也や他の嫁たちと異世界に居た頃のノリで暮らしている。きっと、彼女の二面性が変わることはないだろう。
──八重樫道場 稽古の間にて
「露葉師範代、覚悟っ!」
「甘いわよ。主に足下が、ね」
「ぐあっ!? くっ、まだまだ!」
「いいえ、ここまでよ」
「ぐへえっ!?」
露葉は、隠居した祖父から八重樫流を完全に引き継いだ。そして今では師範代として日々門下生の面倒を見ている。
現在の八重樫流、特に裏八重樫流は、彼女に一撃でも入れることができたら免許皆伝となる。そう、一撃だけ入れることさえできれば免許皆伝なのだ。その一撃が途方もなく遠いのだが……。
「や、やっぱり師範代は強すぎますよ。何をやったらそこまで動けるんですか?」
「努力。それだけよ。私の場合は異世界召喚っていうある意味でラッキーな面もあるけどね」
「……最初はこれっぽっちも信じてなかったんですよ。でも、今では門下生は全員信じてます。音速どころか光速までも悠々と超えられるなんて、魔法以外有り得ないっていうのがもっぱらの噂ですからね」
「あら、私が魔法に頼ってると言いたいのね? 残念だけど、それは不正解よ。帰ってきてからも日々鍛錬をしたんだから。今では素の状態で光速を超えられるからね?」
「……やっぱり師範代は半端ないっすね。でも、音也殿の方が強いとかもう意味分かりませんよ」
彼女もまた、音也とは周囲に砂糖を振り撒く生活を送っている。どんなに疲れる毎日だとしても、帰りを待ってくれる最愛の人が居れば露葉が壊れることは二度とないはずだ。
──ありふれた公園にて
「ハジメさん! お弁当を作ってきたので、皆でお昼ご飯にしませんか?」
「だな。もう良い時間だし、俺も早くお前の弁当が食べたい。昼飯にするか」
「分かりましたぁ! 香織さ~ん! “太牙”く~ん! お昼ご飯にしますよお~!」
「はいはい、ちょっと待ってね。ほら太牙、ご飯食べるよ!」
「あい!」
ハジメは、香織との間に息子を授かった。ちなみに妊娠させたのは異世界に居た頃であり、日本に帰ってからすぐに産んでいる。そのため、香織は高校を中退して現在は主婦になっている。
そしてシアは、良い意味で扱いが変わっていない。書類上はハジメと結婚しており、子供こそ授かってはいないがハジメと香織の息子“太牙”の面倒をよく見ており、すっかり彼らには保母さんという認識をされている。太牙に初恋認識をされる日も近いかもしれない。
ちなみにハジメはジュエリーショップを開いており、相当額のお金を稼いでいるので四人の生活は一切の不自由がない。時折ではあるが親元に帰省して太牙を遊ばせているため、両親との仲もひん曲がることなく良好だ。
「うん、やっぱり美味いな。それにしても、また料理が上手になったのか? 毎回、前回の料理より美味しく感じるんだが」
「も、もう! ハジメさんったらお褒めの言葉が相変わらず上手なんですからっ!」
「なんか妬けちゃうなあ。ハジメくんはシアの料理の方が好みなの?」
「比べられる訳ないだろうが。お前ら二人の料理はどっちも美味い。優劣なんか付けられないさ」
「おねえちゃのごはんも、おかあちゃのごはんもおいしい! だいすき!」
ハジメも、シアも、香織も。異世界では大変な苦労をしてきたが、今ではしっかりと幸せを掴んでいる。ハジメたちがこれから先、幸せを手放すことは永遠にないだろう。末永く幸せを噛みしめながら暮らしていくはずだ。
──そして、とある大きめの一軒家にて
「……ん、ほっぺがモチモチ」
「あまり触ったらダメよ。起きちゃったらまた寝かしつけるのも大変なんだから」
「分かってる。でも、モチモチで温かい。ぬくい」
「雫お姉ちゃん、“渡”くんは寝ちゃったの?」
「あらミュウ。宿題は終わったのかしら? レミアさんは買い物に行ったはずだし……一人で終わらせられたの?」
「このぐらい余裕なの! でも、渡くんと少し遊びたかったの……って、おはようなの!」
「あらあら、起きたのね」
雫は、音也との間にハジメたちと同じく息子を授かった。超自然的に“渡”と名付けられ、音也の嫁たちやその両親たちに可愛がられている。初対面の人からも揉みくちゃにされる渡少年の気苦労や、如何に。
雫も香織と同じく高校を中退し、やはり専業主婦として家から離れることはない。とはいえ剣術の腕は一切衰えていないため、彼女や息子を狙う不埒な輩は一瞬にして地獄を見ることになるが。まあ、仮に雫が動けないとしても地獄耳を持つ音也がすぐに駆けつけるので問題はゼロ以下であろう。
「というか、ユエは仕事休み? かなり忙しいって音也から聞いてるんだけど」
「今日は休み。女優業は忙しいけど、休みも何だかんだで取れる。取れなくても音也が取ってくれるから問題ない」
奈落の吸血姫ことユエは、女優として日々お茶の間を賑わせている。無口無表情という非常に変わったスタイルだが、たまに見せる“大人のユエ”が老若男女全ての世代に大人気なのである。
「渡くんモチモチしてるの~! よしよ~し!」
「ふふ、ミュウもすっかりお姉さんね」
「小学生になったからにはしっかりお姉さんをするの! 特に大切な弟のためなら当たり前なの!」
音也たちに初めて会った頃は四歳前後であったミュウも、今では小学生の仲間入りをしている。ハジメ特製のアーティファクトを身に纏ったことで海人族特有の耳にある扇状のヒレや掌の薄い膜は隠されており、髪色もエメラルドブロンドに見えるように幻術を見せているので魔法を使えない人間からすればただの美少女ちゃんだ。
小学生ながら神話大戦に参戦したり、誘拐されたりしているミュウは学校でも家の中でもしっかり者のお姉さんである。
「ただいま帰りましたよ。頼まれた物、買ってきました」
「お帰りなさいレミアさん。何時もありがとうございます。中々家の外に出られない私の代わりに色々とやってくれて本当に有り難いですよ」
「あらあら、うふふ。家族なら助け合いは当然ですよ。それに子供が産まれたばかりの大変さは私がよく知ってますから、どんどん頼ってくださいね」
レミアは子育ての経験を活かして雫にあれこれ教えつつ、彼女自身は「少しでもお役に立てるように」と内職で裏から紅家の財政を支えている。ティオや露葉とはまた違ったベクトルで“大人”なため、雫が今一番頼りにしている大人だと言っても過言ではない。
ちなみに紅家の主な収入源は、恵里と音也の演奏会チケット代やティオの店で稼いだ金、ユエの女優業によって入ってくる莫大な金、そしてレミアの内職による金である。ハジメたち以上に生活に困らないどころか不自由すらしない量の金を保持している辺りは流石だと言えるだろう。
「ああ、そうだ。途中で音也さんと会ったんですけど、皆さんに伝言を頼まれているんです」
「伝言? 何かしら……?」
「何でも『立て籠もり事件を感知したから犯人さんを沈めてくる』みたいです。だから帰りも少し遅くなるそうですよ」
「「………」」
雫とユエが顔を見合わせる。ミュウは渡を抱っこしたまま「やれやれ、なの」と頭を振り、レミアは「あらあら、うふふ」とニッコリほんわか笑顔。紅家の日常ともいえる光景が、そこにはあるのだった。
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「て、てめえ! 一体どこから入ってきやがったんだっ!」
「たすけ、て! おねがいっ!」
「お前は黙ってr『〝黙るのはお前だ〟』ッ――!?」
「平和を謳っている日本だってのに犯罪者は相変わらずだなあ、おい。これなら向こうの世界の方がまだ平和だったぞ?」
一人の男が立て籠もりを引き起こした男のすぐ後ろに立ったと思えば、言葉を発しただけで犯人の口を完全に封じてしまう。
亜麻色の髪を軽くフサフサさせるぐらいには頭を振りつつも、男は犯人の男に呆れと侮蔑の眼差しを送る。
人質として手頃な女を捕まえたというのに、犯人の男は何故かは冷や汗と震えが止まらなかった。それはありとあらゆる生き物が備え持つ生存本能から来る物であることを、男は知らない。
ただ、蛇に睨まれた蛙のように指一本動かせずにいた。
「毎日のように犯罪が起きてるんじゃ、平和を謳っていても無意味だってのによお。最近じゃ、お隣の国もなんやかんやと煩いし、“永久平和”なんていう謳い文句はとっくの昔に崩れてるってのに。脳内がお花畑な政府関係者たちもいい加減気がつかないのかねえ、まったく」
緊迫した場にはあまりにも不自然な男のおちゃらけた言動。その顔をよく見てみれば、多分に“余裕”を感じさせる微笑を浮かべている。
人質に取った女を掴んでいた手を掴んで一思いに骨を粉砕し、声のない悲鳴を上げて蹲った犯人の男の顔を容赦なく蹴り上げた亜麻色の髪の男は、携帯を取り出して警察に連絡し、早く人質の安全の保障を任せてそのまま立ち去ろうとした。
「ま、待ってください!」
「んあ? 何だよ。家族が待ってるから俺は早く帰りたいんだが」
「えっと、その……名前だけでも教えてください!」
男はゆっくりと振り返った。人質に取られていた女は自分の命を助けてくれた男の顔を見て、思わず顔を赤らめる。何処か危険で、しかし甘い匂いを感じさせる男の顔が魅力的だったのだ。
そんなことは知って知らずか、男は不敵な笑みを浮かべると、己の名を名乗りながらその場を立ち去った。
「紅音也。神殺しをやってみたり異世界まで音色を響かせる、ただのヴァイオリニストさ」
と。
ここまで私の駄作にお付き合いして頂き、本当にありがとうございました!
何となくで書き始めたこの作品ですが、気がつけば半年以上も連載していました。途中でエタるだろうなあ……続かねえよなあ……なんて考えてたので私自身驚いております()
本作はこれにて完結になります。外伝を書くことも確かに可能かもしれませんが、私としては次の作品を執筆したいのでここで終わらせていただきます。この作品で得ることが出来た経験を活かし、次の作品も頑張って執筆していきますので、今後もよろしくお願いします(どの面)!
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)