その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
「んで、どうしてこんなとこに監禁されてるんだ?」
「……裏切られた」
開始早々重たげ。早速気が滅入る。
「私、吸血鬼族の長女……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」
「吸血鬼族? おい、まさかとは思うが……いや、それはないか」
「……」
「お前は女王、つまりクイーンだったんだな?」
「……(コクコク)」
「殺せないってのは……なんだ? 長寿なのか?」
「それもある……でも体が年を取らない」
「不老不死?」
「ん……」
「んじゃ一つ質問だ。お前たち吸血鬼族は人間の姿以外に替われるのか? 例えば……蝙蝠のような姿に」
「なれる……吸血鬼族は二つの顔を持っている。今のように人間の姿と……異形の化物の姿」
「その姿の時、なんて呼ぶ?」
「ファンガイア」
「ええ……」
こんなところでファンガイアが出てきた。つまりこいつもファンガイアだ。
「……私は人間族と吸血鬼族のハーフ。いつでもファンガイアの姿になれるわけじゃない……」
「な、なるほどな。それじゃあ……お前の下に固められてるのは……」
「……キバットバット。私の教育係で親友。この子は二代目」
「うっそだろお……」
なんかここまで来てようやくファンタジーな世界を味わった気がする。世界は広い……。
「……たすけて」
「……」
懇願の目で見つめてくる女の子。俺としては助けてやりたいが……間違いなく厄介事を抱えてるはずだ。ハジメが助けることを拒絶したのにはそういう理由があるのだろう。
「……ま、後で説得するか」
『レ・ディ・ー』
「変身」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
「あ……その姿は」
ウダウダ考えるのは得意ではない。とりあえずは力尽くで適当にやれば良いだろう。
「いってて……ってお前何するつもりだ?!」
「助ける。こいつは俺たちと同じで魔方陣や詠唱を必要としないし不老不死に近い」
「しかし……」
「大丈夫さ……なんとかなる」
「お前が言うと妙に説得力あるよな……しゃあない。任せるぞ」
「あいよ……」
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
少しだけ下がり距離を取る。なぜかって? それはきっと、すぐに分かる。
「……行くぞ!」
ズッと足を片方踏み出した……直後。
「〝縮地〟!」
‥‥‥そう、俺は縮地の勢いを使ったブロウクン・ファングで立方体を破壊し尽くしてしまおうと考えたのである。我ながら雑な案ではあるがこれしか思いつかなかった。
「エイヤァァァァァァアア!!!」
ドパアアアアン!
イクサナックルを立方体に叩きつける。途端に凄まじい衝撃波が巻き起こり、目の前の女の子の髪がもの凄い勢いでパタパタとはためく。
「ハジメ! コウモリモドキの解放を頼む!」
「はあ? コウモリモドキ……これか?」
「……なんで」
「るせえ黙っとけ!」
纏雷も併用しつつ叫ぶ。俺はなぜ、この女の子のためにここまでしてるのかはよく分かっていない。特に接点はないしシンパシーを感じたわけでもない。この子がファンガイアってことぐらいにしか興味も持ってない。
いや、もしかしたらだ。俺は彼女の虚しい心の音楽を聴いたから……。
「ォォォォオオオオオオ!!!」
だが今はこれを壊すのが先だ。イクサのエネルギーを全てイクサナックルに注ぎ込んで立方体を破壊せんとひたすら殴り続ける。
「この! 壊れろ! 強情な立方体め……!!」
「おいおい。随分と抵抗が強いな!?」
「……どうして」
「ああ?」
「どうして……そこまでして」
「助けてって言ったのはお前だろ?」
「でも……」
「だああ……四の五のうるせえ! 黙って見てろ!!」
一度ベルトにナックルを戻してフエッスルを再度取り出す。
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
「これで……壊れろおおおお!!」
ズドバアアアアアアアアアン!!!
残存エネルギーと再チャージした分のエネルギーを足して思いっきり踏み込んで文字通り叩きつけた。
すると……先ほどまで変化がなかった立方体の表面がビキビキとヒビ割れ始めたではないか。少しずつ女の子の枷を解いていき、それなりに膨らんだ胸部が露わになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が崩れ去る。
ハジメも錬成でなんとかコウモリモドキを解放したらしく、肩でゼハーゼハーと息をしている。
「つっかれたあ……」
「俺も……ほれ神水」
「おうサンキュ」
変身を解き、グビグビと神水を飲んで体力を回復させる。ブロウクン・ファングは俺の体力を使って放つ必殺技だ。なぜこんな仕組みなのかは知らないが……兎に角体力がゴッソリと持ってかれる。
それ故に連続で使うことはこれまで殆どなかったのである。
「む、ここは……」
「お、目が覚めた」
「ア、アレーティア?!」
「キバット……久しぶり」
「……そうか。ようやく助けが来てくれたのか」
コウモリモドキもといキバットバット二世が空を飛びながら辺りを見渡してる。
「ん……」
「あん? どした」
「……ありがとう」
いつの間にか俺の近くに寄ってきていた女の子……てかアレーティア? は俺の手を握ってお礼を言ってきた。
見た目は幼いとはいえ滅茶苦茶に美人。しかも真っ裸である。いくら彼女持ちでも来るものがある。
それ故に俺は目をそらしながら答える。
「おう……」
「俺からも礼を言うぞ。実に数百年ぶりに体を動かせるのでな」
「数百年……?」
「吸血鬼族は確か三百年前には滅びたはずだぞ」
「流石座学の神」
とりあえず聞きたいことがあるので俺はひとまず上着を脱ぐ。
「アレーティア……だっけ?」
「……その名前、嫌」
「ええ……」
「新しい名前、付けてほしい」
まさかの注文が入った。俺はない脳をフル回転させて一つの名前を思いつく。
「うーん……それじゃあ〝ユエ〟なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」
「ユエ? ……ユエ……ユエ……」
「ああ、ユエって言うのはな、中国で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」
「思いのほかしっかりとした理由があるな」
「これが俺の限界な」
「……んっ。今日からユエ。ありがとう。キバットもそう呼んで」
「わ、分かった……」
「おう、取り敢えずだ……」
「?」
「これでも着とけ。いつまでも裸じゃな」
「……?!!」
「思った。いつまで俺たちの理性が保つか分からん」
ポイッと上着を投げ渡す。ユエは顔を真っ赤にしてポツリと呟くのだった……。
「……えっち」
ユエさん登場です!誰の嫁になるかは……まあ分かりますよね()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)