※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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お腹が……イタイ()


第十三楽章 ガブリッ!

「‥‥‥えっち」

「「‥‥‥」」

 

何を言っても墓穴を掘りそうなので黙っておく。ユエはいそいそと上着を羽織る。ユエの身長は百四十センチ位しかないのでぶかぶかだ。一生懸命裾を折っている姿が微笑ましい。

 

「‥‥‥二人の名前。なに?」

「俺は音也だ。紅音也」

「で、俺はハジメな」

「音也、ハジメ、音也、ハジメ‥‥‥」

 

大切な何かを体の髄まで刻み込むかのように名前を連呼するユエ。しかし‥‥本当にファンガイアと出会えるとは思ってもみなかった。それにしてもキバットにも会えるとは‥‥ちゃんと杉田ボイスなのには理由があるのか? 

 

「‥‥色々聞きたいことがあるなあ」

「ふむ、それもそうだろう。俺が質問には答えるぞ」

「助かる。それじゃあ‥‥って危ねえ!?」

 

気配感知に引っかかった巨大な気配に思わず大声を張り上げてユエとキバットを抱えながら縮地でその場を退く。ハジメもなんとか移動できたらしい。

 

直前まで俺たちがいた場所には‥‥体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かして二本の尻尾の先端に鋭い針がついているサソリがいた。

 

これまでの魔物とは一線を画す強さだというのがこの場からでも分かる。部屋に入った直後は全開だった〝気配感知〟ではなんの反応も捉えられなかった。だが、今は〝気配感知〟でしっかり捉えている。

 

ということは、少なくともこのサソリモドキは、ユエとキバットの封印を解いた後に出てきたということだ。つまり、ユエとキバットを逃がさないための最後の仕掛けなのだろう。

 

俺は腕の中のユエを見つめる。ユメもまた、俺の瞳を真っ直ぐに見つめていた。凪いだ水面のように静かな、覚悟を決めた瞳。その瞳が何よりも雄弁に彼女の意思を伝えていた。一度手酷く裏切られたというのに‥‥俺を信じると言うのだ。

 

片方の口角が上に吊り上がる。俺はイクサナックルとイクサベルトをハジメに投げ渡した。

 

「うおっと」

「ハジメ。それ、使え」

「お前は?」

「……コウモリモドキ」

「なんだ」

「力を貸せ……!」

「……ふん。良かろう」

 

一瞬懐かしいものを見たとでも言うような空気を見せたキバット。しかしすぐに俺の願いを聞き入れてくれた。

 

「しかし、適性がなければ一瞬で死ぬぞ」

「ああ? そんなの今更だろ」

「‥‥似ているな。お前はあの男に」 

「その話は後で聞くぜ。ほら、早く頼む」

「行くぞ‥‥ガブリッ!!」

「っ‥‥!」

 

腰に鎖が巻き付いた‥‥と思えば止まり木のようなベルトへと変形する。さらに顔にはステンドグラスのような模様が浮かび上がった。まるっきりテレビ本編通りで感動する。

 

「‥‥変身っ!!」

「絶滅タイムだ‥‥喜べ!」

 

ガラスが砕け散るような音にコウモリの鳴き声のような音が響き渡り……俺の体を鎧のような物が包み込んだ。

 

「うへえ……音也、マジでなりやがったな」

『レ・ディ・ー』

「俺もやるか……変身!」

『フィ・ス・ト・オ・ン』

 

ハジメもイクサを装着。本編では決して交わることのなかった二ライダーが……ここに並び立った。両雄ここにそびえ立つ。

 

「邪魔するってなら……」

「殺して食ってやる」

 

鎧の中からではあるがニヤリと微笑む。それと同時にサソリモドキも動き始めた。サソリモドキの初手は尻尾の針から噴射された紫色の液体だ。とはいえ速度は遅い。俺は余裕を持って躱し、縮地でサソリモドキに接近した。

 

「ギシャ!」

 

その四本の大バサミも核爆発を余裕で耐えきるこの鎧には通用しない。ガキン! ガキン! と簡単に大バサミが弾かれてしまう。俺はほくそ笑み、テレビで見た動きを真似てみることにした。

 

「ハアアア……!」

「お、それは……」

「……すごい」

 

全身に流れてるエネルギーを集中させて「キバの紋章」を作り上げる。そして出来上がった紋章をサソリモドキの足下に潜り込ませた。

 

「ギシャアアアア?!!」

「くくく……期待通りの性能だな」

「おい俺は夢を見てるのか? 俺の目の前には音也じゃなくてキングがいるぞ……」

「バカなこと言ってないで攻撃しろよ」

 

大バサミや溶解液、そして地面から突き出される無数の針を一身に受けながらも涼しい声で指示を出した。あまりに頑丈なので痛みどころか衝撃すら感じないのである。

 

余力があるので紋章をもう一つ作りだし、サソリモドキの紋章サンドイッチを作る。これっぽっちも抵抗ができずに電撃を食らってる辺り拘束力は恐ろしい。

 

『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』

「デヤア!!」

 

ドパアアアアン! 

 

しかし……

 

「ギイヤアアアアア!!」

「んなっ……効いてないぞ」

「なんて装甲の堅さだ……」

「ブロウクン・ファングが通用しないんじゃ俺の武装でも無理だ。どうする……?」

 

背中の甲羅に間違いなくヒットしたはずだが……かすり傷一つ付いていないようだ。五億ボルトの電圧を耐えきる防御力とは恐ろしい。

 

とはいえ動けはしないので当分は問題なしだが……どうしてやろうか。なんだかんだで紋章を発動させてるので魔力がゴリゴリと削られている。このままでは魔力枯渇するのも時間の問題だ。

 

「……致し方ないか」

「……音也、それはっ」

「ウェイクアップだ……行くぞ!」

「ウェイクアップ・I!」

 

フエッスルを吹いた音が響き渡り、周囲は皆既月食が浮かび上がる夜のような空間に包まれた。

 

目の前で動けないサソリモドキを睨みつけ……跳び上がる。その名を「ダークネスヘルクラッシュ」。あまりに厨二病すぎてのたうち回りたいのだが、そんなこと言ってられないので俺は遥か上空から急降下しながら拳を突き出した。

 

「死に晒せやああああああ!!!」

 

対空迎撃なんのその。構わず真上から垂直に落下して拳を叩き込んでやった。

 

「グゥギィヤァァァアアア!?」

 

サソリモドキがかつてない絶叫を上げる。それもそのはず、サソリモドキの背中にある甲羅は完膚なきまでに砕け散っていたからであろう。

 

さらにその拳は甲羅の奥にある柔らかい肉にまで達し、俺の目線からは凄惨な様子になるまでにグチャグチャになっていた。

 

「キシュア……ガギャア……」

 

息も絶え絶えに離脱しようとするサソリモドキ。しかし……逃がすわけがないだろ? 

 

「死ね」

 

ズドバアアアアアアアアン!!! 

 

「おおう……容赦ねえな」

 

最後に紋章で押し潰して指をパチリと鳴らせばフィニッシュである。サソリモドキは爆発四散してこの世を去った。ハジメが変身解除して乾いた笑みを送ってくるが無視。キバットを外しながらユエの元へ歩く。

 

「音也……大丈夫?」

「魔力枯渇で死にそうだがなんとかな。とりあえずユエ、お前は吸血鬼だよな?」

「……(コクコク)」

「よし。それなら俺の血を吸え」

「おい、本当に大丈夫なのか?」

「コウモリモドキ。心配すんなって……俺は不死身だからな」

「……本当にいいの?」

「何度も言わせるなよ。俺も意識失うかどうかのとこで頑張ってるんだから早めに頼むぜ」

「……それじゃあ」

 

俺の首に手を回し、抱きついてくるユエ。そして……首筋にキスしてきた。いや、噛みついたのか。

 

「っ……」

 

首筋にチクリと痛みを感じ、力が抜き取られていくのが分かる。が、構わずにユエを抱きしめることで支えてやった。一瞬、ピクンと震えるユエだが、更にギュッと抱きつき首筋に顔を埋める。どことなく嬉しそうなのは気のせいだろうか。

 

「音也、神水だ」

「おう」

 

味は普通のミネラルウォーターだが……疲れていると美味しく感じる。スポドリに近いかもしれない。

やがてユエも吸血を終えたらしい。俺の首筋から口を離して俺の目を見つめてきた。どこか熱に浮かされたような表情でペロリと唇を舐める。

 

「……ごちそうさま」

「あいよ。それにしても吸血だけで一気に回復したな……流石吸血鬼」

 

思わずそんなことを言いながら、俺は頬を緩めるのだった。いつ終わるかも分からない迷宮攻略だが……良い仲間が増えたようだ。

 

俺はキバットとユエを交互に見つめながら、一筋の光を見いだすのだった……。

 




ダークキバに関してですが、適正がなければ一瞬で死亡する特性は変わっていません。設定も大体オリジナルに準じます。違うとこと言えば技を出すには魔力が必要だといったとこでしょうか。

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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