※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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ここでは語りません。本編をどうぞ()


第十楽章 光

迷宮内を人間ではとても視認できない速度で俺は移動する。

 

魔物を初めて食ってから数日間、俺は新技能の鍛錬に時間を注ぎ込んだ。結果としてご覧のように高速で迷宮内を移動できるようになったのだ。

 

空力は所謂多段ジャンプであり縮地は高速移動、豪脚は読んで字のごとくで纏雷は体に電気を纏って放電したり帯電させる技能である。

 

今では完璧とまではいかないが「そこそこ」というレベルで扱えるようにはなった。移動や攻撃には十分だ。

 

ヴァイオリンの腕も格段に向上している。まあこればかりは毎日やらないと気持ち悪いから仕方ないか。鍛錬の度に出会う狼やウサギを蹴散らして食いながらも俺は上に続く階段を探していた。しかし……。

 

「ねえなあ……ここは前にも来たぞ」

 

一向に見つからない。一応下への階段は見つけたのだが……上だけは見計らったかのように見当たらないのである。

 

「やれやれ……どうしたもんやら」

 

脱出するための出口が見つからなくて少しの焦りを感じながらも俺は再度移動をしようとした。

 

しかし一つの咆吼によって俺の思考は止まることとなる。

 

「グルゥアアアアア!!!」

「うおっ?!」

 

耳をつんざく咆吼。この声は聞いたことがないが……明らかに強者だ。しかしそれを悲鳴のような咆吼を上げさせるとは何者だ?好奇心に駆られて俺は声がした方向へ移動した。距離はそこまで遠くない。

 

その間にもドパンッ!ドパンッ!という音やバリバリグチャグチャという音も聞こえてくる。戦闘が発生しているのは間違いないようだが聞き慣れない声によって頭が混乱している。

 

 

『俺の糧になれ』

「人声?!」

 

ドパンッ!

 

自分以外の人声は久しぶりに聞いた気がする。少しワクワクしながら俺はその場に辿り着いた。

 

「なんだこりゃ……熊?」

 

血の海に倒れ伏している熊がいる。そしてその奥に……

 

「ああ? 誰だお前」

 

人間がいた。確かに人間だ。左腕は見当たらず髪の毛は真っ白で大型のリボルバー式拳銃を持っているが、人間である。

 

「まあ誰でもいいが。邪魔するってなら……殺すだけだ」

「いきなり失礼すぎやしないか?」

 

スッとヴァイオリンを取り出す。殺意には殺意で返すのが世の定理だ。多分。

 

「「……」」

 

互いに睨み合う。壮絶なプレッシャーが辺りを支配し、不幸なことに近くを通りかかった狼やウサギが気絶していく。

 

まさに一触即発。膨らみ続けた風船に爪楊枝を刺せばどうなるかぐらいは分かるよな?

 

「「殺してやる」」

 

ドパンッ!

 

「ッ!!」

 

宙返りして天上に立ち上がり、弓を高速で押し引きする。曲はショパンのエチュード「10-4」。またピアノ譜だよとか知らない。だってキバ本編で流れてたんだもの。ガルルフォーム初登場の時とか。

 

エチュード(練習曲)とはいえ速度は十分。拘束を狙わずに縮地や空力らしき挙動で動き回る人間に魔法を飛ばしていく。

 

「くそっ!」

 

ドパンッ!ドパンッ!

 

「当たるか……!」

 

~♪♪ ~♬♬♪

 

拳銃の銃撃を魔法で撃ち落とす。電磁加速しているように見えるのは気のせいではないはずだ。食らったら不味い。

 

故に弓を加速させて曲の速度も高速化させる。当然それに合わせて飛ばされる魔法の速度が上昇する。持続時間と威力は減るが。

 

「この!」

 

ドパンッ! カッ……

 

「光?!」

「もらった!」

 

ドパンッ! カチャンカチャン

 

「甘い……!」

「チッ……当たらねえか。大した奴だ」

「お前も大概だろ」

 

一曲弾き終えて一発も命中してない。こいつは強者だ。それもチートレベル。

 

「ま、ヴァイオリンだけではないが……」

「ヴァイオリン……?」

「行くぞお!」

 

縮地と空力に纏雷を発動。電気で刺激した筋肉で地面を蹴って空を高速移動。人間が銃を使えない距離まで近づきながらファンガイアスレイヤーモドキを取り出した。

 

「オラァ!」

 

ヒュンッ

 

「くっ!」

 

ガキンッ!

 

「〝纏雷〟!」

「しまーー」

 

バリバリバリバリビリビリ!

 

「アバババババアババ!?」

「ふんっ!」

「ぐっ……」

 

カランカラン

 

「さあてトドメだ。覚悟を……ん?」

 

足下に落ちた何かに当たった。訝しく思って足下にあった物体を拾い上げる。俺はこれを……よく知っている!

 

「イクサナックル?!」

 

そう、行方不明になっていたイクサナックルだ。どうしても見つけることができずに諦めていたのだが……なぜここにある?

 

というかなぜこいつが持っていた?

 

「……まさか」

 

殆ど有り得ない答えだ。必死に否定するが……それ以外に思いつかない。

 

「なあ……俺はお前を知ってる気がするぜ」

 

白髪の人間が苦笑いしながら口を開く。俺はなんとなく質問した。

 

「……名前は」

「ハジメだ」

「……今なんて?」

「稀代のヴァイオリニストなのに難聴なのか? ハジメだハジメ。南雲ハジメだ」

「ハジメ……ハジメぇ?!」

 

あの日俺と一緒に橋から落下したもう一人の男子。気弱で優しかった男子。しかしどうだ。目の前には「男子」ではなく「男」がいる。

 

「……で、お前の名前は?」

「お、音也だ。紅音也」

「……マジかよ」

 

それは俺のセリフだ。俺は生命力増強があったからなんとか生きてこられたのだ。ハジメにはそういう技能はなかったし戦闘力だって‥‥。

 

「まあ苦労したんだぜ? イクサナックルと錬成のおかげでなんとか‥‥な」

「んじゃその髪と左腕は?」

「左腕はこの熊に食われた。んで髪は……なんかストレスマックスでこうなった」

「サラッと言うけど中々に壮絶なことで」

 

雰囲気も変わっていて混乱気味だ。とはいえハジメの心から流れ出している音楽は以前から聴いていた物だ。恐らく間違いない。

 

「まあなんだ。偶然とはいえイクサナックルに助けてもらったし……ありがとうな」

「お礼言うことでもないだろうよ」

 

久しぶりにイクサナックルを握りながら苦笑いする。俺としては生きててくれただけで万々歳だ。これで香織に会わせる顔もできた。

 

あとは……雫だ。

 

「ま、なんとかして帰ろうや」

「そうだなあ……元の世界にも帰らないと」

「その前に八重樫か?」

「ビンゴ。あ、この肉食っても良いか?」

 

ここは暗闇に包まれた奈落の底。しかしこの場には……確かに光があるのだった。

 




次回はクラスメイトsideです。気になる雫さんがどうなるかを書きますのでお楽しみに!

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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